雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

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第四十一話

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□■□


(ん……)


ぼんやり目を覚まし、時計に目をやると、もう朝の五時を回っていた。


(もう朝……)


まだボーッとする意識の中、僕は隣に温もりを感じ、その胸に顔を埋める。


(シグレさん……今日は隣に居てくれたんだ)


今、シグレさんは忙しい身なので、僕が寝ている間にデスクへ行ってしまう可能性は十分にある。

けれど、シグレさんはまだ無防備な格好のまま、僕に腕枕をしてくれていた。


(……幸せ……)


逞しい胸板にすり寄り、僕はうっとりとα特有のフェロモンを堪能する。

発情期なのも忘れて深く息を吸い込むと、甘い誘惑の匂いが鼻の奥に届き、ズクンと身体が疼く。


(……っ、いけない、抑えないとまた辛くなる……っ抑制剤は……)


一気に息が上がり、僕は慌てて起き上がった。


そしてサッと辺りを見渡すと、サイドテーブルの上に二錠、抑制剤が置いてあるのが目に留まる。

そのすぐ横には、昨日シグレさんが用意してくれたオレンジジュースが、まだコップに半分以上残っていた。


(オレンジジュースで飲めば、いいよね)


本当は水の方が良いのだが、今は急を要するので、オレンジジュースで飲むことにする。


「は、は…………っ」


シグレさんを起こさないよう、徐々に荒くなる息を抑えつつ、抑制剤に手を伸ばす。

と、その時、掛布団がもそりと動き、腰元に腕が回された。


「……っ、シグレさん!?すみません、起こしちゃいましたか?」


「んー……おはよう、セイラ……」


(ひゃっ、擽ったい……っ)


サラサラの前髪が肌を撫で、僕は思わず肩を竦めた。

その拍子に、持っていた抑制剤が床におちてしまい、僕は慌てて拾おうと床に手を伸ばす。

もう少しで指先が届く……と思ったその時、ぐいっと身体がベットに引き上げられた。


「あっ……」


「セイラ、どうしたの?ベッドから落ちちゃうよ?」


「あ、あの、違うんです。抑制剤を飲もうとしたら、落としちゃって……」


落としたのは半分ぐらいシグレさんのせいだけれど、それは黙っておく。

しかし、シグレさんはちゃんと分かっていたようで、少し悪戯っぽく笑った。


「ふふ、ごめんね。俺のせいかな……よっ、と」


「あ……」


言いながら、シグレさんは長い腕を下へ伸ばし、床に落ちていた抑制剤を拾いあげてくれた。


「はい、どうぞ」


「あ……すみません」


申し訳なく思いつつ抑制剤を受け取ろうとすると、なぜか、シグレさんはひょいと抑制剤を取り上げるようにして僕の手から遠ざけ、ニヤリと笑みを浮かべた。


「そうだ、忘れてたよ。今度は俺がセイラに飲ませてあげるんだった」


「え……」


ニッコリと笑みを浮かべるシグレさん。

僕はドキリとして目を見開いた。
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