上 下
128 / 175
11

128

しおりを挟む
ハッとして顔を上げると、成瀬がキョトンとした顔で俺を見下ろしていた。

「どうしたの、こんな時間に……あ、バイト?」

「うん、俺、そこのコンビニでバイトしてんだ」

「へぇ……あ、それってもしかして、プリンじゃない?」

成瀬は俺の手元を見下ろし、目を丸くしている。

どうやら、袋が透けてプリンのパッケージが見えたらしい。

しかし、そんなにすぐ分かるとは。

成瀬はこのプリンが好きなのだろうか。

それとも、ただのプリンマニア?

不思議に思っていると、成瀬がクスッと笑みを漏らした。

「ふふ、驚かせちゃった?実は俺、そのコンビニのプリン好きなんだ。ていうか、密かに人気だよね、それ」

なるほど。

俺は納得して頷いた。

「そっか。うん、このプリン大抵いつも売り切れてて、今日はたまたま買えたっていうか……あ、そうだ」

話しながら、俺はふとノートの事を思い出した。

せっかく会えたのだから、今返してしまえば一件落着だ。

俺は鞄を漁り、成瀬に借りたノートを取り出した。

「はい、これ。もう写し終わってるから、返す。ありがと、すげー助かった」

そう言って差し出すと、成瀬は俺の手からそっとノートを受け取った。

「いや、ノートぐらい、いつでも貸すよ。また困ったら言ってね」

そう言って微笑む成瀬は、頼りになる兄のように見える。

俺はなんだか弟にでもなったような気分で頷いた。

「うん、ありがと。えと、成瀬も困ったら言えよな。俺、普段はちゃんとノート取ってるし」

「はは、そうだよね。分かった、その時はよろしく。じゃあ、また」

成瀬は爽やかに微笑むと、俺の横を通り過ぎて行く。

その姿を見送りながら、俺はある事に気付いた。

(そういえば、ノートのお礼……)

まぁ、そこまで律儀にしなくても良いのかもしれないが、ノートの中身は素晴らしかったし、何か少しでもお礼をしたい気持ちはある。

(あ……)

俺は手元のプリンに目をやった。

(このプリン、好きだって今、言ってたよな)

本当は、優真と俺の分なのだが……。

(優真とは、半分こすればいっか)

一人一個食べるのも良いけれど、一つのプリンを半分こするのも悪くない。

(食べさせ合いっこしたりして……)

想像するとニヤけそうになり、俺は慌てて顔をブンブンと横に振った。

そして、慌てて成瀬を呼び止める。

「成瀬……!ちょっと待って」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

これ以上ヤったら●っちゃう!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:3

【R18】Ωな私の恋は忍ばない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:12

竜になれない竜人皇子と竜人子爵の優愛

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:118

どうすればよかったの…

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:96

お泊まり

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:4

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

BL / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:318

真珠姫と野獣王

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,009pt お気に入り:393

暴君に相応しい三番目の妃

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,264pt お気に入り:2,543

muro - 使われたい男、使う男 -

BL / 連載中 24h.ポイント:979pt お気に入り:246

処理中です...