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第三十八話 あなたはあの時の人?
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「……」
振り返らずに歩みを止めたシグレさんのすぐ傍まで来ると、僕は呼吸をどうにか整えながら、意を決して口を開いた。
「あのっ……シグレさんは……もしかして、N高の卒業生、なんですか?」
「……」
暫しの沈黙が落ちる。
いつもならすぐに返事をしてくれるシグレさんが珍しく黙っているので、僕は緊張で肩を竦めながら待つ。
(……やっぱり、変なこと聞いちゃった、かも……?)
不安と緊張と、僅かな期待が入り交じり、どうにかなりそうだ。
おまけに、発情期も手伝って辛くなってきた。
僕は体調が悪化しないよう、胸に手を当てて返事を待つ。
と、少しして、シグレさんはチラリとこちらを振り向き、静かな声音で言った。
「……その話は、また今度にしよう」
「え……あの、シグレさ……」
無意識に手を伸ばすと、パシッと跳ねのけられ、胸がズキリと痛む。
「……っ」
「あ……いや、違う……はぁ、参ったな」
「シグレ、さん……?」
ズキズキ痛む胸元に手を当て、僅かに潤んでしまった目で見上げると、シグレさんはクルッとこちらを振り返った。
そして、僕の腕をぐっと掴んだかと思うと、強引に引き寄せて力強く抱き締める。
「……っ」
「冷たい態度をとってごめん。セイラ……これは俺の勝手なんだけど、聞いて」
「……?」
なんだろうと続きを待っていると、耳元でそっと囁かれる。
「頼むから……仕事が全部終わるまで、いい子で待ってて?」
「あ……っ」
言い終えた直後、耳の縁に微かに歯を立てられ、全身がゾクリと反応する。
更に、こめかみ辺りにチュッとキスを落とされれば、もう僕の身体は蕩けてしまいそうになった。
「シ、グレさ……っ」
「はぁ……その顔。ダメだ、もう行くよ。ベッド、一人で戻れる?」
「あ……の、はい、戻れます……っ」
どうにかそう返事をすると、最後にスリ、と、名残惜しそうに頬を撫でられた。
そして、シグレさんはパッと身を離し、今度こそドアを開けて出て行ってしまった。
(……っ)
……胸のドキドキが、収まらない。
それに、今ので完全に発情してしまった。
シグレさんも、それを察して身を離したのだろう。
今、この状態で二人の理性が飛んでしまったら、大変なことになる。
「はぁ……っ、は……ぁ……っ」
鼓動が速くなり、息が乱れ、甘い吐息が漏れる。
僕は今、シグレさんとなら何かあっても、なんの後悔もないかもしれない。
番になって、お腹に子供を宿したとしても。
その後に、こっ酷くフラれて番が解消をされたとしても、それで死ぬことになっても。
きっと後悔なんてしない。
(好き……っシグレさん、大好き……っ)
――触れたい――
ただその一心だった。
シグレさんは仕事に集中しなくてはならない事も、分かっている。
けどもう僕の中で、N高校で出会った彼の事、シグレさんが彼に似ている事、シグレさんを好きな気持ち、触れられた感触……全てが混ざってぐちゃぐちゃになってしまった。
朦朧とする意識の中、僕はガチャリとドアを開ける。
「っく、シグレさ……ん……っぐすっ」
胸が苦しくて、今にも壊れてしまいそうで、僕は子供みたいに泣きながらデスクへ近付いていく。
「セイラ……」
シグレさんはすぐに気が付き、椅子から立ち上がると、僕の身体を支えてくれた。
そして、切なげな表情を浮かべ、僕の身体を思い切り抱き締める。
その瞬間、僕の中で何かが弾け、大粒の涙が溢れてくる。
「……っう、ぇぐ……っシグレさん……っ好きです、大好き……っ」
「セイラ……俺もだよ。俺も、大好きだ」
「ひっく……っシグレさ……っ」
顔を見たくて、泣きながら見上げると、すぐに唇を奪われる。
「んっ……」
熱くて、濃厚なキス。
(しあわせ……)
もはや、仕事の事だの発情期の事だのと、考える余裕はなかった。
今はただ、ひたすら彼を感じていたい。
それだけなのだ。
「は、はぁっ……シグレ、さん……っ好き、すき」
「ああ、セイラ……もう約束を破るなんて、いけない子だ」
「ご、めんなさ……っでも、僕もう、我慢できな……っ」
「ん、分かってる、分かってるよ……」
想いの丈を伝えると、シグレさんは甘いため息をつき、僕の身体を横抱きにしてベッドへ向かった。
振り返らずに歩みを止めたシグレさんのすぐ傍まで来ると、僕は呼吸をどうにか整えながら、意を決して口を開いた。
「あのっ……シグレさんは……もしかして、N高の卒業生、なんですか?」
「……」
暫しの沈黙が落ちる。
いつもならすぐに返事をしてくれるシグレさんが珍しく黙っているので、僕は緊張で肩を竦めながら待つ。
(……やっぱり、変なこと聞いちゃった、かも……?)
不安と緊張と、僅かな期待が入り交じり、どうにかなりそうだ。
おまけに、発情期も手伝って辛くなってきた。
僕は体調が悪化しないよう、胸に手を当てて返事を待つ。
と、少しして、シグレさんはチラリとこちらを振り向き、静かな声音で言った。
「……その話は、また今度にしよう」
「え……あの、シグレさ……」
無意識に手を伸ばすと、パシッと跳ねのけられ、胸がズキリと痛む。
「……っ」
「あ……いや、違う……はぁ、参ったな」
「シグレ、さん……?」
ズキズキ痛む胸元に手を当て、僅かに潤んでしまった目で見上げると、シグレさんはクルッとこちらを振り返った。
そして、僕の腕をぐっと掴んだかと思うと、強引に引き寄せて力強く抱き締める。
「……っ」
「冷たい態度をとってごめん。セイラ……これは俺の勝手なんだけど、聞いて」
「……?」
なんだろうと続きを待っていると、耳元でそっと囁かれる。
「頼むから……仕事が全部終わるまで、いい子で待ってて?」
「あ……っ」
言い終えた直後、耳の縁に微かに歯を立てられ、全身がゾクリと反応する。
更に、こめかみ辺りにチュッとキスを落とされれば、もう僕の身体は蕩けてしまいそうになった。
「シ、グレさ……っ」
「はぁ……その顔。ダメだ、もう行くよ。ベッド、一人で戻れる?」
「あ……の、はい、戻れます……っ」
どうにかそう返事をすると、最後にスリ、と、名残惜しそうに頬を撫でられた。
そして、シグレさんはパッと身を離し、今度こそドアを開けて出て行ってしまった。
(……っ)
……胸のドキドキが、収まらない。
それに、今ので完全に発情してしまった。
シグレさんも、それを察して身を離したのだろう。
今、この状態で二人の理性が飛んでしまったら、大変なことになる。
「はぁ……っ、は……ぁ……っ」
鼓動が速くなり、息が乱れ、甘い吐息が漏れる。
僕は今、シグレさんとなら何かあっても、なんの後悔もないかもしれない。
番になって、お腹に子供を宿したとしても。
その後に、こっ酷くフラれて番が解消をされたとしても、それで死ぬことになっても。
きっと後悔なんてしない。
(好き……っシグレさん、大好き……っ)
――触れたい――
ただその一心だった。
シグレさんは仕事に集中しなくてはならない事も、分かっている。
けどもう僕の中で、N高校で出会った彼の事、シグレさんが彼に似ている事、シグレさんを好きな気持ち、触れられた感触……全てが混ざってぐちゃぐちゃになってしまった。
朦朧とする意識の中、僕はガチャリとドアを開ける。
「っく、シグレさ……ん……っぐすっ」
胸が苦しくて、今にも壊れてしまいそうで、僕は子供みたいに泣きながらデスクへ近付いていく。
「セイラ……」
シグレさんはすぐに気が付き、椅子から立ち上がると、僕の身体を支えてくれた。
そして、切なげな表情を浮かべ、僕の身体を思い切り抱き締める。
その瞬間、僕の中で何かが弾け、大粒の涙が溢れてくる。
「……っう、ぇぐ……っシグレさん……っ好きです、大好き……っ」
「セイラ……俺もだよ。俺も、大好きだ」
「ひっく……っシグレさ……っ」
顔を見たくて、泣きながら見上げると、すぐに唇を奪われる。
「んっ……」
熱くて、濃厚なキス。
(しあわせ……)
もはや、仕事の事だの発情期の事だのと、考える余裕はなかった。
今はただ、ひたすら彼を感じていたい。
それだけなのだ。
「は、はぁっ……シグレ、さん……っ好き、すき」
「ああ、セイラ……もう約束を破るなんて、いけない子だ」
「ご、めんなさ……っでも、僕もう、我慢できな……っ」
「ん、分かってる、分かってるよ……」
想いの丈を伝えると、シグレさんは甘いため息をつき、僕の身体を横抱きにしてベッドへ向かった。
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