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第四十三話 ご主人様はどう思ってるのかな
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▽▲▽
Ωの発情期は大体一週間ある為、その後も暫く、僕は極力シグレさんの邪魔にならないよう過ごした。
日中はこまめにシャワーを浴びて匂いを抑えたり、性処理をする時はトイレに籠る等、その辺りの事は施設に居た頃よりもハードになった。
といっても、基本的には抑制剤も飲んでいるし、ふつうに休んでいる分にはあまり問題はない。
シグレさんも、今は仕事に集中しているので、このまま僕の発情期が終われば、原稿も〆切に間に合うだろう。
(……よし、シャワーも浴びたし、シグレさんにコーヒー持っていこう)
キッチンにて、僕は淹れたてのコーヒーを慎重にトレーに乗せた。
発情期中は休んでいるようにシグレさんからは言われているけれど、使用人としては、少しぐらい何かしないと落ち着かない。
しかし、何かしたせいでシグレさんの気を散らしてしまっては本末転倒なので、飲み物を出す直前にはシャワーを浴びるなど、気を付けて動くようにしている。
(シグレさんも抑制剤は飲んでるから大丈夫って言ってたけど、発情期のΩの匂いは結構キツイから気を付けないと……)
コーヒーを運びつつ、考える。
そして、部屋のドアを開ける前にもう一度、自分の匂いをクンクンとよく嗅いで確認する。
(大丈夫だよね)
……コンコン。
「失礼します。シグレさん、コーヒー淹れたので、ここに置きますね」
「ああ、セイラ。ありがとう、助かるよ……体調は?」
「はい、大丈夫です。むしろ、気を遣わせてしまって申し訳ないです……あの、何かあったら遠慮なく言って下さ……」
「こら。……セイラ?」
「……っ」
ピシャリと言われ、息を呑んで肩を竦めると、シグレさんはヤレヤレとため息をついた。
「いつも言ってるけど、セイラは気を遣い過ぎ。確かに、使用人として契約しているけど、俺は……」
ピリリリリッ……。
今度は、シグレさんの言葉をスマホの着信音が遮った。
「おっと、ごめん、担当さんからだ」
「あ、はい……!じゃあ、僕は向こうに行きますね」
「ん、ごめんね。……はい、もしもし……」
(……”俺は”の続き、ちょっと聞きたかったな)
肝心なところで着信が来てしまった事が、残念でならない。
言葉の続きが知りたくて、僕はリビングのソファーに腰を下ろし、トレーをキュッと抱き締めて甘いため息をついた。
先日の、N高校の卒業生であるかどうかの話も気になるし、知りたい事はジリジリと増えていく。
(あの写真に映ってたの……やっぱりシグレさんだよね)
トレー胸に抱き締めたまま、妄想を広げていく。
(さっきの……使用人じゃないとするなら、シグレさんにとって僕は……)
――恋人――?
「……っ」
思い付いた単語に、思わずドキッとしてしまう。
そういえば、シグレさんと僕は今、正確にはどういう関係なのだろうか。
勿論、ベースとなるのは ”ご主人様と使用人” という、契約で結ばれた関係だ。
けれど、身体の関係を持ってしまったし、お互いの気持ちも確かめ合った。
それに、こうして同じ部屋で暮らしているのだから、恋人と言っても良いのではないだろうか。
(ああ、でも……っ)
ちゃっかり恋人宣言しそうになり、僕は頬を赤らめて頭を振った。
シグレさんが自分を愛してくれているのも分かってはいるけれど、あくまでも僕の立場は使用人だし、ご主人様に対して恋人のように振る舞うというのは、どうしても気が引けてしまう。
(シグレさんはそういうの、どう思ってるんだろ)
なにしろ、僕には恋愛経験というものがない。
だから、恋人同士がどうやって”付き合う”という状態になるのかとか、付き合ったらどういう風になるのかとか、正直分からないのだ。
(うぅ、気になる……)
Ωの発情期は大体一週間ある為、その後も暫く、僕は極力シグレさんの邪魔にならないよう過ごした。
日中はこまめにシャワーを浴びて匂いを抑えたり、性処理をする時はトイレに籠る等、その辺りの事は施設に居た頃よりもハードになった。
といっても、基本的には抑制剤も飲んでいるし、ふつうに休んでいる分にはあまり問題はない。
シグレさんも、今は仕事に集中しているので、このまま僕の発情期が終われば、原稿も〆切に間に合うだろう。
(……よし、シャワーも浴びたし、シグレさんにコーヒー持っていこう)
キッチンにて、僕は淹れたてのコーヒーを慎重にトレーに乗せた。
発情期中は休んでいるようにシグレさんからは言われているけれど、使用人としては、少しぐらい何かしないと落ち着かない。
しかし、何かしたせいでシグレさんの気を散らしてしまっては本末転倒なので、飲み物を出す直前にはシャワーを浴びるなど、気を付けて動くようにしている。
(シグレさんも抑制剤は飲んでるから大丈夫って言ってたけど、発情期のΩの匂いは結構キツイから気を付けないと……)
コーヒーを運びつつ、考える。
そして、部屋のドアを開ける前にもう一度、自分の匂いをクンクンとよく嗅いで確認する。
(大丈夫だよね)
……コンコン。
「失礼します。シグレさん、コーヒー淹れたので、ここに置きますね」
「ああ、セイラ。ありがとう、助かるよ……体調は?」
「はい、大丈夫です。むしろ、気を遣わせてしまって申し訳ないです……あの、何かあったら遠慮なく言って下さ……」
「こら。……セイラ?」
「……っ」
ピシャリと言われ、息を呑んで肩を竦めると、シグレさんはヤレヤレとため息をついた。
「いつも言ってるけど、セイラは気を遣い過ぎ。確かに、使用人として契約しているけど、俺は……」
ピリリリリッ……。
今度は、シグレさんの言葉をスマホの着信音が遮った。
「おっと、ごめん、担当さんからだ」
「あ、はい……!じゃあ、僕は向こうに行きますね」
「ん、ごめんね。……はい、もしもし……」
(……”俺は”の続き、ちょっと聞きたかったな)
肝心なところで着信が来てしまった事が、残念でならない。
言葉の続きが知りたくて、僕はリビングのソファーに腰を下ろし、トレーをキュッと抱き締めて甘いため息をついた。
先日の、N高校の卒業生であるかどうかの話も気になるし、知りたい事はジリジリと増えていく。
(あの写真に映ってたの……やっぱりシグレさんだよね)
トレー胸に抱き締めたまま、妄想を広げていく。
(さっきの……使用人じゃないとするなら、シグレさんにとって僕は……)
――恋人――?
「……っ」
思い付いた単語に、思わずドキッとしてしまう。
そういえば、シグレさんと僕は今、正確にはどういう関係なのだろうか。
勿論、ベースとなるのは ”ご主人様と使用人” という、契約で結ばれた関係だ。
けれど、身体の関係を持ってしまったし、お互いの気持ちも確かめ合った。
それに、こうして同じ部屋で暮らしているのだから、恋人と言っても良いのではないだろうか。
(ああ、でも……っ)
ちゃっかり恋人宣言しそうになり、僕は頬を赤らめて頭を振った。
シグレさんが自分を愛してくれているのも分かってはいるけれど、あくまでも僕の立場は使用人だし、ご主人様に対して恋人のように振る舞うというのは、どうしても気が引けてしまう。
(シグレさんはそういうの、どう思ってるんだろ)
なにしろ、僕には恋愛経験というものがない。
だから、恋人同士がどうやって”付き合う”という状態になるのかとか、付き合ったらどういう風になるのかとか、正直分からないのだ。
(うぅ、気になる……)
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