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第四十四話 気になる人・1
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ソファーで一人、僕はすっかり頭を抱えてしまった。
シグレさんと気持ちが通じ合って、それだけですっかり浮かれてしまっていて、この先の事はかなり漠然としか認識していなかった。
(いつも通り、使用人として接していれば、いいんだよね……?でも、それだとシグレさんを傷付けちゃったりしないかな……なんて、僕、かなり自惚れてる!?)
再び、なんとも図々しい思考が浮かんできて、僕は更に頭を抱えた。
(はぁ、僕にもっと経験があったら、こんなに戸惑わなかったのかも)
とはいえ、この年までまともに恋人が居なかった過去は変えられない。
しかし、だからといって別に全くモテなかったという訳でもない。
むしろ、男女問わず僕は ”可愛い” ともてはやされていた方なのだが、僕自身あまり恋愛に興味が無かったせいもあるのか、誰とも恋愛には発展しなかった。
(唯一、あの人だけは運命だと思うほどだったけど……)
そうなのだ。
僕の唯一の恋愛経験といえば、N高校の彼だ。
あの瞬間だけは、特別な感覚として僕の中に残り続けている。
しかも、その彼はシグレさんとよく似ていて……。
「……はぁ、気になる事あり過ぎるよぉ~」
このままでは仕事中もまた気が散ってしまいそうで、僕は両腕の間に顔を埋めて項垂れたのだった。
・・・
少しして、慌しく部屋のドアが開き、シグレさんがリビングへとやってきた。片手にはスマホと鞄を持っている。
「あ……っ外出ですか?」
慌ててソファーから立ち上がると、シグレさんは真面目な顔つきのまま答えた。
「ああ、そうなんだ。今、担当さんと話してたんだけど、急遽打ち合わせをすることになってね。セイラが発情期で大変な時にごめん。本当は傍に居たいんだけど……」
そう言って、シグレさんは僅かに眉を寄せる。
仕事が忙しいのに発情期を気にかけてくれるなんて、もうそれだけで僕は幸せ者だ。
そう思いつつ、僕は急いでいるであろうシグレさんに合わせて、やや早口に言う。
「僕は大丈夫です。お急ぎですよね、気にせず、行ってきてください」
「ん、ありがとう。帰りは少し遅くなるかもしれないけど、この近くのカフェだし、夕飯は適当に食べてくるよ。セイラはゆっくりしてて」
そう言って、シグレさんは僕のおでこにキスを落とした。
「……っはい、いってらっしゃいませ……っ」
「ふふ、行ってきます。帰りは連絡するよ。じゃあ」
「はい」
返事をしつつ、シグレさんを玄関まで見送る。
靴を履くのを見守っていると、シグレさんは何か思い出したようにこちらを向いた。
「そうだ、セイラ。俺がいない時は、戸締りは必ず確認するように。それと、何かあったらすぐに連絡。打ち合わせ中でも、セイラからなら出るようにするから」
「そ、そんな……っ大丈夫ですから、お仕事優先して下さい。戸締りは、ちゃんと確認しておきますから」
「ん、分かった。じゃあ、いってきます」
「い、いってらっしゃぃ……っ」
こんなやり取りをしていると、もうなんだか恋人というよりも夫婦のような感覚になり、僕は頬を赤く染めて俯いた。
シグレさんは、そんな僕を見てクスッと笑みを零すと、今度こそ出掛けて行った。
シグレさんと気持ちが通じ合って、それだけですっかり浮かれてしまっていて、この先の事はかなり漠然としか認識していなかった。
(いつも通り、使用人として接していれば、いいんだよね……?でも、それだとシグレさんを傷付けちゃったりしないかな……なんて、僕、かなり自惚れてる!?)
再び、なんとも図々しい思考が浮かんできて、僕は更に頭を抱えた。
(はぁ、僕にもっと経験があったら、こんなに戸惑わなかったのかも)
とはいえ、この年までまともに恋人が居なかった過去は変えられない。
しかし、だからといって別に全くモテなかったという訳でもない。
むしろ、男女問わず僕は ”可愛い” ともてはやされていた方なのだが、僕自身あまり恋愛に興味が無かったせいもあるのか、誰とも恋愛には発展しなかった。
(唯一、あの人だけは運命だと思うほどだったけど……)
そうなのだ。
僕の唯一の恋愛経験といえば、N高校の彼だ。
あの瞬間だけは、特別な感覚として僕の中に残り続けている。
しかも、その彼はシグレさんとよく似ていて……。
「……はぁ、気になる事あり過ぎるよぉ~」
このままでは仕事中もまた気が散ってしまいそうで、僕は両腕の間に顔を埋めて項垂れたのだった。
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少しして、慌しく部屋のドアが開き、シグレさんがリビングへとやってきた。片手にはスマホと鞄を持っている。
「あ……っ外出ですか?」
慌ててソファーから立ち上がると、シグレさんは真面目な顔つきのまま答えた。
「ああ、そうなんだ。今、担当さんと話してたんだけど、急遽打ち合わせをすることになってね。セイラが発情期で大変な時にごめん。本当は傍に居たいんだけど……」
そう言って、シグレさんは僅かに眉を寄せる。
仕事が忙しいのに発情期を気にかけてくれるなんて、もうそれだけで僕は幸せ者だ。
そう思いつつ、僕は急いでいるであろうシグレさんに合わせて、やや早口に言う。
「僕は大丈夫です。お急ぎですよね、気にせず、行ってきてください」
「ん、ありがとう。帰りは少し遅くなるかもしれないけど、この近くのカフェだし、夕飯は適当に食べてくるよ。セイラはゆっくりしてて」
そう言って、シグレさんは僕のおでこにキスを落とした。
「……っはい、いってらっしゃいませ……っ」
「ふふ、行ってきます。帰りは連絡するよ。じゃあ」
「はい」
返事をしつつ、シグレさんを玄関まで見送る。
靴を履くのを見守っていると、シグレさんは何か思い出したようにこちらを向いた。
「そうだ、セイラ。俺がいない時は、戸締りは必ず確認するように。それと、何かあったらすぐに連絡。打ち合わせ中でも、セイラからなら出るようにするから」
「そ、そんな……っ大丈夫ですから、お仕事優先して下さい。戸締りは、ちゃんと確認しておきますから」
「ん、分かった。じゃあ、いってきます」
「い、いってらっしゃぃ……っ」
こんなやり取りをしていると、もうなんだか恋人というよりも夫婦のような感覚になり、僕は頬を赤く染めて俯いた。
シグレさんは、そんな僕を見てクスッと笑みを零すと、今度こそ出掛けて行った。
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