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「陽斗君、体調が悪い時に申し訳ないのだけど……少しだけ、僕の話を聞いてくれないか?」

「ああ……まぁ、いいけど?」

熱でぼうっとしてはいるけれど、人の話を聞くぐらい出来る。

承諾すると、東条は嬉しそうに微笑んだ。

「……僕には、少し年の離れた妹がいるんだ。可愛くてね、昔はよく一緒に遊んだし、自分で言うのもなんだけど、妹の面倒は両親以上にみていたって思えるほどだよ。もちろん、基本的には両親が全部みてくれたけどさ」

「……」

懐かしそうに話す東条を、俺は黙って見つめ、話の先を待った。

「僕はね、幼い頃少しだけ海外に住んでいたんだ。父の仕事の関係でね。だから……日本ではない習慣も身についた。例えば、挨拶でハグやキスをするとか、ごく当たり前の事だと認識していた」

「ハグ……」

反射的に繰り返しそうになって、俺は慌てて口を噤んだ。

″キス″とか、恥ずかしくて言えないし。

(けどコイツは、挨拶でそういうの、出来るって事か……)

生粋の日本人である俺には、考えられない事だ。

言うのだけでも照れてしまうのに、挨拶でそんな事をされたら、顔から火が出てしまうだろう。

そんな事を思いながら頬を赤らめていると、東条がクスッと笑いながら続けた。

「そう、日本だとキスやハグって聞くと、それだけで赤くなっちゃう子もいるんだよね。例えば、今の陽斗君みたいに」

「んな……っ別に、赤くなってなんかねーよ!」

見透かされたのがまた恥ずかしくて、ムキになって言い返すと、東条はアハハと笑った。

「ごめんごめん。陽斗君のは、熱のせいだよね。……でね、話の続きなんだけど。その……僕には今でもその″クセ″が強く残っているんだ」

「え、そうなのか?」

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