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第五十四話 君の前では・2
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・・・
「えーと、スポーツドリンクと、白湯は……このコップがいいかな」
キッチンにて、僕はシグレさんに出す飲み物と一緒に、先日スーパーで買っておいたゼリーもトレーに乗せた。
ゼリーは二種類で、一つはイチゴ味、もう一つはオレンジ味だ。
果汁100%だから、身体にも良さそうだ。
「スプーンは……」
引き出しを開け、フォークやナイフの中からスプーンを探す。
そして、銀色のスプーンをトレーに乗せてキッチンを出ようとすると、突如、滅多に鳴らない僕のスマホが音を立てた。
(え、誰だろう……あっ、ゴウエルさん!)
ゴウエルさんは、僕がここへ来る前に施設でお世話になっていたあの指導員だ。
僕は急いでテーブルにトレーを置くと、通話ボタンを押した。
「もしもし、ゴウエルさん?」
『お、セイラか?久しぶりだな。どうだ、その後は。小説家先生と上手くやってるか?』
ゴウエルさんの声は相変わらず元気そうで安心する。
僕は大きく頷きながら答えた。
「はい、すごく優しい雇い主様で、良くしてもらってます」
『ははっ、そうだろうなぁ。なにせ……おっと、すまん!他の電話が入った』
スマホ越しに施設の電話が鳴る音が聞こえてきて、懐かしさを感じる。
ゴウエルさんは慌てた様子で続けた。
『今日はちょっとばかり人手が足りなくてな。またかけ直すから、先生にもよろしく言っといてくれな』
「はい、分かりました。ゴウエルさんもお体に気を付けて」
『ああ、ありがとう。じゃ、またな』
……プツ、ツー、ツー……。
(切れちゃった……)
シグレさんと契約して施設を出てから、もう約二カ月。
きっと、僕の様子を気にしてかけてきてくれたのだろう。
(またこっちからもかけようかな)
もう少し話したかったという想いを残しつつ、僕はスマホを元の場所へ置いた。
さて、早くシグレさんの所へ行かなければ。
気持ちを切り替え、僕は再びトレーを持ってシグレさんの元へと急いだ。
・・・
――コンコン。
部屋のドアをノックしてから顔を覗かせると、シグレさんは静かな寝息を立てて眠ってしまっていた。
(寝ちゃったんだ……喉、乾いてるよね)
とりあえず、トレーをサイドテーブルの上に置き、僕はそっとシグレさんの髪に触れた。
「ん……セイラ……」
「えっ……!?」
「…………」
(ね、寝言……?)
一瞬、名前を呼ばれてドキッとしたけれど、どうやら寝言だったらしく、僕はドキドキと高鳴り始めてしまった胸にそっと手を当てた。
「はぁ……ビックリした」
暫し、僕はドキドキを抑えようとゆっくり呼吸をする。
それから改めてシグレさんの髪に触れてみる。
相変わらずサラサラとしたブラウンの髪に指先を通すと、愛おしさが込み上げてくる。
(なんか……シグレさん、ちょっと可愛いかも)
いつもは僕よりずっと大人で、王子様みたいにカッコよくて、優しく包み込んでくれるような理想のご主人様。
でも今は、無防備な寝顔に髪も少し乱れていて、なんだかいつもとは違った魅力を放っている。
(キス、したいかも……)
不謹慎だと分かりつつも、そんな想いを抱き、僕はそっと身をかがめた。
そしてゆっくりと、薄いピンクの唇に自分のそれを近付けていく。
「えーと、スポーツドリンクと、白湯は……このコップがいいかな」
キッチンにて、僕はシグレさんに出す飲み物と一緒に、先日スーパーで買っておいたゼリーもトレーに乗せた。
ゼリーは二種類で、一つはイチゴ味、もう一つはオレンジ味だ。
果汁100%だから、身体にも良さそうだ。
「スプーンは……」
引き出しを開け、フォークやナイフの中からスプーンを探す。
そして、銀色のスプーンをトレーに乗せてキッチンを出ようとすると、突如、滅多に鳴らない僕のスマホが音を立てた。
(え、誰だろう……あっ、ゴウエルさん!)
ゴウエルさんは、僕がここへ来る前に施設でお世話になっていたあの指導員だ。
僕は急いでテーブルにトレーを置くと、通話ボタンを押した。
「もしもし、ゴウエルさん?」
『お、セイラか?久しぶりだな。どうだ、その後は。小説家先生と上手くやってるか?』
ゴウエルさんの声は相変わらず元気そうで安心する。
僕は大きく頷きながら答えた。
「はい、すごく優しい雇い主様で、良くしてもらってます」
『ははっ、そうだろうなぁ。なにせ……おっと、すまん!他の電話が入った』
スマホ越しに施設の電話が鳴る音が聞こえてきて、懐かしさを感じる。
ゴウエルさんは慌てた様子で続けた。
『今日はちょっとばかり人手が足りなくてな。またかけ直すから、先生にもよろしく言っといてくれな』
「はい、分かりました。ゴウエルさんもお体に気を付けて」
『ああ、ありがとう。じゃ、またな』
……プツ、ツー、ツー……。
(切れちゃった……)
シグレさんと契約して施設を出てから、もう約二カ月。
きっと、僕の様子を気にしてかけてきてくれたのだろう。
(またこっちからもかけようかな)
もう少し話したかったという想いを残しつつ、僕はスマホを元の場所へ置いた。
さて、早くシグレさんの所へ行かなければ。
気持ちを切り替え、僕は再びトレーを持ってシグレさんの元へと急いだ。
・・・
――コンコン。
部屋のドアをノックしてから顔を覗かせると、シグレさんは静かな寝息を立てて眠ってしまっていた。
(寝ちゃったんだ……喉、乾いてるよね)
とりあえず、トレーをサイドテーブルの上に置き、僕はそっとシグレさんの髪に触れた。
「ん……セイラ……」
「えっ……!?」
「…………」
(ね、寝言……?)
一瞬、名前を呼ばれてドキッとしたけれど、どうやら寝言だったらしく、僕はドキドキと高鳴り始めてしまった胸にそっと手を当てた。
「はぁ……ビックリした」
暫し、僕はドキドキを抑えようとゆっくり呼吸をする。
それから改めてシグレさんの髪に触れてみる。
相変わらずサラサラとしたブラウンの髪に指先を通すと、愛おしさが込み上げてくる。
(なんか……シグレさん、ちょっと可愛いかも)
いつもは僕よりずっと大人で、王子様みたいにカッコよくて、優しく包み込んでくれるような理想のご主人様。
でも今は、無防備な寝顔に髪も少し乱れていて、なんだかいつもとは違った魅力を放っている。
(キス、したいかも……)
不謹慎だと分かりつつも、そんな想いを抱き、僕はそっと身をかがめた。
そしてゆっくりと、薄いピンクの唇に自分のそれを近付けていく。
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