【BL】いじわるな黒髪貴公子に食べられそうです

10 Kの悩み、次の約束

エリア1に入室すると、そこに居るメンバーの大半は知らない人だったが、幸運にもその中にKを発見した。

俺はとりあえず全体に向けて挨拶をした後、K宛に『また会ったな！　よろしく』と送った。

するとKからも『よろしく』と返信が来た。

そして更に、『ちょっと相談があるんだけど……個室いい？』と続き、俺は首を傾げた。


（相談？　なんだろう）


よく分からないけれど、断る理由もないのでOKと返す。

ちなみに個室とは、一対一で会話出来るエリアで、各メンバーが持っている部屋といえば分かりやすいだろうか。

各エリアで出会った人達がお互いの部屋に移動し、仲を深める事の出来る空間となっている。

人前では話しづらい恋愛相談なんかにはもってこいの場所だ。

ということで、俺はKのアイコンをクリックして部屋へ移動した。


・・・


『悪いな』


入室すると、Kはすまなそうにメッセージを送ってきた。

俺もそれに答え、早速やりとりが始まる。


俺『いいよ。てか、俺も今度相談したい事あるし』


K『え、そうなの？　なら、そっち先に聞く？』


Kは俺の悩み相談を優先させようかと提案してくれる。

なんだか、Kってクールなイメージがあるけれど、思ったよりも人に気を使ってる奴なのかもしれない。

しかし、今回はKの誘いで来ている訳だし、俺の悩み相談はまた今度にしよう。


俺『いやいや、俺のは今度で大丈夫。で？　そっちはどうしたんだよ？』


すると、いよいよKが本題に入った。


『分かった。じゃあ、俺の悩み。実は……つい最近の話なんだけど。よく行く店で昔好きだったやつに会ってさ』


（へぇ……）


Kの悩みを読みながら、俺も最近、カフェで高校時代の嫌なやつに会ったなぁ、なんて思う。

暫くして、Kから続きが送られてきた。


『でも、その相手は俺の事あんまりよく思ってなくて。なんていうか……いつも強引にいき過ぎたり、つい意地悪な事言ったりして、嫌われるパターンを繰り返してる気がする』


（なるほどー……って、なんかKって）


……蒼井に似てるのかも。

蒼井の場合は本当に意地悪なんだろうけれど、Kの場合は、好きな相手をついいじめてしまうという、ちょっとキュンとしてしまうやつだ。


（そっかぁ……ふふ）


俺はKがちょっと可愛く思えて、何かアドバイス出来ないか考える。

が、俺も大した恋愛経験はなく、それどころか女嫌いで悩んでいるレベルなので、的確なアドバイスとかは出来そうにない。


（うーーーーん）


悩んだ挙句、俺はKにこう返した。


『俺も全然恋愛経験ないから、あんまり良いアドバイスは出来ないけど……Kが本気で好きな相手なら、その想いって相手にも伝わる気がするし、案外そのうち仲良くなれたりするんじゃね？』


K『うーん、そういうもん？』


俺『たぶん……』


K『マジかー』


それから少し間が開いて、またKからチャットが飛んできた。


『わかった。とりあえず、連絡してみることにする』


それに俺が返す。


『お、いいじゃん。てか、連絡先知ってんだ？』


『まぁな』


Kはそう言って、一旦落ちると申し出た。

俺は了承し、また次に会えるよう、お互いのログイン時間等を確認する。

Kは大体、夕方以降にログインしているという。


『分かった。俺も大体そんな感じだから』


そう返すと、Kは『了解。じゃあ、今度はSSの部屋でSSの悩み相談な』


と言って、退室していった。


（ふぅ……K、がんばれ）


自分の悩み相談は出来なかったけれど、なんだか気持ちが落ち着いた気がする。


「よし、今のうちに作業、作業！」


今のメンタル状態なら作業も捗りそうなので、早速開始することにする。

俺は大きく伸びをすると、帽子の仕上げに取り掛かった。