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第十八話
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・・・
「えっと……」
シャワーで全身を流し、髪も洗ってサッパリした僕は、脱衣所で身体を拭き、以前シグレさんから教えてもらったルームウェアを探していた。
「……あ、これがいいかも」
言われた通り、棚の中には何セットかルームウェアがあった。
どれも綺麗にたたまれており、広げるのが申し訳なくなってしまう。
僕はそっと白黒のルームウェアのセットを取り出し、静かに棚の扉を閉めながら思い出した。
そう、それは夕飯の後、シグレさんと話していた時の事。
僕は持参した部屋着があるからと申し出たのだが、布は擦り切れているし、穴が空いていたりと、もう変え時な事は明らかだった。
なので、シグレさんはそれを見兼ね、自分のルームウェアを貸し出すと快く言ってくれたのだ。
と、そういう訳で、僕は有り難く思いながら、白い長袖Tシャツの袖に手を通していく。
(……わ、大きい)
サイズは当然、シグレさんに合わせたものなので、僕には少し大きかった。
丈が長く、膝の少し上ぐらいまで長さがある。
続いて、セットになっていた黒いパンツを広げ、足を通す。
これも僕には少し大き目で、履いてみると、足の甲が裾で少し隠れてしまった。
(ダボダボ……でも、柔らかくて着心地がいいな。それに……)
僕は白Tシャツの長い袖を、そっと鼻先に近付けて、くん……と匂いを嗅いでみる。
(シグレさんの匂いがする……)
微かにではあるけれど、僕には分かった。
柔軟剤の香りと共に感じる、微かな彼の甘い匂い。
「……」
……とても安心する。
これはシグレさんの匂いであると共に、α特有のあの匂いでもある。
だから、Ωである僕は、ほとんど本能的にこの匂いが好きなのだ。
しかも、ただ好きというよりは、執着に近いものを感じる。
(ちょっと……マズいかも)
危うさを感じ、僕は慌てて袖を離した。
そして、自分が変な気を起こさぬうちに脱衣所を出ると、シグレさんのいる部屋へと向かった。
……カチャリ。
なるべく静かにドアを開けたつもりだったけれど、シグレさんはすぐに気付いてこちらを振り向いた。
「セイラ、お風呂はどう……」
「あ、あの、ありがとうございました。すごくサッパリしまして、ルームウェアも……」
言いかけて、僕はシグレさんの視線が停止していることに気付く。
なんだろうと首を傾げると、シグレさんはハッとしたように口を開いた。
「……っああ、ごめんごめん。そうか、サッパリしたなら良かった。その……それ、似合うね」
シグレさんはチラリと僕の全身を眺めるように視線を動かすと、口元に手を添え、僅かに頬を染めた。
僕は”似合う”と言われたのが嬉しくて、思わず笑みを零した。
「えっ、ほ、ほんとですか?……ふふ、シグレさんのルームウェア、やっぱり僕には少し大きいです。でも凄く着心地が良くて……ありがとうございます」
ほんのり頬を赤く染めつつお礼を言うと、シグレさんは後ろ頭に手をやり、照れくさそうに僕に背を向ける。
「いや……うん」
それからコホンと咳払いをすると、僅かにこちらを振り向いて言った。
「そろそろ……原稿が一段落するから、少しだけベッドで休もうかな」
言いながら、シグレさんは椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。
「あ……はい!あの、僕は外した方が良いですよね。リビングに居ますから……」
休むなら、僕が居たら邪魔になるだろう。
そう思い部屋を出ようとすると、優しく手首を捕まれ、ドキリとする。
振り返ると、熱を帯びた視線に捉えられた。
「いや、外さなくていい。セイラも一緒に、休もう?」
甘い誘いと共に、手の甲にチュッとキスを落とされる。
「……っ」
……こんなの、断れるΩがいるだろうか。
「……はぃ……」
僕は緊張で僅かに身を震わせながら、小さく頷いたのだった。
◆◇◆
その後、僕達はお互い気持ちを落ち着ける為にも、歯磨きやトイレ等の寝る準備をゆっくりと行った。
(ふぅ……)
先に終えた僕は、部屋へ向かう。
ドアを開けると、室内はオレンジ色の落ち着いた光を放つ間接照明のみが付けられており、なんだかムード満点になっていた。
(……う、わぁ……)
今、シグレさんは別室で着替えており、部屋には僕一人なのだけれど、どうにも落ち着かない。
この間接照明の明かりも、気持ちが落ち着くというよりは、雰囲気があり過ぎて意識してしまう。
僕は一人、部屋の真ん中に突っ立ったままシグレさんを待った。
暫くすると、ふいにドアがガチャリと開き、部屋着に身を包んだシグレさんがリラックスした様子で入ってきた。
「ああ、セイラ。ごめんね、待たせちゃったかな」
「あっ、いえ……!」
振り向くと、シグレさんがこちらへ迫って来たので、僕はドキリとして思わず背を向けた。
「……っ」
「セイラ?」
(な、なんか、シグレさん、いつも以上にカッコいい……)
シグレさんの部屋着はフード付きの黒いルームウェアなのだけれど、いつもの襟付きシャツを着ているイメージとは違って、これはまたラフでカッコ良いい。それに、ちょっと可愛い。
こんな魅力的な人(しかもα)と同じベッドで寝るのかと思うと、心臓がいくつあっても足りなさそうだ。
「ねぇ、セイラ……どうしたの?」
シグレさんの色っぽい声が耳元に響き、ふいに後ろから抱き締められる。
「シ……っグレ、さ……!」
「そんなに緊張しないで。大丈夫、ベッドに入ろう。明日も忙しいからね」
「えっと……」
シャワーで全身を流し、髪も洗ってサッパリした僕は、脱衣所で身体を拭き、以前シグレさんから教えてもらったルームウェアを探していた。
「……あ、これがいいかも」
言われた通り、棚の中には何セットかルームウェアがあった。
どれも綺麗にたたまれており、広げるのが申し訳なくなってしまう。
僕はそっと白黒のルームウェアのセットを取り出し、静かに棚の扉を閉めながら思い出した。
そう、それは夕飯の後、シグレさんと話していた時の事。
僕は持参した部屋着があるからと申し出たのだが、布は擦り切れているし、穴が空いていたりと、もう変え時な事は明らかだった。
なので、シグレさんはそれを見兼ね、自分のルームウェアを貸し出すと快く言ってくれたのだ。
と、そういう訳で、僕は有り難く思いながら、白い長袖Tシャツの袖に手を通していく。
(……わ、大きい)
サイズは当然、シグレさんに合わせたものなので、僕には少し大きかった。
丈が長く、膝の少し上ぐらいまで長さがある。
続いて、セットになっていた黒いパンツを広げ、足を通す。
これも僕には少し大き目で、履いてみると、足の甲が裾で少し隠れてしまった。
(ダボダボ……でも、柔らかくて着心地がいいな。それに……)
僕は白Tシャツの長い袖を、そっと鼻先に近付けて、くん……と匂いを嗅いでみる。
(シグレさんの匂いがする……)
微かにではあるけれど、僕には分かった。
柔軟剤の香りと共に感じる、微かな彼の甘い匂い。
「……」
……とても安心する。
これはシグレさんの匂いであると共に、α特有のあの匂いでもある。
だから、Ωである僕は、ほとんど本能的にこの匂いが好きなのだ。
しかも、ただ好きというよりは、執着に近いものを感じる。
(ちょっと……マズいかも)
危うさを感じ、僕は慌てて袖を離した。
そして、自分が変な気を起こさぬうちに脱衣所を出ると、シグレさんのいる部屋へと向かった。
……カチャリ。
なるべく静かにドアを開けたつもりだったけれど、シグレさんはすぐに気付いてこちらを振り向いた。
「セイラ、お風呂はどう……」
「あ、あの、ありがとうございました。すごくサッパリしまして、ルームウェアも……」
言いかけて、僕はシグレさんの視線が停止していることに気付く。
なんだろうと首を傾げると、シグレさんはハッとしたように口を開いた。
「……っああ、ごめんごめん。そうか、サッパリしたなら良かった。その……それ、似合うね」
シグレさんはチラリと僕の全身を眺めるように視線を動かすと、口元に手を添え、僅かに頬を染めた。
僕は”似合う”と言われたのが嬉しくて、思わず笑みを零した。
「えっ、ほ、ほんとですか?……ふふ、シグレさんのルームウェア、やっぱり僕には少し大きいです。でも凄く着心地が良くて……ありがとうございます」
ほんのり頬を赤く染めつつお礼を言うと、シグレさんは後ろ頭に手をやり、照れくさそうに僕に背を向ける。
「いや……うん」
それからコホンと咳払いをすると、僅かにこちらを振り向いて言った。
「そろそろ……原稿が一段落するから、少しだけベッドで休もうかな」
言いながら、シグレさんは椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。
「あ……はい!あの、僕は外した方が良いですよね。リビングに居ますから……」
休むなら、僕が居たら邪魔になるだろう。
そう思い部屋を出ようとすると、優しく手首を捕まれ、ドキリとする。
振り返ると、熱を帯びた視線に捉えられた。
「いや、外さなくていい。セイラも一緒に、休もう?」
甘い誘いと共に、手の甲にチュッとキスを落とされる。
「……っ」
……こんなの、断れるΩがいるだろうか。
「……はぃ……」
僕は緊張で僅かに身を震わせながら、小さく頷いたのだった。
◆◇◆
その後、僕達はお互い気持ちを落ち着ける為にも、歯磨きやトイレ等の寝る準備をゆっくりと行った。
(ふぅ……)
先に終えた僕は、部屋へ向かう。
ドアを開けると、室内はオレンジ色の落ち着いた光を放つ間接照明のみが付けられており、なんだかムード満点になっていた。
(……う、わぁ……)
今、シグレさんは別室で着替えており、部屋には僕一人なのだけれど、どうにも落ち着かない。
この間接照明の明かりも、気持ちが落ち着くというよりは、雰囲気があり過ぎて意識してしまう。
僕は一人、部屋の真ん中に突っ立ったままシグレさんを待った。
暫くすると、ふいにドアがガチャリと開き、部屋着に身を包んだシグレさんがリラックスした様子で入ってきた。
「ああ、セイラ。ごめんね、待たせちゃったかな」
「あっ、いえ……!」
振り向くと、シグレさんがこちらへ迫って来たので、僕はドキリとして思わず背を向けた。
「……っ」
「セイラ?」
(な、なんか、シグレさん、いつも以上にカッコいい……)
シグレさんの部屋着はフード付きの黒いルームウェアなのだけれど、いつもの襟付きシャツを着ているイメージとは違って、これはまたラフでカッコ良いい。それに、ちょっと可愛い。
こんな魅力的な人(しかもα)と同じベッドで寝るのかと思うと、心臓がいくつあっても足りなさそうだ。
「ねぇ、セイラ……どうしたの?」
シグレさんの色っぽい声が耳元に響き、ふいに後ろから抱き締められる。
「シ……っグレ、さ……!」
「そんなに緊張しないで。大丈夫、ベッドに入ろう。明日も忙しいからね」
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