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少しドSっぽい笑みを浮かべる東条に、ドキリとする。

ドS東条は、不敵に微笑んで続けた。

「ふふっ。また、呼んでもらおうかな……下の名前で」

「……っ」

人差し指が退いたらキスしてしまいそうな距離で囁かれ、俺は顔を真っ赤に染める。

そして、そっと人差し指が離れると、真っ直ぐな視線に捉えられて上手く身体が動かない。

言わないと、どうにかされそうだ。

周りには、人々が普通に行き交っていて、たまに視線を感じてヒヤッとする。

俺は東条の視線攻撃を受けつつ思考を巡らせた。

(変に拒むと、またエンジェルとか言い出しかねない、よな……)

もしくは、ハグかキスでもされら、たまったもんじゃない。

いや、むしろ拒まない方が危険かも……!?

色々と予想されるが、こうして考えていても仕方がない。

それに、俺だって出来ることなら下の名前で呼びたいのだ。

……俺は拳を握り締めた。

「ゆ……」

「んん?」

「……ま」

「ふふ、だーめ。もう一度」

「……っ今言った!」

「間開きすぎ。ほら、頑張って?」

「~~~~っ」

促され、耳まで赤くなる。

俺はもう半ばヤケクソで、ギュッと目を瞑って言った。

「ゆ、う、ま……っ」

「ん……よく出来ました♡陽斗君、そんなに照れなくても……」

東条……いや、優真はそう言って、俺の頭をポンポンと優しく叩いた。

そしてさらに続ける。

「こういうのは慣れればどうってことないよ。次に陽斗君が名前を呼んでくれたら、僕も普通に返事をするから、ね?」

「……わ、かった」

優真なりに気を使ってくれたのだろう。

俺も、いちいち反応されるより、何気なく流してくれた方が自然に呼べるようになるだろうから、助かる。

そう思って一息つくと……

優真は何やら、トートバッグの中を漁り始めた。
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