【BL】キス魔の先輩に困ってます

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｢逃げないで……ほら、皆にちゃんと挨拶して？｣

｢……っ｣

くっそ……！

こいつは、いつもいつもやり方がズルい。

俺が断れないように攻めてくる。

ワザとではないかもしれないけれど、勘弁してくれ。

しかし、確かに俺からは、ちゃんと挨拶をしていない。

俺は観念し、小声で東条に言った。

｢おい、言っとくけど、恋愛サークルには入らねぇからな。バイトもあるし……｣

すると、東条は俺を引き止める気配もなく、ニコリと笑った。

｢うん、分かってる。無理強いする気は無いよ。ただ今日は、陽斗君を皆に紹介したかったんだ｣

｢そ、そか……｣

東条の言葉に、力が抜ける。

それに、俺を皆に紹介したかっただけって……

(う、嬉しい……かも)

｢……っ｣

｢陽斗君？｣

｢なんでもねーよ｣

俯き、ニヤけそうになるのを必死に堪える。

そしてその後、俺は女子達全員に向かって名前や学年、学部なんかを自己紹介した。

・・・

――帰り道。

女子達と駅で別れ、ホッと息をつく。

(なんか、疲れた……)

あの後、東条と俺は女子たちからの質問攻めに遭い、記者会見状態だった。

幸い、東条が”エンジェル”だのなんだのと言わなかったので、”東条優真と宮原陽斗は仲の良い友達”としてちゃんと認識された。

……それは良いのだけれど。

(はぁ……てことは、女子達も遠慮なくコイツに迫ってくるよな)