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・・・
そんなわけで。
俺は佐久間颯太(さくま そうた)、現在二十一歳の成人、男。
高校卒業後は裁縫の専門学校に通い、実家から離れた都内の狭いマンションで一人暮らしをしている。
趣味というか、特技は手芸だ。
高校生の頃はまだ趣味レベルの出来だったけれど、今は違う。
専門学校に通ってきっちり学んだお陰で、今ではネット販売で売れるレベルにまで上達した。
とはいえ俺の場合、まだ高いミシンとかは買えないので、全て手縫いなのだけれど。
でも、だからこそどれも個性がある一点ものだし、時間もかかる。
買ってくれる人はそれが良いと思ってくれる人ばかりで、多少荒さがあっても ″それがいい味!″ と、快く買ってもらえるのだ。
勿論、こちらも手抜きをしたことは一切なく、日々鍛錬を重ねている。
「えっと、今日はこいつの続きからだな」
俺は収納ボックスから作りかけの帽子を取り出し、まじまじと眺めた。
実は、俺が作っているのは鍔付きの、いわゆるキャップのみ。
作ろうと思えば、ベレー帽とか、服やポーチなんかも作れるけれど、今はこの鍔付きの帽子作りにハマっている。
色違いの布を繋ぎ合わせたりして縫い合わせ、ひっくり返して出来上がりを見るのが楽しいのと、個人的にキャップの形が好きだというのが主な理由だ。
(今度、他のもチャレンジ出来たらいいな)
帽子を作業用のデスクに置き、裁縫用具を準備しながら次のイメージを広げていく。
俺にとって、こうしている時間はかけがいのない時間で本当に楽しい。
だから、俺の人生はもう十分に満ち足りているのだ……が、しかし。
(……はぁ)
作業の手を動かしつつ、内心ため息が漏れる。
そう、俺の唯一の悩みは……恋愛だ。
高校生の時、結局卒業するまで「手芸が出来る可愛い男子」と称され、女子達に追いかけ回された俺は、すっかり女嫌いになってしまった。
俺の容姿は女子から見れば ″可愛い″ らしく、学内ではそんな可愛い存在として、そこそこ有名人にもなってしまったほど。
人によっては、そんな風に学内で有名になるのは嬉しいかもしれないけれど、俺としてはかなり嫌だった。
趣味はバレるわ、写メは撮られるわで、散々だ。
(まぁ、今はそういうの無いからいいけど……)
はぁ、とため息がまた一つ。
正直、もう女性とまともに付き合える気がしない。
付き合って趣味がバレたら、今度はなんと言われるか。
また可愛いだなんだと囃し立てられ写メを撮られ、オタク認定された挙句、静かに去っていかれるのだけは避けたい。
しかし、やっぱり心を許せる恋人は欲しい……。
でも、こうして部屋に引きこもって作業ばかりしているので、そもそも出会いがないのが現状だ。
……とまぁ、そんなわけで。
最近は脳内この繰り返しで、すっかり悩んでしまっているのだ。
「あーあ、誰かいい人、いないかなぁ」
そんな事をぼやきながら、俺はせっせと作業を進めた。
・・・
そしてあっという間に二時間ほど経過し、時刻は七時過ぎ。
そろそろ朝食の時間だ。
「は~、疲れた。けど、だいぶ進んだな」
俺は出来上がり間近の帽子をデスクに置き、それを眺めた。
今回のは縫い目も綺麗だし、我ながら良い出来だと思う。
という訳で、一段落した俺はキッチンへ。
朝食は作業後の癒しだ。
食パンをトースターで焼き、ホットコーヒーをいれる。
それと小さい器にヨーグルトを用意して、朝食が完成した。
「ふぅ。今日は何を観ようかなー」
椅子に座り、スマホで動画を漁る。
すると、いつも見ている動画サイトで興味深いタイトルを見つけた。
そんなわけで。
俺は佐久間颯太(さくま そうた)、現在二十一歳の成人、男。
高校卒業後は裁縫の専門学校に通い、実家から離れた都内の狭いマンションで一人暮らしをしている。
趣味というか、特技は手芸だ。
高校生の頃はまだ趣味レベルの出来だったけれど、今は違う。
専門学校に通ってきっちり学んだお陰で、今ではネット販売で売れるレベルにまで上達した。
とはいえ俺の場合、まだ高いミシンとかは買えないので、全て手縫いなのだけれど。
でも、だからこそどれも個性がある一点ものだし、時間もかかる。
買ってくれる人はそれが良いと思ってくれる人ばかりで、多少荒さがあっても ″それがいい味!″ と、快く買ってもらえるのだ。
勿論、こちらも手抜きをしたことは一切なく、日々鍛錬を重ねている。
「えっと、今日はこいつの続きからだな」
俺は収納ボックスから作りかけの帽子を取り出し、まじまじと眺めた。
実は、俺が作っているのは鍔付きの、いわゆるキャップのみ。
作ろうと思えば、ベレー帽とか、服やポーチなんかも作れるけれど、今はこの鍔付きの帽子作りにハマっている。
色違いの布を繋ぎ合わせたりして縫い合わせ、ひっくり返して出来上がりを見るのが楽しいのと、個人的にキャップの形が好きだというのが主な理由だ。
(今度、他のもチャレンジ出来たらいいな)
帽子を作業用のデスクに置き、裁縫用具を準備しながら次のイメージを広げていく。
俺にとって、こうしている時間はかけがいのない時間で本当に楽しい。
だから、俺の人生はもう十分に満ち足りているのだ……が、しかし。
(……はぁ)
作業の手を動かしつつ、内心ため息が漏れる。
そう、俺の唯一の悩みは……恋愛だ。
高校生の時、結局卒業するまで「手芸が出来る可愛い男子」と称され、女子達に追いかけ回された俺は、すっかり女嫌いになってしまった。
俺の容姿は女子から見れば ″可愛い″ らしく、学内ではそんな可愛い存在として、そこそこ有名人にもなってしまったほど。
人によっては、そんな風に学内で有名になるのは嬉しいかもしれないけれど、俺としてはかなり嫌だった。
趣味はバレるわ、写メは撮られるわで、散々だ。
(まぁ、今はそういうの無いからいいけど……)
はぁ、とため息がまた一つ。
正直、もう女性とまともに付き合える気がしない。
付き合って趣味がバレたら、今度はなんと言われるか。
また可愛いだなんだと囃し立てられ写メを撮られ、オタク認定された挙句、静かに去っていかれるのだけは避けたい。
しかし、やっぱり心を許せる恋人は欲しい……。
でも、こうして部屋に引きこもって作業ばかりしているので、そもそも出会いがないのが現状だ。
……とまぁ、そんなわけで。
最近は脳内この繰り返しで、すっかり悩んでしまっているのだ。
「あーあ、誰かいい人、いないかなぁ」
そんな事をぼやきながら、俺はせっせと作業を進めた。
・・・
そしてあっという間に二時間ほど経過し、時刻は七時過ぎ。
そろそろ朝食の時間だ。
「は~、疲れた。けど、だいぶ進んだな」
俺は出来上がり間近の帽子をデスクに置き、それを眺めた。
今回のは縫い目も綺麗だし、我ながら良い出来だと思う。
という訳で、一段落した俺はキッチンへ。
朝食は作業後の癒しだ。
食パンをトースターで焼き、ホットコーヒーをいれる。
それと小さい器にヨーグルトを用意して、朝食が完成した。
「ふぅ。今日は何を観ようかなー」
椅子に座り、スマホで動画を漁る。
すると、いつも見ている動画サイトで興味深いタイトルを見つけた。
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