【BL】いじわるな黒髪貴公子に食べられそうです

筍とるぞう

文字の大きさ
上 下
2 / 56

2

しおりを挟む
・・・

そんなわけで。

俺は佐久間颯太(さくま そうた)、現在二十一歳の成人、男。

高校卒業後は裁縫の専門学校に通い、実家から離れた都内の狭いマンションで一人暮らしをしている。

趣味というか、特技は手芸だ。

高校生の頃はまだ趣味レベルの出来だったけれど、今は違う。

専門学校に通ってきっちり学んだお陰で、今ではネット販売で売れるレベルにまで上達した。

とはいえ俺の場合、まだ高いミシンとかは買えないので、全て手縫いなのだけれど。

でも、だからこそどれも個性がある一点ものだし、時間もかかる。

買ってくれる人はそれが良いと思ってくれる人ばかりで、多少荒さがあっても ″それがいい味!″ と、快く買ってもらえるのだ。

勿論、こちらも手抜きをしたことは一切なく、日々鍛錬を重ねている。


「えっと、今日はこいつの続きからだな」


俺は収納ボックスから作りかけの帽子を取り出し、まじまじと眺めた。

実は、俺が作っているのは鍔付きの、いわゆるキャップのみ。

作ろうと思えば、ベレー帽とか、服やポーチなんかも作れるけれど、今はこの鍔付きの帽子作りにハマっている。

色違いの布を繋ぎ合わせたりして縫い合わせ、ひっくり返して出来上がりを見るのが楽しいのと、個人的にキャップの形が好きだというのが主な理由だ。


(今度、他のもチャレンジ出来たらいいな)


帽子を作業用のデスクに置き、裁縫用具を準備しながら次のイメージを広げていく。

俺にとって、こうしている時間はかけがいのない時間で本当に楽しい。

だから、俺の人生はもう十分に満ち足りているのだ……が、しかし。


(……はぁ)


作業の手を動かしつつ、内心ため息が漏れる。

そう、俺の唯一の悩みは……恋愛だ。


高校生の時、結局卒業するまで「手芸が出来る可愛い男子」と称され、女子達に追いかけ回された俺は、すっかり女嫌いになってしまった。

俺の容姿は女子から見れば ″可愛い″ らしく、学内ではそんな可愛い存在として、そこそこ有名人にもなってしまったほど。

人によっては、そんな風に学内で有名になるのは嬉しいかもしれないけれど、俺としてはかなり嫌だった。

趣味はバレるわ、写メは撮られるわで、散々だ。


(まぁ、今はそういうの無いからいいけど……)


はぁ、とため息がまた一つ。


正直、もう女性とまともに付き合える気がしない。

付き合って趣味がバレたら、今度はなんと言われるか。

また可愛いだなんだと囃し立てられ写メを撮られ、オタク認定された挙句、静かに去っていかれるのだけは避けたい。

しかし、やっぱり心を許せる恋人は欲しい……。

でも、こうして部屋に引きこもって作業ばかりしているので、そもそも出会いがないのが現状だ。


……とまぁ、そんなわけで。


最近は脳内この繰り返しで、すっかり悩んでしまっているのだ。


「あーあ、誰かいい人、いないかなぁ」


そんな事をぼやきながら、俺はせっせと作業を進めた。


・・・


そしてあっという間に二時間ほど経過し、時刻は七時過ぎ。

そろそろ朝食の時間だ。


「は~、疲れた。けど、だいぶ進んだな」


俺は出来上がり間近の帽子をデスクに置き、それを眺めた。

今回のは縫い目も綺麗だし、我ながら良い出来だと思う。


という訳で、一段落した俺はキッチンへ。

朝食は作業後の癒しだ。

食パンをトースターで焼き、ホットコーヒーをいれる。

それと小さい器にヨーグルトを用意して、朝食が完成した。


「ふぅ。今日は何を観ようかなー」


椅子に座り、スマホで動画を漁る。

すると、いつも見ている動画サイトで興味深いタイトルを見つけた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった

パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】 陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け 社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。 太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め 明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。 【あらすじ】  晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。  それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl 制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/ メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...