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成瀬はどこか照れくさそうに、後ろ頭に手をやりながら俺の返事を待っている。

(そ、そういえば、あの時のメールの返事も曖昧にしたままだったっけ……)

あの後、俺は成瀬と優真の仲を取り持つためにも、成瀬と一度ちゃんと話をしようと思っていた。

けれど、公園であんな事があった訳で……。

(ここは、成瀬にハッキリ意思表示する為にも、断らなきゃだよな)

おそらく、勇気を出して誘ってくれたのだろうけれど、それなら余計に、中途半端な気持ちで誘いに乗る訳にはいかない。

目を合わせるのは少し恥ずかしいのだけれど、俺は真っ直ぐに成瀬を見つめて言った。

「ごめん……俺、行けない」

「……そっか。えっと……この間はごめん。東条先輩と仲良くしてる陽斗君を見てたら、つい、焦っちゃってさ。もう、強引にあんな事しない。約束するよ」

そう言って、成瀬はそっと右手を差し出してきた。

「握手、しよ。本当は小指絡めて約束ってしたいけど」

「成瀬……」

明らかに残念そうな成瀬の表情に、胸が痛む。

けれど、こういうことは、コントロール出来るものじゃないし、仕方がないだろう。

俺は優真が好きだし、成瀬は俺が好き。

(まさに、三角関係ってやつか……?)

そんなの、漫画ぐらいでしか見たことがない。

俺は小さくため息をつき、成瀬の手を握った。

「俺こそ、ごめん。でも……成瀬の事、友達としては、スゲー良い奴だし、仲良くなりたいって思ってるから」

「陽斗君……はぁ、も~……」

成瀬は空いた方の手でガシガシと髪をかき乱すと、やや強引に俺の身体を引き寄せた。

「……っ?」

抱き寄せられるような体勢になり、慌てて身を引こうとすると、耳元で囁かれる。

「気持ちが落ち着くまで、待ってて。俺……やっぱり陽斗君が好きだよ」

「あっ……な、成瀬……っ」

耳は弱いんだから、勘弁してくれ。

不覚にも感じてしまい、体がビクッと反応してしまう。

気付けば、講堂には俺たち二人の他には誰も居なくなっていた。
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