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「いただきます」

そう言って紅茶のカップに手をつけると、東条が感嘆のため息を漏らす。

「陽斗君……なんって礼儀正しいんだっ」

「え……?」

目を輝かせる東条。

俺はキョトンとして目をぱちぱち。

おそらく東条は、”手を合わせていただきます”の挨拶をした事に対して感心しているのだろう。

けど、俺だって別に、毎回そうやって挨拶してから食べ始めるかと言えば、そうでもない。

てかそもそも、そんないちいち感動するような事か……?

が、一応、謙遜してみせる。

「いや……まぁ、作ってもらったし、無言で食い始めるのも違うだろ」

すると、東条は大きく頷きながら愛おしそうに目を細めた。

「そうかい、そうかい……はぁ、陽斗君はいつもツンツンしているけど、やはり根底には愛が溢れ、思いやりと感謝に満ち満ちているんだね。そして、心は清らかで泉の如く美しく……けれど時には、頬をバラ色に染めて人々の心を誘惑するストロベリーなアイスクリームの如くトロトロにとろけてしまうという、類まれなる魅力、そして更には人類の理解を遥かに超えた”色気”というものを携えt……」

「だ・ま・れ!」

東条の言葉を思い切り遮り、俺は食パンにかぶりついた。

(っっっったく!!つーかストロベリーなアイスクリームってなんだよ!?)

真っ赤になった顔を俯けたまま、黙々と食パンを胃袋に流し込む。

そしてチラリと、東条に目をやると……

(……こっち見過ぎ)

東条は満足気に、俺を見つめながら紅茶をすすっている。

その瞳は優しく、穏やか。

まるで本当に兄が弟を見守っているようで、俺を無駄に甘やかす。

(その目……勘違いしそうになるから、やめろよ……)

俺だけを見つめる瞳は艶めいていて、大人の色香を感じさせる。

うっかりすると、東条が俺の事を”好きな人”もしくは”恋人”として見ているんじゃないかと、勘違いしそうになる。

(もし本当に、そうだったら……)

妄想が膨らみそうになり、俺は慌てて紅茶に口をつけた。


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