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第八十四話 日記に書いた事
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「日記……あ、施設に送った報告日記ですか?」
聞くと、シグレさんはコクリと頷いた。
「あの日記の内容、セイラはゴウエルさんから一部、聞いてるだろ?その……あの時、俺が焦った理由とか、何が書いてあったのかっていうの、今なら話せると思って」
「あ……」
そういえば、あの時……僕がゴウエルさんから日記の内容を聞いた時、シグレさんは僕が何を聞いたのか気にして、慌てていた。
確か ”セイラにとって悪い事が書いてある訳ではないけれど、今は説明が難しい” とシグレさんは言っていた。
僕も、内容を無理に聞き出したりはしなかったのだけれど……。
食事の手を止め、僕はシグレさんをじっと見つめた。
シグレさんは少し考えるように俯き、ポツリと話し始めた。
「……あの日記には、N高校でのセイラとの出会いを書いたページがあったんだ。もちろん、施設に提出する物だし、他人には分からない程度に、だけど」
そう言って、シグレさんは天井を見上げ、小さくため息をつく。
その横顔は、少し切なげに見えた。
「セイラをうちに迎える前……ネット上でセイラを見つけて、あの時の子だって確信はあったんだけど……セイラが俺の事を覚えているのか、そして、好きになって貰えるかどうかっていうのは、また別問題だろ? だから……実は、結構悩んだりもしてたんだ。もしフラれたらってどうしよう、とかね。で、セイラと過ごしながら悩んだりするうちに不安になって、原稿の合間に日記に書いたんだ。”セイラと俺の出会いは運命的だった。だからきっと大丈夫。旅行ではN校に一緒に行く” ってね」
鼻の頭を掻きながら、シグレさんは恥ずかしそうに苦笑する。
「シグレさん……」
そうやって、一人で不安な気持ちを紛らわしていたのかと思うと、胸がきゅうっと締め付けられる。
僕は胸元に手を当て、今にも抱きつきたい気持ちをぐっと抑え込んだ。
シグレさんは、少し照れ臭そうに咳払いをすると、話を続ける。
「まぁそんなわけで、あの日記にはそんなような事が書いてあったんだ。だから、そうだな……あの時点でセイラに聞かれちゃっても、原稿は片付いていたし問題なかったかもしれないけど、俺は……セイラと一緒にN校へ行って、一緒に思い出したかったんだ。N校へ行けば、もしセイラが忘れていたとしても思い出しやすいだろうとも思ったし、なにより、俺たちが初めて出会った場所で、伝えたかった」
(……そういう、ことだったんだ……)
真剣な眼差しを受け止め、僕は嬉しさで瞳を潤ませ、頬を赤く染めてコクリと頷いた。
シグレさんはクスリと小さく笑みを零し、僕の頭をポンとすると、更に話を続けた。
「しかしまぁ……今はまだ夢を見ているみたいだ。こうして、恋焦がれた人と結ばれたんだから……運命の番の印は現れなかったけど、俺たちは間違いなく運命の相手だよ。分からないけど、それだけは自信があるんだ」
そう言って、シグレさんは僕の頬に手を添えると、スリ、と優しく撫でた。
(それは、僕も……)
運命の番の印はなくても、僕たちはきっと運命の相手だ。
そう思い見つめると、まっすぐな瞳に捉えられる。
その瞳を見つめ返していると、やはり強い運命や絆を感じて、それが確信に変わっていく。
もし、他に運命の相手だという人物がこの先現れたとしても、僕の心は動かないだろう。
(僕はシグレさんが、好き)
気付けば、心臓はドキドキと高鳴っており、僕は求めるようにシグレさんの方へ手を伸ばした。
すると、斜め向かいに座っていたシグレさんは僕の手を取り、隣に移動してきて腰を下ろした。
聞くと、シグレさんはコクリと頷いた。
「あの日記の内容、セイラはゴウエルさんから一部、聞いてるだろ?その……あの時、俺が焦った理由とか、何が書いてあったのかっていうの、今なら話せると思って」
「あ……」
そういえば、あの時……僕がゴウエルさんから日記の内容を聞いた時、シグレさんは僕が何を聞いたのか気にして、慌てていた。
確か ”セイラにとって悪い事が書いてある訳ではないけれど、今は説明が難しい” とシグレさんは言っていた。
僕も、内容を無理に聞き出したりはしなかったのだけれど……。
食事の手を止め、僕はシグレさんをじっと見つめた。
シグレさんは少し考えるように俯き、ポツリと話し始めた。
「……あの日記には、N高校でのセイラとの出会いを書いたページがあったんだ。もちろん、施設に提出する物だし、他人には分からない程度に、だけど」
そう言って、シグレさんは天井を見上げ、小さくため息をつく。
その横顔は、少し切なげに見えた。
「セイラをうちに迎える前……ネット上でセイラを見つけて、あの時の子だって確信はあったんだけど……セイラが俺の事を覚えているのか、そして、好きになって貰えるかどうかっていうのは、また別問題だろ? だから……実は、結構悩んだりもしてたんだ。もしフラれたらってどうしよう、とかね。で、セイラと過ごしながら悩んだりするうちに不安になって、原稿の合間に日記に書いたんだ。”セイラと俺の出会いは運命的だった。だからきっと大丈夫。旅行ではN校に一緒に行く” ってね」
鼻の頭を掻きながら、シグレさんは恥ずかしそうに苦笑する。
「シグレさん……」
そうやって、一人で不安な気持ちを紛らわしていたのかと思うと、胸がきゅうっと締め付けられる。
僕は胸元に手を当て、今にも抱きつきたい気持ちをぐっと抑え込んだ。
シグレさんは、少し照れ臭そうに咳払いをすると、話を続ける。
「まぁそんなわけで、あの日記にはそんなような事が書いてあったんだ。だから、そうだな……あの時点でセイラに聞かれちゃっても、原稿は片付いていたし問題なかったかもしれないけど、俺は……セイラと一緒にN校へ行って、一緒に思い出したかったんだ。N校へ行けば、もしセイラが忘れていたとしても思い出しやすいだろうとも思ったし、なにより、俺たちが初めて出会った場所で、伝えたかった」
(……そういう、ことだったんだ……)
真剣な眼差しを受け止め、僕は嬉しさで瞳を潤ませ、頬を赤く染めてコクリと頷いた。
シグレさんはクスリと小さく笑みを零し、僕の頭をポンとすると、更に話を続けた。
「しかしまぁ……今はまだ夢を見ているみたいだ。こうして、恋焦がれた人と結ばれたんだから……運命の番の印は現れなかったけど、俺たちは間違いなく運命の相手だよ。分からないけど、それだけは自信があるんだ」
そう言って、シグレさんは僕の頬に手を添えると、スリ、と優しく撫でた。
(それは、僕も……)
運命の番の印はなくても、僕たちはきっと運命の相手だ。
そう思い見つめると、まっすぐな瞳に捉えられる。
その瞳を見つめ返していると、やはり強い運命や絆を感じて、それが確信に変わっていく。
もし、他に運命の相手だという人物がこの先現れたとしても、僕の心は動かないだろう。
(僕はシグレさんが、好き)
気付けば、心臓はドキドキと高鳴っており、僕は求めるようにシグレさんの方へ手を伸ばした。
すると、斜め向かいに座っていたシグレさんは僕の手を取り、隣に移動してきて腰を下ろした。
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