雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

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第八十五話 

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それから、グイっと腰元を引き寄せられ、身体が密着する。


「……っ」


ドキドキしてしまい、そっと見上げると、ちゅっとおでこにキスが降ってきた。

唇が離れると、シグレさんは小さくため息をつき、話を続けた。


「ほんと、今もそうだけど、セイラを前にすると抑制剤が効かなくなる。だからセイラがうちに来たばかりの時も、早速セイラの事を襲っちゃったし」


あの時はごめん、と言って、シグレさんはグラスに注がれた赤ワインを一口呷った。

僕はその姿をぼんやりと眺めつつ、そっと胸に手を当てる。


(こんなに素敵な人が、僕の事で悩んだり、抑えが効かなくなるなんて……)


改めて思うと、また胸がドキドキしてくる。

シグレさんはαで、有名な小説家で、優しくて、スマートでカッコよくて……いわば、非の打ちどころがない人だ。

そんな人に、こんなにも想われているのかと思うと、なんだか堪らない気持ちになる。

僕はそっと睫毛を伏せた。


「…………」


「……セイラ?」


「……シグレさん……っ!」


「わっ……!? ちょ、セイラ、どうした?」


嬉しくて仕方なくなった僕は、堪らず抱きついて頬を擦り寄せる。

そしてぎゅうっと抱きしめ、想いを口にした。


「大好きです……っ僕も、抑制剤なんか効かないくらい、シグレさんが好き……っ」


「……!」


すると一瞬、息を呑む音が聞こえ、力強く抱き締め返される。

そして僅かに身体が離れると、今度は唇を塞がれた。


「ん、んんっ」


「は、セイラ……本当にかわいいね。大好きだよ」


「ぁ、ん、僕も……っ」


応えると、更にキスが深まっていく。

こうなってしまうと、もう食事どころではない。


(お腹は空いてるけど、今は……シグレさんを感じていたい)


食事よりも、今はお互いが愛おしくて仕方がない。

ソファーに押し倒されると、僕は抵抗する事もなく服を脱がされていった。


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