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「優真……」

「だ、だめだ……来ないで、陽斗君……!」

近付こうとすると、拒絶される。

けれど俺は、ジリジリと距離を詰めていった。

「なんでダメなんだよ?」

「なんでって、それは……」

珍しく、優真が口ごもる。

その間に、俺は優真の目の前まで迫った。

優真は俺から目を逸らしたまま、ポツリと漏らす。

「……今、陽斗君に抱きしめ返されて、何かが……僕の中で弾けそうだった。こんな風になるのは初めてだよ。いま僕は、自分を止められそうにない。このままだと、陽斗君に何をするか分からない……だから、僕に近付いちゃダメだ」

「優真……」

そう言われると、余計近付きたくなってくる。

が、優真は自分の体を抱き締めるようにして拒み続けている。

そしてなにやら、ブツブツと漏らし始めた。

「今はダメだ……ダメなんだ……ああ、落ち着け……!まず、恋愛は基本的に男女でするもので……陽斗君は可愛いし愛おしいし目が離せない存在ではあるが、あくまでも男の子であって……ああでも、僕にはやっぱり麗しのエンジェルにしか見えない……っ何故なんだ!?」

(うーん、重症だ……)

頭を抱え続ける優真を、俺は暫し見守る。

優真は今、人生で初めて恋心を自覚しつつあり、理性が崩壊しかけているのだろう。

そしてその理性が効かなくなった自分がどうなるか分からなくて、怯えているのだ。

(もし本当にそうなら、俺は……)

トクン、トクンと、徐々に鼓動が速くなる。

理性が崩れ去った優真を、見てみたい。

もし、優真の理性が無くなったら……。

(キス以上の展開になる、かもしれないよな……)

ああ、俺も今、理性を失いかけてる。

俺にだって、限界はあるんだ。

俺は僅かに震える手を、優真の前に差し出した。
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