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「な……っ」

堂々たる告白に、思わず顔を上げると、成瀬はクスリと笑みを浮かべた。

そしておもむろに、ベンチから立ち上がる。

「いいよ、分かってる。陽斗君は……東条先輩が好きなんでしょ?」

「そ……れは……」

なんと返せば良いやら分からず言葉を詰まらせていると、成瀬は更に付け加えた。

「そして、東条先輩も陽斗君が好き。まぁ、あれは分かりやす過ぎるかな」

そう言って、成瀬は小さく笑うと、こちらを振り向いた。

「陽斗君、俺……たぶん、一目惚れ」

「え……?」

「ノート貸してって言われた時、正直ドキッとしたんだ。あまりにも陽斗君が……可愛くて。それなのに……」

言いながら、成瀬はそっと俺の肩に手を置く。

(な、なに……?)

真っ直ぐに見下ろす目は辛そうに細められており、心臓が痛いほどに脈を打つ。

成瀬は言う。

「もう好きな奴がいたなんて、ショックだよ……でも」

「な、るせ……?ちょっ、やめ……!」

迫ってくる成瀬の身体を、精一杯押し返したつもりだった。

けれど、力及ばず。

「あ……っ!?」

首筋にピリッとした痛みが走り、俺は小さく身体を震わせた。

「な……っ」

一瞬、何が起きたのか分からながったが、すぐに理解した。

(俺、今、成瀬に……)

震える手で首筋を押さえ、見上げると、切なげな瞳に捕えられる。

成瀬は呟くように、小さく口を開いた。

「……俺、まだ諦めないから。隙があれば、東条先輩から奪いに行く。覚悟しといてね」

「な、成瀬……っおい、待てよ!」

呼び止めるものの、成瀬は振り返らずに去っていく。

俺は暫し、その背中を茫然と見送った。

そして、ハッとして首筋に触れる。

(……そうだ、これ……)

俺は急いでスマホで時間を確認する。

バイトまで、あと30分もない。

しかし、これを確認せずにバイト先へ行く訳にもいかないだろう。

(くそっ……)

俺は大慌てで公園のトイレに駆け込み、鏡を覗き込んだ。

すると……

(……やっぱり!)

予想通りの事態に愕然とする。

(消えない、よな……ああもう!)

ちょうどシャツの襟でギリギリ隠れる場所に赤いアザがあり、試しに指先で擦ってみる。

しかし、消えるわけは無かった。

(どうしよう……キスマークなんて)


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