92 / 98
第九十三話
しおりを挟む
「……そうだな。心配のし過ぎは良くない。とりあえず風邪薬、持ってくるね」
「はい。あの、心配かけて、すみません……」
そう言って謝ると、シグレさんはゆっくりと首を横に振り、「いいから、任せて?」と言い残して部屋を出ていった。
(はぁ……僕の身体、一体どうしたんだろう)
何か病気でなければ良いが、自分の母親の事を考えると、その体質を引き継いでいてもおかしくない。
ただ、父に関しては健康そのものだったので、主にそちらを引き継いでいれば良いのだけれど。
どちらにせよ、母の体質は少なからず受け継いでいるだろうから、健康には気をつけなければならない。
と、色々考えを巡らせていると、シグレさんが戻ってきた。
手にはトレーを持っており、その上にはコップに入った水、風邪薬、そして、おかゆまで用意されていた。
「ごめん、おかゆはレトルトのものなんだけど、もうすぐ夕飯の時間だし、お腹空いてるかと思って」
「わぁ、ありがとうございます」
そう言われれば、少しお腹が空いているかもしれない。
シグレさんがトレーの上の物をサイドテーブルに移し替えている間に、僕はゆっくりと身を起こす。
「あっ、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。すみません、全部用意してもらって……」
今はもう、あまり気を使い過ぎることは無くなったけれど、僕の立場は半分は使用人だ。
いくら恋人で、番になったとはいえ、ご主人様に寄り掛かるのは気が引けてしまう。
ここまでしてもらったらもう十分過ぎるので、あとは自分で何とかしなければならない。
「あの、あとは自分で出来ますから、シグレさんはお食事とって下さい。僕は、薬を飲めば良くなると思いますから」
しかし、その僕の提案は呆気なく却下された。
「あ、セイラ? はぁ……そうやって、また気を使うつもり?」
「えっ……で、でも」
「セーイーラ? お仕置き」
「え、あ……っ」
気付けば、顎に手がかけられ、クイッと上向かされる。
そしてあっとう言う間に唇を奪われてしまった。
「ん、ぁ……だめ、です……ん、風邪、うつっちゃ……」
「いーの。ほら、もう一回?」
「んんっ」
甘過ぎるキスに、気持ちがふわふわしてくる。
そして解放される頃には、僕はすっかり蕩けてしまっていた。
「ぁ……シグレさん……」
見上げると、濡れた唇をそっと親指で拭われる。
シグレさんは小さく微笑むと、気持ちを入れ替えるように僕の肩にポンと手を乗せた。
「さ、おかゆを食べて風邪薬を飲まないと。俺の仕事が片付いてるタイミングで良かったよ。セイラの看病は、俺がしっかりやるからね。あ、気を遣うのは無しだよ?」
「……っ」
応える前に唇に人差し指を当てられ、僕は観念してコクンと頷いた。
「はい。あの、心配かけて、すみません……」
そう言って謝ると、シグレさんはゆっくりと首を横に振り、「いいから、任せて?」と言い残して部屋を出ていった。
(はぁ……僕の身体、一体どうしたんだろう)
何か病気でなければ良いが、自分の母親の事を考えると、その体質を引き継いでいてもおかしくない。
ただ、父に関しては健康そのものだったので、主にそちらを引き継いでいれば良いのだけれど。
どちらにせよ、母の体質は少なからず受け継いでいるだろうから、健康には気をつけなければならない。
と、色々考えを巡らせていると、シグレさんが戻ってきた。
手にはトレーを持っており、その上にはコップに入った水、風邪薬、そして、おかゆまで用意されていた。
「ごめん、おかゆはレトルトのものなんだけど、もうすぐ夕飯の時間だし、お腹空いてるかと思って」
「わぁ、ありがとうございます」
そう言われれば、少しお腹が空いているかもしれない。
シグレさんがトレーの上の物をサイドテーブルに移し替えている間に、僕はゆっくりと身を起こす。
「あっ、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。すみません、全部用意してもらって……」
今はもう、あまり気を使い過ぎることは無くなったけれど、僕の立場は半分は使用人だ。
いくら恋人で、番になったとはいえ、ご主人様に寄り掛かるのは気が引けてしまう。
ここまでしてもらったらもう十分過ぎるので、あとは自分で何とかしなければならない。
「あの、あとは自分で出来ますから、シグレさんはお食事とって下さい。僕は、薬を飲めば良くなると思いますから」
しかし、その僕の提案は呆気なく却下された。
「あ、セイラ? はぁ……そうやって、また気を使うつもり?」
「えっ……で、でも」
「セーイーラ? お仕置き」
「え、あ……っ」
気付けば、顎に手がかけられ、クイッと上向かされる。
そしてあっとう言う間に唇を奪われてしまった。
「ん、ぁ……だめ、です……ん、風邪、うつっちゃ……」
「いーの。ほら、もう一回?」
「んんっ」
甘過ぎるキスに、気持ちがふわふわしてくる。
そして解放される頃には、僕はすっかり蕩けてしまっていた。
「ぁ……シグレさん……」
見上げると、濡れた唇をそっと親指で拭われる。
シグレさんは小さく微笑むと、気持ちを入れ替えるように僕の肩にポンと手を乗せた。
「さ、おかゆを食べて風邪薬を飲まないと。俺の仕事が片付いてるタイミングで良かったよ。セイラの看病は、俺がしっかりやるからね。あ、気を遣うのは無しだよ?」
「……っ」
応える前に唇に人差し指を当てられ、僕は観念してコクンと頷いた。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
スノードロップに触れられない
ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙*
題字&イラスト:niia 様
※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください
(拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!)
アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。
先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。
そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。
しかし、その考えはある日突然……一変した。
『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』
自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。
『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』
挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。
周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。
可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。
自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!!
※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!!
※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる