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第七十九話 ホテルへ戻ろう
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「僕も……あの日、シグレさんを一目見て、忘れられなくなってしまったんです。運命かもって、思いました。だから、絶対にN校に入学したかったのに……っ僕はΩだから、ダメだって、両親に反対されて……っ」
当時の想いが蘇り、涙が溢れてくる。
けれど、もしかすると当時、シグレさんは高校三年生だった可能性もある。
だとすると、入学しても会えなかったのかもしれない。
(でも、それでも……せめて同じ高校に行きたかったんだ)
それぐらい真剣に、僕はシグレさんを追いかけようとしていた。
少しでも接点を持ちたかったのだ。
僕からすれば、名前も学年も分からない相手だったので、N校に行けなければもう一生会えないという焦りがあった。
でも、焦ってもどうしようもないし、いっそ諦めようと思ってみても、シグレさんとの出会いはいつまでも脳裏に焼き付いて消えてくれなかった。
それどころか、思い出すと会いたくて堪らなくなってしまい、とても辛かった。
だから、どうにかして彼に会いたい、会わなければ――その一心だった。
けれど、名前も何も知らない相手では絶望的で……。
そうこうする間に時は過ぎ、施設に入る頃には、諦めるしかない現実を少しずつ受け止め、切ない思い出に変えようとしていた。
なのに今、こうして再会を果たし、抱き締め合っているなんて信じられないーー
「……っセイラ!?」
「……っすみませ……」
一瞬、目の前が真っ白になって、気付けば僕は膝から崩れ落ちていた。
今ある現実が夢のようで、なんだかフワフワする。
シグレさんはそんな僕を慌てて支えると、僅かに眉を寄せる。
「……分かった。もうホテルへ戻ろう。観光は明日も出来るし、ね」
「は……い」
小さく頷くと、力強い腕に引き上げられる。
「立てそう?」
「はい、もう大丈夫です」
どうやら一瞬の事だったようで、まだフワフワしているものの、自分で歩くことは出来そうだ。
シグレさんは僕の具合を確かめるように見つめると、そのまましっかりと手を繋いだ。
そして僅かに頬を赤く染め、チラリとこちらを見下ろす。
「観光、出来なくてごめん。その……今は、早くセイラを抱きたくて、ちょっとマズい」
「シグレさん……あの、それは、僕も同じです、から……っ」
「ん……」
言いながら、僕も顔を真っ赤に染め上げたのだった。
■□■
ーー約20分後、僕達はタクシーでホテルに戻り、部屋へ向かう。
ホテル内は相変わらず落ち着いていて、コツコツと足音だけが響いた。
そして……
ーーガチャ、バタン。
「んっ……ぁ、シグレさ、待っ……んんっ」
シグレさんは後ろ手にドアを閉めるなり、僕の唇を奪った。
当時の想いが蘇り、涙が溢れてくる。
けれど、もしかすると当時、シグレさんは高校三年生だった可能性もある。
だとすると、入学しても会えなかったのかもしれない。
(でも、それでも……せめて同じ高校に行きたかったんだ)
それぐらい真剣に、僕はシグレさんを追いかけようとしていた。
少しでも接点を持ちたかったのだ。
僕からすれば、名前も学年も分からない相手だったので、N校に行けなければもう一生会えないという焦りがあった。
でも、焦ってもどうしようもないし、いっそ諦めようと思ってみても、シグレさんとの出会いはいつまでも脳裏に焼き付いて消えてくれなかった。
それどころか、思い出すと会いたくて堪らなくなってしまい、とても辛かった。
だから、どうにかして彼に会いたい、会わなければ――その一心だった。
けれど、名前も何も知らない相手では絶望的で……。
そうこうする間に時は過ぎ、施設に入る頃には、諦めるしかない現実を少しずつ受け止め、切ない思い出に変えようとしていた。
なのに今、こうして再会を果たし、抱き締め合っているなんて信じられないーー
「……っセイラ!?」
「……っすみませ……」
一瞬、目の前が真っ白になって、気付けば僕は膝から崩れ落ちていた。
今ある現実が夢のようで、なんだかフワフワする。
シグレさんはそんな僕を慌てて支えると、僅かに眉を寄せる。
「……分かった。もうホテルへ戻ろう。観光は明日も出来るし、ね」
「は……い」
小さく頷くと、力強い腕に引き上げられる。
「立てそう?」
「はい、もう大丈夫です」
どうやら一瞬の事だったようで、まだフワフワしているものの、自分で歩くことは出来そうだ。
シグレさんは僕の具合を確かめるように見つめると、そのまましっかりと手を繋いだ。
そして僅かに頬を赤く染め、チラリとこちらを見下ろす。
「観光、出来なくてごめん。その……今は、早くセイラを抱きたくて、ちょっとマズい」
「シグレさん……あの、それは、僕も同じです、から……っ」
「ん……」
言いながら、僕も顔を真っ赤に染め上げたのだった。
■□■
ーー約20分後、僕達はタクシーでホテルに戻り、部屋へ向かう。
ホテル内は相変わらず落ち着いていて、コツコツと足音だけが響いた。
そして……
ーーガチャ、バタン。
「んっ……ぁ、シグレさ、待っ……んんっ」
シグレさんは後ろ手にドアを閉めるなり、僕の唇を奪った。
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