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第五十話
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□■□■
――時は過ぎ、三週間後。
シグレさんの原稿も完成間近に迫っていた。
今日はシグレさんが珍しく体調を崩してしまい、リモートで担当さんと打ち合わせをするという事で、僕はその間、いつも通り家事をこなすのと、シグレさんの体調が良くなるような食事の準備を進める事になった。
ちなみに、僕は発情期を無事に終え、また使用人としての任務をこなす日々を送っている。
(何がいいかな……おかゆと、スープと、飲み物は白湯がいいかも)
メニューを考えつつ、部屋の掃除を進める。
あれから……メモの謎はまだ残ったままだけれど、シグレさんと僕は相変わらずのラブラブ状態だ。
あのメモ用紙はどうなったかというと、翌日にはシンクの上から無くなっていたので、シグレさんが回収したか、捨ててしまったのだと思う。
シグレさんはその事に関しては何も言ってこないので、やはり気にする必要はないのだと思う事にしている。
と、リビングからバタバタと音が聞こえてきたので、僕はハッとして時計を見上げた。
(リモートでの打ち合わせ、三時からだよね。もうすぐだから準備してるんだ)
時間まであと15分ほどある。
僕は持っていた布巾をシンクに置き、急いでコーヒーの準備を始めた。
打ち合わせ中はコーヒーを飲みたいとシグレさんが言っていたので、いつものカップとソーサーを用意して湯を沸かす。
(お仕事、無事に終わりますように)
そう思いながら、丁寧にコーヒーを淹れ、トレーに乗せて持っていく頃には会議が始まる3分前になっていた。
「シグレさん、お待たせしました。ここに置きますね。あの、体調はいかがですか?」
「ああ、ありがとう、セイラ。大丈夫、今日はリモートにしてもらったし、風邪薬も飲んだし、原稿もあと少しだ……ッゴホ、頑張るよ」
少し咳き込みながら、シグレさんはふわりと儚げな笑みを浮かべた。
その姿は窓から差し込む陽の光に透けて美しいと同時に、今にも倒れそうで、僕は心配になって傍へ駆け寄った。
そして、シャツの裾をきゅっと掴んでキリリと見上げる。
「あの……っでも、無理はしないで下さい。今は薬で抑えてるだけなんですから……」
「ふふっ、分かってるよ。まったく……今はキスできないんだから、可愛い事するの禁止。……あ、今日もセイラの手料理、楽しみにしてるね」
「……っ」
手料理に期待され、僕は思わず頬を赤く染める。
というのも先程のこと、今日はシグレさんの体調に合わせたメニューを考えると申し出たところ、シグレさんはとても喜んでくれたのだ。
おかゆを作ろうかと言ったら、そういった体に優しいメニューは久しぶりだという事だった。
(がんばろう……!)
良い意味でプレッシャーを感じ、僕は密かに気合いを入れる。
と、そうこうしているうちに時刻は三時を過ぎ、パソコン画面に担当さんの姿が映し出された。
「おっと、繋いであったんだった」
「はい、では、僕はこれで……」
慌てて離れると、シグレさんは急いでパソコンの前の椅子に腰かけた。
僕は軽くお辞儀をして、キッチンへ行こうとした、その時。
改めてパソコンの画面に映る担当さんの姿が目に飛び込んできた。
(わ……綺麗な人。担当さん、女の人だったんだ)
――時は過ぎ、三週間後。
シグレさんの原稿も完成間近に迫っていた。
今日はシグレさんが珍しく体調を崩してしまい、リモートで担当さんと打ち合わせをするという事で、僕はその間、いつも通り家事をこなすのと、シグレさんの体調が良くなるような食事の準備を進める事になった。
ちなみに、僕は発情期を無事に終え、また使用人としての任務をこなす日々を送っている。
(何がいいかな……おかゆと、スープと、飲み物は白湯がいいかも)
メニューを考えつつ、部屋の掃除を進める。
あれから……メモの謎はまだ残ったままだけれど、シグレさんと僕は相変わらずのラブラブ状態だ。
あのメモ用紙はどうなったかというと、翌日にはシンクの上から無くなっていたので、シグレさんが回収したか、捨ててしまったのだと思う。
シグレさんはその事に関しては何も言ってこないので、やはり気にする必要はないのだと思う事にしている。
と、リビングからバタバタと音が聞こえてきたので、僕はハッとして時計を見上げた。
(リモートでの打ち合わせ、三時からだよね。もうすぐだから準備してるんだ)
時間まであと15分ほどある。
僕は持っていた布巾をシンクに置き、急いでコーヒーの準備を始めた。
打ち合わせ中はコーヒーを飲みたいとシグレさんが言っていたので、いつものカップとソーサーを用意して湯を沸かす。
(お仕事、無事に終わりますように)
そう思いながら、丁寧にコーヒーを淹れ、トレーに乗せて持っていく頃には会議が始まる3分前になっていた。
「シグレさん、お待たせしました。ここに置きますね。あの、体調はいかがですか?」
「ああ、ありがとう、セイラ。大丈夫、今日はリモートにしてもらったし、風邪薬も飲んだし、原稿もあと少しだ……ッゴホ、頑張るよ」
少し咳き込みながら、シグレさんはふわりと儚げな笑みを浮かべた。
その姿は窓から差し込む陽の光に透けて美しいと同時に、今にも倒れそうで、僕は心配になって傍へ駆け寄った。
そして、シャツの裾をきゅっと掴んでキリリと見上げる。
「あの……っでも、無理はしないで下さい。今は薬で抑えてるだけなんですから……」
「ふふっ、分かってるよ。まったく……今はキスできないんだから、可愛い事するの禁止。……あ、今日もセイラの手料理、楽しみにしてるね」
「……っ」
手料理に期待され、僕は思わず頬を赤く染める。
というのも先程のこと、今日はシグレさんの体調に合わせたメニューを考えると申し出たところ、シグレさんはとても喜んでくれたのだ。
おかゆを作ろうかと言ったら、そういった体に優しいメニューは久しぶりだという事だった。
(がんばろう……!)
良い意味でプレッシャーを感じ、僕は密かに気合いを入れる。
と、そうこうしているうちに時刻は三時を過ぎ、パソコン画面に担当さんの姿が映し出された。
「おっと、繋いであったんだった」
「はい、では、僕はこれで……」
慌てて離れると、シグレさんは急いでパソコンの前の椅子に腰かけた。
僕は軽くお辞儀をして、キッチンへ行こうとした、その時。
改めてパソコンの画面に映る担当さんの姿が目に飛び込んできた。
(わ……綺麗な人。担当さん、女の人だったんだ)
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