雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

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※第五十五話 君の前では・3

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……ちゅ。


唇と唇が触れ、一気に鼓動が速まる。


(シグレさんの……やわらかい……)


本当は一瞬だけで離れようと思っていたのだけれど、胸の奥がきゅうっと締め付けられ、もっとキスをしたくなる。


(離れられない……っ)


気付けば、僕はシグレさんの唇を舌でチロチロと舐めたり、チュッチュッと啄むようなキスを繰り返していた。

すると次の瞬間、どこからか伸びてきた手に後ろ頭を押さえられ、ぐっとキスが深まった。


「んっ、んんっ!?」


「ん……」


突然だったので、驚いてしまい目を見開くと、目の前にシグレさんの端正な顔、長い睫毛が迫っていた。

おそらく、途中から気付いていたのだろう。

そう思うと恥ずかしくて、僕は顔を真っ赤に染め上げた。


「んっ、ぁ……シグレ、さん……っ」


「はぁ。まったく……主人が寝てる間にこんな事をして、いけないね、セイラ?」


「すっ、すみませ……!」


謝ろうとすると、シグレさんはヤレヤレとため息をついた。


「あーあ、これでセイラにも完全に風邪がうつったな。治ったら、お仕置きだからね」


「えっ……!?」


お仕置きという単語に、ついドキッとしてしまう。

不謹慎なのは分かっていても、胸の奥がキュンキュンしてしまって止まらない。

涙目で見つめると、再び頭を引き寄せられて唇が奪われた。


「んん……っ」


「セイラ……飲み物、持ってきてくれた?」


「……っはい、んむ、持ってき、んっ、ました……っ」


答える途中で唇を塞がれ、途切れ途切れになってしまう。

こんな事をされれば、身体からはすっかり力が抜け落ちてしまった。

立っているのも辛くなり、シグレさんのシャツをぎゅっと掴むと、腰に手が回されてベッドに引き込まれた。


「わっ!」


「掴まえた。その顔……わざとしてる?」


「えっ……!?」


ワザとだなんて、勿論していない。

けれど、僕の顔がシグレさんを惑わせているのかもと思うと、恥ずかしくなってくる。


(僕、今どんな顔してるんだろ……)


顔を真っ赤にして俯くと、ふっと耳に吐息がかかり、敏感になっていた身体がビクンと跳ね上がった。


「あっ、やぁ……」


堪らず身動ぎをすると、グッと腰元を引き寄せられ、艶めいた声が鼓膜をくすぐる。


「セイラにはこの後、ずっと一緒に居てもらうからね」


「ひぁっ……あ、あの……お仕置き、ですか?」


おずおずと聞くと、シグレさんはゆっくりと首を横に振った。

そしておもむろに口を開く。


「言っただろ?お仕置きは、ちゃんと風邪が治ってからだよ。今は……俺の癒しになって?」


「ええっ、そん……っんん!」


これは、お仕置きされているようなものではないだろうか。

そう思い、反論しようとするものの、すぐに唇を塞がれてしまった。

指を絡めてぎゅっと握られ、ベッドに押し倒されて、キスが深まる。


「ふ、ん……っは……」


「……はぁ、かわい。もう少し……」


「んんっ……」


角度を変えて、また唇を奪われる。

そして、今度はシャツの裾を捲り上げられ、するりと大きな手が滑り込んできた。

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