雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

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第九十三話

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「……そうだな。心配のし過ぎは良くない。とりあえず風邪薬、持ってくるね」


「はい。あの、心配かけて、すみません……」


そう言って謝ると、シグレさんはゆっくりと首を横に振り、「いいから、任せて?」と言い残して部屋を出ていった。


(はぁ……僕の身体、一体どうしたんだろう)


何か病気でなければ良いが、自分の母親の事を考えると、その体質を引き継いでいてもおかしくない。

ただ、父に関しては健康そのものだったので、主にそちらを引き継いでいれば良いのだけれど。

どちらにせよ、母の体質は少なからず受け継いでいるだろうから、健康には気をつけなければならない。


と、色々考えを巡らせていると、シグレさんが戻ってきた。

手にはトレーを持っており、その上にはコップに入った水、風邪薬、そして、おかゆまで用意されていた。


「ごめん、おかゆはレトルトのものなんだけど、もうすぐ夕飯の時間だし、お腹空いてるかと思って」


「わぁ、ありがとうございます」


そう言われれば、少しお腹が空いているかもしれない。

シグレさんがトレーの上の物をサイドテーブルに移し替えている間に、僕はゆっくりと身を起こす。


「あっ、大丈夫?」


「はい、大丈夫です。すみません、全部用意してもらって……」


今はもう、あまり気を使い過ぎることは無くなったけれど、僕の立場は半分は使用人だ。

いくら恋人で、番になったとはいえ、ご主人様に寄り掛かるのは気が引けてしまう。

ここまでしてもらったらもう十分過ぎるので、あとは自分で何とかしなければならない。


「あの、あとは自分で出来ますから、シグレさんはお食事とって下さい。僕は、薬を飲めば良くなると思いますから」


しかし、その僕の提案は呆気なく却下された。


「あ、セイラ? はぁ……そうやって、また気を使うつもり?」


「えっ……で、でも」


「セーイーラ? お仕置き」


「え、あ……っ」


気付けば、顎に手がかけられ、クイッと上向かされる。

そしてあっとう言う間に唇を奪われてしまった。


「ん、ぁ……だめ、です……ん、風邪、うつっちゃ……」


「いーの。ほら、もう一回?」


「んんっ」


甘過ぎるキスに、気持ちがふわふわしてくる。

そして解放される頃には、僕はすっかり蕩けてしまっていた。


「ぁ……シグレさん……」


見上げると、濡れた唇をそっと親指で拭われる。

シグレさんは小さく微笑むと、気持ちを入れ替えるように僕の肩にポンと手を乗せた。


「さ、おかゆを食べて風邪薬を飲まないと。俺の仕事が片付いてるタイミングで良かったよ。セイラの看病は、俺がしっかりやるからね。あ、気を遣うのは無しだよ?」


「……っ」


応える前に唇に人差し指を当てられ、僕は観念してコクンと頷いた。


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