雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

文字の大きさ
上 下
8 / 98

第八話 夢

しおりを挟む
◇◆◇


……夢を見ていた。


――僕は今、施設にいる。


(あ、あの人は……)



そこへ、薄いブラウンの髪を靡かせた男性が一人、こちらへ向かってやってくる。



「セイラ、迎えに来たよ」



「シグレさん……」



そうだ、この人はシグレさん。

なんだ、知ってる人じゃないか……ぼうっと彼を見つめたまま、僕はそう思った。


低すぎない心地よいテノールが優しく耳に響く。


「こんにちは、シグレ・ロゼです。セイラ、実は……君に……」


「え……?」


手招きされて、僕は首を傾げる。

どうしてもシグレさんの声が、途中からちゃんと聞き取れない。


「セイラ……」


「え……ちょっ……」


シグレさんは僕の方へゆっくりと近付いてきて、目の前まで来ると、僕の頬に優しく手を添えた。

そして綺麗な顔が近付き、唇が触れそうになる。


(……っ!)


ドキドキが激しくなり、思わずぎゅっと目を瞑る。

少しして、軽く唇を奪われたかと思うと、そのまま首筋へと下りていく。


「あっ……だめ……!」


項を指先でなぞられ、全身がビクンッと震える。

このままでは、僕はシグレさんの番にされてしまう……!


「待って……まだ、心の準備が……っ」


僕は必死に彼の胸を押し返す。

けれど、全力で拒絶しているわけでもない。


(なんだろう……このまま許してしまっても、いいような……)


そう思うけれど、番になるにはまだ早いのは間違いない。

まだ出会ったばかりでよく知らない相手だし、番になる決断はΩにとって、とても重要な事なのだ。

けれど、シグレさんは僕の項に歯を立てた。


(もう、ダメだ――!)


その瞬間、目の前が真っ白になった。


◆◇◆


「……っ!」


ソファーの上で、僕はハッと目を覚ました。



(あ……夢……?)


僅かに首筋に汗が伝う感覚があり、軽く手で拭うと、思ったよりもびっしょりと汗をかいていた。

しかも、腰元がズクズクと疼くので見てみれば、中心はすっかりズボンを押し上げてしまっていた。


(ああ、あんな夢見たから……っていうか、ここシグレさんの家なのに……っ……え?)


現状を思い出し、慌てて身を起こそうとすると、肩にずっしりとした感覚があって動けない。一体何が……


(シ、シグレさん……!?)


僕の肩には、いつの間にか隣に座っていたシグレさんの頭が乗っていた。


(……寝てる)


シグレさんは、僕の肩に寄りかかり、スヤスヤと眠っている。僕が寝ていたから、つられて寝てしまったのかもしれない。


それにしても、一体どうすれば良いやら判断がつかない。

僕はわからないなりにあれこれと思考を巡らせ、ふと、テーブルに目をやると……そこにはきちんと、ホットコーヒーとオレンジジュースが、美味しそうなお菓子と共に準備されていた。



(シグレさん、お菓子まで用意してくれたんだ……コーヒー、冷めちゃうよな)



とりあえず、コーヒーが冷めるからという理由で、僕はシグレさんを起こす事にした。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とろけてまざる

ゆなな
BL
綾川雪也(ユキ)はオメガであるが発情抑制剤が良く効くタイプであったため上手に隠して帝都大学附属病院に小児科医として勤務していた。そこでアメリカからやってきた天才外科医だという永瀬和真と出会う。永瀬の前では今まで完全に効いていた抑制剤が全く効かなくて、ユキは初めてアルファを求めるオメガの熱を感じて狂おしく身を焦がす…一方どんなオメガにも心動かされることがなかった永瀬を狂わせるのもユキだけで── 表紙素材http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55856941

スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:niia 様 ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。 先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。 そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。 しかし、その考えはある日突然……一変した。 『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』 自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。 『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』 挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。 周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。 可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。 自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!! ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!! ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

処理中です...