雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

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第六十六話 相談

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……パタン。


「ふぅ……」


閉めた扉に寄りかかり、僕は深いため息をついた。

別に、シグレさんが他の女性と親しくしているからといって、浮気を疑ったりしている訳じゃない。

そもそも、相手は小説家であるシグレさんの担当さんなのだし、それなりに親しくても普通の事なのではないだろうか。


(はぁ……でも、気になるよー)


気分はモヤモヤのまま晴れず、僕はもう一度深いため息をつき、とぼとぼとキッチンへ戻った。


・・・


キッチンへ来ると、僕はまた気分を紛らわそうと、アールグレイの紅茶を淹れる事にした。

いつものティーバックを袋から出し、ティーカップに入れて湯を注ぐ。

そして紅茶が染み出すのを見つめていると、ふと、ある人の顔が思い浮かんだ。


(そうだ、ゴウエルさんに電話してみようかな)


そういえば、先日かかってきた時は途中で通話を終えなければならなくなってしまったので、こちらからもかけ直そうと思っていたのだ。

ゴウエルさんなら話しやすいし、もしかしたら少しぐらい相談に乗ってくれるかもしれない。

彼は確かもう50代半ばほどだったと思うが、いつも若いΩ達の相談に乗ってくれていたので、こういった恋愛相談にも慣れているだろう。


(よし……)


僕はスマホを手に取ると、着信履歴からゴウエルさんの番号を表示させ、発信ボタンを押した。

スマホに耳を当てると、呼び出し音が聞こえてくる。


Trrrrr……Trrrrr……


それから少しして、ゴウエルさんの声がした。


『はいはい、もしもし?セイラか?』


「あっ、ゴウエルさん!あの、先日は途中で切れちゃったので、かけ直そうかと思って……」


そう言うと、ゴウエルさんは嬉しそうな声で返事をする。


『お、そうかそうか。ま、こっちからも近いうちに、もう一度かけるつもりだったんだがな。どうだ、その後は。何も問題ないか?』


ゴウエルさんの優しい声が胸に響く。

やはり、今こうして聞くと懐かしい。

施設に居た当時は、毎日が退屈で嫌気が差してたのに、いざ出てみると懐かしく感じるものだから不思議だ。


僕は頷きながら返事をした。


「はい、以前も言ったかもしれませんが、とても良くしてもらってます。ただ……」


『ん?どうかしたのか?』


口籠ると、ゴウエルさんが不思議そうに尋ねてくる。

僕は小さく息を吸い込み、今の悩みを話すことにした。


・・・


僕はゴウエルさんに分かりやすいよう、なるべく手短にまとめて話した。

シグレさんと両想いな事、まだ番にはなっていない事、そして、気になる女性がシグレさんの担当さんである事……。

その話を、ゴウエルさんは時折り頷きながら真剣に聞いてくれた。

そして僕が話し終えると、スマホの向こうから、なにやらゴソゴソと漁っている音が聞こえてきた。


(……?)


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