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スプーンにガバッとお粥を掬い、目の前に差し出すと、優真は僅かに目を見開いてふふっと笑った。
「ありがとう。それじゃあ、遠慮なく」
「……っ」
優真の顔が手元に近づき、お粥をパクッと食べられる。
その瞬間の、なんとも言えない甘ったるい感じに、俺は思わず顔を背けた。
「ん……おいしい」
「そうかよ」
「次、ちょうだい?」
「う……」
催促され、俺は仕方なく、ぎこちない手つきでもう一杯お粥を掬った。
そしてもう一度、優真の口元へ差し出す。
「おら、食え」
つっけんどんな態度で、目を合わせないようにそっぽを向いたまま促すと、優真はクスクス笑いながらも、静かに二杯目を食べた。
そしてお粥を飲み込むと、親指で口元を拭いながら、チラリとサイドテーブルに目をやる。
「……ふぅ。少し喉が渇いたな。陽斗、飲ませてくれる?」
「え……いや、さすがに飲み物は自分で飲めよ」
「はぁ……分かってないなぁ、陽斗は。僕が思うに、こういう時は、さ……」
優真は一旦言葉を切ると、ちょいちょいと手招きをして俺を呼び寄せる。
「んだよ?」
不信な目で睨むと、そっと耳元に囁かれた。
「口移しで飲ませて?」
「え……っ!?」
瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
「ありがとう。それじゃあ、遠慮なく」
「……っ」
優真の顔が手元に近づき、お粥をパクッと食べられる。
その瞬間の、なんとも言えない甘ったるい感じに、俺は思わず顔を背けた。
「ん……おいしい」
「そうかよ」
「次、ちょうだい?」
「う……」
催促され、俺は仕方なく、ぎこちない手つきでもう一杯お粥を掬った。
そしてもう一度、優真の口元へ差し出す。
「おら、食え」
つっけんどんな態度で、目を合わせないようにそっぽを向いたまま促すと、優真はクスクス笑いながらも、静かに二杯目を食べた。
そしてお粥を飲み込むと、親指で口元を拭いながら、チラリとサイドテーブルに目をやる。
「……ふぅ。少し喉が渇いたな。陽斗、飲ませてくれる?」
「え……いや、さすがに飲み物は自分で飲めよ」
「はぁ……分かってないなぁ、陽斗は。僕が思うに、こういう時は、さ……」
優真は一旦言葉を切ると、ちょいちょいと手招きをして俺を呼び寄せる。
「んだよ?」
不信な目で睨むと、そっと耳元に囁かれた。
「口移しで飲ませて?」
「え……っ!?」
瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
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