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第十二話 僕の心には
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そしてそれを口にそっと含むと、じっと待っているシグレさんの頬に手を添える。
遠慮がちに顔を近付けると、すぐに唇を奪われた。
「んんっ……ぁ」
「ん……」
互いの息が漏れ、恥ずかしさが込み上げてくる。
僕は必死に錠剤をシグレさんの口へ移すと、そっと唇を離して俯いた。
すると、顎を軽く掴まれ、くいっと上向かされたかと思うと、シグレさんは親指で僕の唇を愛おしそうに拭い、ふわりと微笑んだ。
「ありがとう、セイラ」
「……っいえ、別に……!」
ゆるく首を振ると、おでこにチュッとキスを落とされた。
見上げると、シグレさんはやれやれといった様子で苦笑を浮かべている。
「まったく、俺としたことが……ごめんね、初日からこんなんじゃ、また不安にさせてしまうな」
「あ……い、いえ、大丈夫です……!」
「本当?」
「……」
僕は小さく頷いてみせた。
本当は不安もあるけれど、それを伝えたらシグレさんを傷付けてしまうかもしれない。
何度も言うけれど、僕は決してシグレさんを嫌いだとか、疑っている訳ではない。
というか、どちらかといえば惹かれていると思う。
ただ、まだ知らな過ぎるし、僕の心の中には……あのN高校で出会った彼が居る。
けど、いつまでも彼に執着していても仕方がない事も分かっている。
(前に、進まなきゃダメだよね……)
そう思い、僕は胸に手を当てた。
今はこうして、シグレさんが目の前にいて、僕に好意を寄せてくれている。
勿論、僕は使用人としてちゃんと任務を全うしなくちゃならないけど、こんなに素敵な人……僕だって、知っていきたいと思う気持ちはある。
(……うん)
心の中で気持ちを確認するように頷くと、少し気持ちが落ち着いた。
するとふいに、頭上から小さな笑い声が降ってきた。
「っはは。なんかさ、セイラってほんと、分かりやすいなぁ」
「え……っ!?な、なにが、ですか?」
「んー……色々と、ね」
そう言うと、シグレさんはベッドから降りてぐっと伸びをした。
「さて、お茶の続きをしようか。明日からお願いする仕事についても一通り説明したいし……おいで?」
「え……」
両手を広げて微笑むシグレさんにどう反応したら良いか分からずにいると、ぐいっと腕を引かれて抱き上げられた。
「わっ……!?」
「お礼に、お運びしますよ、姫」
「え、ええ……!?」
今度は突然のお姫様抱っこで、僕はあわあわと慌てふためき足をバタつかせる。
けれど、シグレさんの力強い腕はびくともせず、僕をしっかりと抱きかかえたまま進んでいく。
(うぅ……)
結局、僕はお姫様抱っこのまま、先ほどいたリビングのソファーまで連れていかれたのだった。
遠慮がちに顔を近付けると、すぐに唇を奪われた。
「んんっ……ぁ」
「ん……」
互いの息が漏れ、恥ずかしさが込み上げてくる。
僕は必死に錠剤をシグレさんの口へ移すと、そっと唇を離して俯いた。
すると、顎を軽く掴まれ、くいっと上向かされたかと思うと、シグレさんは親指で僕の唇を愛おしそうに拭い、ふわりと微笑んだ。
「ありがとう、セイラ」
「……っいえ、別に……!」
ゆるく首を振ると、おでこにチュッとキスを落とされた。
見上げると、シグレさんはやれやれといった様子で苦笑を浮かべている。
「まったく、俺としたことが……ごめんね、初日からこんなんじゃ、また不安にさせてしまうな」
「あ……い、いえ、大丈夫です……!」
「本当?」
「……」
僕は小さく頷いてみせた。
本当は不安もあるけれど、それを伝えたらシグレさんを傷付けてしまうかもしれない。
何度も言うけれど、僕は決してシグレさんを嫌いだとか、疑っている訳ではない。
というか、どちらかといえば惹かれていると思う。
ただ、まだ知らな過ぎるし、僕の心の中には……あのN高校で出会った彼が居る。
けど、いつまでも彼に執着していても仕方がない事も分かっている。
(前に、進まなきゃダメだよね……)
そう思い、僕は胸に手を当てた。
今はこうして、シグレさんが目の前にいて、僕に好意を寄せてくれている。
勿論、僕は使用人としてちゃんと任務を全うしなくちゃならないけど、こんなに素敵な人……僕だって、知っていきたいと思う気持ちはある。
(……うん)
心の中で気持ちを確認するように頷くと、少し気持ちが落ち着いた。
するとふいに、頭上から小さな笑い声が降ってきた。
「っはは。なんかさ、セイラってほんと、分かりやすいなぁ」
「え……っ!?な、なにが、ですか?」
「んー……色々と、ね」
そう言うと、シグレさんはベッドから降りてぐっと伸びをした。
「さて、お茶の続きをしようか。明日からお願いする仕事についても一通り説明したいし……おいで?」
「え……」
両手を広げて微笑むシグレさんにどう反応したら良いか分からずにいると、ぐいっと腕を引かれて抱き上げられた。
「わっ……!?」
「お礼に、お運びしますよ、姫」
「え、ええ……!?」
今度は突然のお姫様抱っこで、僕はあわあわと慌てふためき足をバタつかせる。
けれど、シグレさんの力強い腕はびくともせず、僕をしっかりと抱きかかえたまま進んでいく。
(うぅ……)
結局、僕はお姫様抱っこのまま、先ほどいたリビングのソファーまで連れていかれたのだった。
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