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第六話
しおりを挟む「……お邪魔、します」
「ふふ、そんなに緊張しなくていいよ。ようこそ、我が家へ」
いよいよ、部屋のドアが開かれ、僕は緊張気味に玄関へと足を踏み入れた。
(わぁ、いい匂い……)
玄関は、サンダルウッドのような癒し系の香りで満たされており、ここに居るだけで、今の僕なら即睡眠状態に入れそうだ。
「セイラ?大丈夫?」
「あ、はい……!大丈夫です。その、いい匂いだなって……」
あわあわしながらも正直な感想を述べると、シグレさんは嬉しそうに微笑んだ。
「そうか、それは嬉しいな。実は、最近気に入った芳香剤のシリーズがあって、これはサンダルウッドの香りなんだけど……つい昨日、買ってきたばかりなんだ」
「そうなんですか。僕、この香り好きです」
サンダルウッドの香りは、どことなく懐かしかった。
そして、片付けの行き届いた清潔感のある室内にすっかり魅せられ、僕は自然と顔を綻ばせた。
すると、シグレさんは少し照れたように鼻の頭を掻きながら、僕に中へ入るようにと促した。
「さぁ、靴を脱いで。とりあえず、リビングでお茶でもしようか」
「あ、 あの、でも……」
僕は戸惑った。
さっきから僕は、ずっと丁寧に扱われている。
僕は使用人としてここへ来たのに、こんな風におもてなしをされるのは、何かおかしいのではないだろうか。
けれど、シグレさんはそんなの何も気にしていない様子で、僕に向かって手招きをした。
「なに、遠慮しなくていいよ。ほら、早くおいで」
「は、はい……」
……こんなものなのだろうか。
遠慮しようと思ったけれど、シグレさんに強く呼ばれたので、僕はいつもより丁寧に靴を脱いで揃えると、なるべく静かに部屋の中へと足を踏み入れた。
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