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第二十一話 昨晩のこと……
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◆◇◆
――翌日。
今日はまた、シグレさんから新たに家事周りの事を伝授してもらう事になった。
「じゃあ次は洗濯機の使い方。うちのは全自動だから、ここに洗濯洗剤、こっちに柔軟剤を入れて、ここのボタンでコースを決める」
「わかりました」
頷きながら、僕の脳裏には昨晩の事がチラついて仕方がない。
というのもあの後――。
寝落ちしていた僕の元に戻って来たシグレさんは、乱れたシーツと僕の手を見て頬を緩めた。
「セイラ、自分でしちゃったのか。やっぱり、エッチな子だね」
言いながら、シグレさんは指先で僕の頬をスリッと撫でた。
その指の感触で、僕は薄らと目を開ける。
「ん……あ……シグレさん……?」
「ん、おはよ。ふふ、気持ちよさそうに寝て……俺も、少し横になるよ」
「はぃ……あ……!」
シグレさんは片手に持っていたカップをサイドテーブルに置くと、ベッドに手をついた。
その瞬間、僕は完全に目を覚ます。
(……そうだ、僕……!)
慌てて見れば、シグレさんの手元には、僕が濡らしてしまったシーツが……。
「あ、あああああの……!す、すみませ……っ」
「んん?何を焦ってるの?ああ、もしかして……コ・レ?」
わざとらしく言うと、シグレさんは指先でスーッとシーツの濡れた部分をなぞった。
「……っ」
恥ずかしさで絶句する僕を、シグレさんはにこにこ笑顔で眺めている。
その視線に耐えられず、僕は掛布団を引き寄せて頭からかぶった。
「す、すみません……っ、あの、シグレさんに抱き締められてたら、僕……我慢できなくなって……」
「……」
「綺麗なベッドを汚してしまって、申し訳ありません……あの、明日ちゃんと洗濯……」
「はぁ……可愛すぎ」
「へ……?わっ!」
話の途中で掛布団ごと抱き締められ、僕は目を見開いた。
掛布団越しに温かな体温が伝わって来て、胸の奥がきゅんと音を立てる。
暫くして、静かな声音が耳に響いてきた。
「ねぇ、セイラ。日が昇るまで、腕枕してあげるよ」
「えっ……」
「遠慮はなし、ね?」
「……はい」
コクリと頷いてみせると、シグレさんは僕から掛布団をゆっくりと剥ぎ取った。
それから二人でゴロンと横になり、目が覚めたらシーツを洗濯する約束をして、短い眠りについたのだった。
……そして、現在。
「取り出したら、ベランダか浴室に干しておいてくれればいいよ」
「わかりました」
僕は忘れないようメモを取りながら、昨晩の記憶を一旦どこかへ追いやる。
今は仕事に集中しなければ。
キリリと表情を引き締めていると、シグレさんは自分の顎に手を当て、考える素振りをする。
「えーと……じゃあ最後に、キッチン周りね。食事の準備は俺も手伝える時はやるけど、基本的にはこれからもセイラに任せる。それと、冷蔵庫の中の物は、いつでも自由に使っていいから」
「わかりました。えっと、買い物はどうしますか?」
「ああ、買い物はなるべく一緒に行こう。近所ならセイラ一人でも大丈夫だろうけど、ここは都会だし、Ωが一人で歩くにはちょっと危険かな」
それを聞いて、てっきり買い物も任されると思っていた僕はシグレさんを見上げて言った。
「でも、それじゃあお仕事の邪魔をしてしまいます。日中に行けば大丈夫ですし、僕にお任せ下さい」
何しろ、シグレさんには〆切りというものがあるのだ。だから、少しでも時間を奪いたくない、というのが僕の意思なのだが……シグレさんは静かに首を横に振った。
「いいや、一緒に行こう。セイラにもしもの事があったら……それこそ、原稿どころじゃなくなるからね」
そう話すシグレさんの表情は真剣そのもので、改めて大切にされている事を実感して、くすぐったい気持ちになる。
(そんな風に心配してくれるなんて……なんか、すごく嬉しいかも)
僕は僅かに頬を染めて俯いた。
――翌日。
今日はまた、シグレさんから新たに家事周りの事を伝授してもらう事になった。
「じゃあ次は洗濯機の使い方。うちのは全自動だから、ここに洗濯洗剤、こっちに柔軟剤を入れて、ここのボタンでコースを決める」
「わかりました」
頷きながら、僕の脳裏には昨晩の事がチラついて仕方がない。
というのもあの後――。
寝落ちしていた僕の元に戻って来たシグレさんは、乱れたシーツと僕の手を見て頬を緩めた。
「セイラ、自分でしちゃったのか。やっぱり、エッチな子だね」
言いながら、シグレさんは指先で僕の頬をスリッと撫でた。
その指の感触で、僕は薄らと目を開ける。
「ん……あ……シグレさん……?」
「ん、おはよ。ふふ、気持ちよさそうに寝て……俺も、少し横になるよ」
「はぃ……あ……!」
シグレさんは片手に持っていたカップをサイドテーブルに置くと、ベッドに手をついた。
その瞬間、僕は完全に目を覚ます。
(……そうだ、僕……!)
慌てて見れば、シグレさんの手元には、僕が濡らしてしまったシーツが……。
「あ、あああああの……!す、すみませ……っ」
「んん?何を焦ってるの?ああ、もしかして……コ・レ?」
わざとらしく言うと、シグレさんは指先でスーッとシーツの濡れた部分をなぞった。
「……っ」
恥ずかしさで絶句する僕を、シグレさんはにこにこ笑顔で眺めている。
その視線に耐えられず、僕は掛布団を引き寄せて頭からかぶった。
「す、すみません……っ、あの、シグレさんに抱き締められてたら、僕……我慢できなくなって……」
「……」
「綺麗なベッドを汚してしまって、申し訳ありません……あの、明日ちゃんと洗濯……」
「はぁ……可愛すぎ」
「へ……?わっ!」
話の途中で掛布団ごと抱き締められ、僕は目を見開いた。
掛布団越しに温かな体温が伝わって来て、胸の奥がきゅんと音を立てる。
暫くして、静かな声音が耳に響いてきた。
「ねぇ、セイラ。日が昇るまで、腕枕してあげるよ」
「えっ……」
「遠慮はなし、ね?」
「……はい」
コクリと頷いてみせると、シグレさんは僕から掛布団をゆっくりと剥ぎ取った。
それから二人でゴロンと横になり、目が覚めたらシーツを洗濯する約束をして、短い眠りについたのだった。
……そして、現在。
「取り出したら、ベランダか浴室に干しておいてくれればいいよ」
「わかりました」
僕は忘れないようメモを取りながら、昨晩の記憶を一旦どこかへ追いやる。
今は仕事に集中しなければ。
キリリと表情を引き締めていると、シグレさんは自分の顎に手を当て、考える素振りをする。
「えーと……じゃあ最後に、キッチン周りね。食事の準備は俺も手伝える時はやるけど、基本的にはこれからもセイラに任せる。それと、冷蔵庫の中の物は、いつでも自由に使っていいから」
「わかりました。えっと、買い物はどうしますか?」
「ああ、買い物はなるべく一緒に行こう。近所ならセイラ一人でも大丈夫だろうけど、ここは都会だし、Ωが一人で歩くにはちょっと危険かな」
それを聞いて、てっきり買い物も任されると思っていた僕はシグレさんを見上げて言った。
「でも、それじゃあお仕事の邪魔をしてしまいます。日中に行けば大丈夫ですし、僕にお任せ下さい」
何しろ、シグレさんには〆切りというものがあるのだ。だから、少しでも時間を奪いたくない、というのが僕の意思なのだが……シグレさんは静かに首を横に振った。
「いいや、一緒に行こう。セイラにもしもの事があったら……それこそ、原稿どころじゃなくなるからね」
そう話すシグレさんの表情は真剣そのもので、改めて大切にされている事を実感して、くすぐったい気持ちになる。
(そんな風に心配してくれるなんて……なんか、すごく嬉しいかも)
僕は僅かに頬を染めて俯いた。
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