53 / 98
第五十三話 君の前では・1
しおりを挟む
□■□
「シグレさん、もう少しでベッドです……っ」
「ん……セイラ、ごめん……ね」
「何言ってるんですかっ……使用人として、こんなの……当然ですっ……!」
どうにかこうにか、僕はシグレさんを抱えてベッドまで辿り着いた。
といっても、さすがに持ち上げる事は出来なかったので、半分床を引きずるようにして運んだのだけれど。
幸い、シグレさんも朦朧とではあるけれど意識があったので、ふらつきながらも自力で歩いてくれたから助かった。
やはり、自分よりも背が高く、筋肉もしっかりついている男性を運ぶには、それなりの労力が要ると分かった。
というか、シグレさんぐらいスマートな人なら軽く運べるぐらいに、僕もなりたいものだ。
「着きましたよ。座れますか?」
「ん、大丈……っ」
「あっ……!」
瞬間、倒れそうになったシグレさんを助けようと腕を掴んだ僕は、そのまま一緒にベッドへダイブしてしまった。
「……っすみませ……」
「セイラ……ありがと」
「ひゃ……っ」
シグレさんに覆いかぶさるように倒れた僕の身体はそのまま抱き締められ、長い指先で耳元を擽られる。
「んっ、や……シグレさん、ダメ……です……んっあ……!」
手から逃れようと身を捩れば、今度は熱い吐息が首筋を掠め、僕は堪らず声をあげる。
シグレさんは長い睫毛を伏せ、甘えるように僕の項に鼻先をつけてため息を漏らす。
今日は家から出ないので、寝る時用の柔らかいタイプのチョーカーを装着していた為、吐息がダイレクトに肌に伝わり、僕はビクンと肩を竦めた。
「はぁ……このタイミングで風邪ひくなんて、プロとしてだめだよなー……セイラ、癒してくれる?」
「え、ええ……っ!?」
「ふふ、冗談。セイラにうつったらいけないから、もう離れないとな……」
「……っは、はい!今、どきます……っ」
もう心臓はバクバクしているし、ちょっとだけエッチな展開を期待してしまったので、僕は顔を真っ赤に染め上げつつもベッドから降りた。
(はぁ、ドキドキしちゃった……)
乱れた服を整えていると、ベッドから手が伸びてきて、そっとシャツの裾を掴まれクイクイと引っ張られる。
「……?どうしました?」
「ごめん、少し喉が渇いたんだ。何か飲み物を持ってきて貰える?」
「あ……!はい、すぐに用意しますね!待ってて下さい」
「ありがとう、セイラ」
シグレさんは僅かに微笑み、僕のシャツの裾にそっとキスを落とした。
「……っ」
「ふふ、これなら風邪、うつらないね」
ちょっと冗談ぽく言うシグレさん。
確かにシャツの裾なら風邪はうつらないかもしれないけれど、これ以上ドキドキさせないでほしい。
僕は理性を呼び戻す為にも、なるべく平静を装って言った。
「も、もう……少しだけ待ってて下さい。白湯とスポーツドリンク、持ってきますから」
「ああ、いいね。待ってるよ」
そしてようやく、シャツの裾から手が離され、僕はキッチンへと急いだ。
「シグレさん、もう少しでベッドです……っ」
「ん……セイラ、ごめん……ね」
「何言ってるんですかっ……使用人として、こんなの……当然ですっ……!」
どうにかこうにか、僕はシグレさんを抱えてベッドまで辿り着いた。
といっても、さすがに持ち上げる事は出来なかったので、半分床を引きずるようにして運んだのだけれど。
幸い、シグレさんも朦朧とではあるけれど意識があったので、ふらつきながらも自力で歩いてくれたから助かった。
やはり、自分よりも背が高く、筋肉もしっかりついている男性を運ぶには、それなりの労力が要ると分かった。
というか、シグレさんぐらいスマートな人なら軽く運べるぐらいに、僕もなりたいものだ。
「着きましたよ。座れますか?」
「ん、大丈……っ」
「あっ……!」
瞬間、倒れそうになったシグレさんを助けようと腕を掴んだ僕は、そのまま一緒にベッドへダイブしてしまった。
「……っすみませ……」
「セイラ……ありがと」
「ひゃ……っ」
シグレさんに覆いかぶさるように倒れた僕の身体はそのまま抱き締められ、長い指先で耳元を擽られる。
「んっ、や……シグレさん、ダメ……です……んっあ……!」
手から逃れようと身を捩れば、今度は熱い吐息が首筋を掠め、僕は堪らず声をあげる。
シグレさんは長い睫毛を伏せ、甘えるように僕の項に鼻先をつけてため息を漏らす。
今日は家から出ないので、寝る時用の柔らかいタイプのチョーカーを装着していた為、吐息がダイレクトに肌に伝わり、僕はビクンと肩を竦めた。
「はぁ……このタイミングで風邪ひくなんて、プロとしてだめだよなー……セイラ、癒してくれる?」
「え、ええ……っ!?」
「ふふ、冗談。セイラにうつったらいけないから、もう離れないとな……」
「……っは、はい!今、どきます……っ」
もう心臓はバクバクしているし、ちょっとだけエッチな展開を期待してしまったので、僕は顔を真っ赤に染め上げつつもベッドから降りた。
(はぁ、ドキドキしちゃった……)
乱れた服を整えていると、ベッドから手が伸びてきて、そっとシャツの裾を掴まれクイクイと引っ張られる。
「……?どうしました?」
「ごめん、少し喉が渇いたんだ。何か飲み物を持ってきて貰える?」
「あ……!はい、すぐに用意しますね!待ってて下さい」
「ありがとう、セイラ」
シグレさんは僅かに微笑み、僕のシャツの裾にそっとキスを落とした。
「……っ」
「ふふ、これなら風邪、うつらないね」
ちょっと冗談ぽく言うシグレさん。
確かにシャツの裾なら風邪はうつらないかもしれないけれど、これ以上ドキドキさせないでほしい。
僕は理性を呼び戻す為にも、なるべく平静を装って言った。
「も、もう……少しだけ待ってて下さい。白湯とスポーツドリンク、持ってきますから」
「ああ、いいね。待ってるよ」
そしてようやく、シャツの裾から手が離され、僕はキッチンへと急いだ。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
スノードロップに触れられない
ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙*
題字&イラスト:niia 様
※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください
(拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!)
アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。
先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。
そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。
しかし、その考えはある日突然……一変した。
『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』
自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。
『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』
挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。
周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。
可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。
自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!!
※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!!
※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。

お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる