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なんということだ。

すっかりバレてるじゃないか。

優真の腕の中、俺はまたしても青ざめる。

優真は小さくため息をつくと、俺の腰元を更にぐっと引き寄せ、続けた。

「あんなにソワソワして、ジュースばかりよく飲むし、トイレに立ったかと思ったら椅子をガタガタしてまた落ち着かない……かと思いきや、ラストスパートの頃には寝ちゃうし。まったく……」

「優真……全部、気付いて……?」

「そりゃあ、隣であれだけソワソワされたらね。それに陽斗を見てたら、幼い頃の妹を思い出したよ。妹も昔は、一緒に映画を見ている時に落ち着かなくてね。立ち上がって別の事を始めたり、僕にちょっかいを出してきたりしたものだよ」

「う……」

どうやら俺は、ただ単に落ち着きのない子供だと思われたらしい。

優真に後ろから抱きしめられたまま、俺はしょぼんと肩を落とした。

(あーあ……)

今回ばかりは、反論できない。

俺は優真との事になると、どうしても子供っぽくなる気がする。

(もう少し大人になんないとなぁ)

そんな風に思う。

すると、ふいに耳元でクスッと笑い声が響いた。

「ふふ……ほんとに可愛いな、僕のエンジェルは」

「……っな、なんだよ……なにが……」

耳に吐息を感じ、擽ったさにビクビクしながらも尋ねると、優真は甘いため息をついた。

「はぁ、無自覚なのがまた、僕の心を刺激するみたいだ。……陽斗、一つ確認したいんだけど……さっき、本当は手を繋いだりとか、したかったんじゃないのかい?」

「……!」

図星をつかれ、思わず肩がビクッと震える。

優真は更に続けた。

「途中、テーブルに手を置いてただろう?あれは、僕と手を繋ぎたいと思っていたから……違うかい?」

「そ、れは……っ」

するりと手を取られ、心臓が大きく跳ね上がる。

俺は慌てて言い返そうと身を捩った。

そして優真の方を向くと、上目遣いに睨んで言った。

「だって……!あんな映画みたら、同じようにしたいって思うだろ!悪いかよ!?あ……ていうか別に、そういうシーンだけに注目してた訳じゃないからな!俺はちゃんと全体のストーリーを追って……」

「……追って、観てた?」

優真が小首を傾げ、イタズラっぽく微笑みながら問うてくる。

「み……観てたし……っ」

俺は優真から目を逸らしつつ答える。

「面白かった?」

「……面白かった」

「キスシーンは、そんなにドキドキした?」

「……っ だから!そ、それは……っ」

わざとらしく問い詰められ、俺は顔を真っ赤に染め上げて俯く。

するとなにやら、優真がフルフルと震え始めた。

そして……

「陽斗……はぁ、もう……っ可愛いぃいぃいいぃいぃいい!!」

「へ……?」

いや、どうした。

予想外の反応に、一瞬気が抜ける。

優真は耐えきれないとばかりに叫ぶと、俺の顎をクイッと指先ですくい上げた。

「まったく……まったくもう!困った弟だ、陽斗は!はぁ……さっきから我慢していたが、もう抑えがきかないよ……!ということで、仕方がない……お兄ちゃんがご褒美をあげよう!」

「待て!誰が弟だっ!」

「陽斗♡」

「だぁあっ!勝手に弟に設定すんな……っちょ、待っ……んんっ」

反発しようとするも、強引に唇を塞がれてしまった。

「ん……や……っ」

僅かにキスが深まり、ドキドキが強くなる。

ずっとして欲しかった事をして貰えて、反発心がどこかへ飛んでいく。

そして全身の力が抜け落ちてきた頃、僅かに唇が離され、残念な気持ちに襲われる。

しかし、それも束の間、今度は後ろ頭を押えられ、角度を変えて、先程よりも深く口付けられた。

「ゆぅ……ま……」

「陽斗……だめだ、可愛すぎる……その薔薇色の唇、もう暫く、独占させてもらうよ……」

「ちょ……んん!」

誰が薔薇色の唇だ。

と、内心ツッコミつつも、俺は激しいキスに翻弄されていく。

そして、徐々に壁際へ追い詰められていった。

トン、と壁に背中がつくと、今度は両手首を捕まえられ、壁に拘束された。


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