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波風
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「寅くんただいまー!!!」
「おかえり~」
奈緒子の実家から帰省した渚は、ドアを開けるなり、出迎えた寅に飛び付いた。
「なぎくん!お父さんでしょ?」
奈緒子が『寅くん』と言うのを真似して、渚も『寅くん』と父親のことを呼ぶようになってしまった。注意はするが、なかなか治らない。
「2人のこと待ってたんだよ。早くごはん食べよ!」
寅はご馳走を作って待ってくれていた。奈緒子と渚は「やった~!」と喜び、数日ぶりに家族3人で食卓を囲んだ。
「奈緒子さん、実家はどうだった?」
「お父さんが、寅くんに会えなくて寂しがってたわよ。」
奈緒子の父は偏屈なタイプであったが、寅とは気が合うようで、寅のことを気に入っていた。
渚は、帰省の出来事を寅に話したいらしく、食事中ずっと喋り続けていた。
「あのね、じいじと公園行って、なぎ滑り台何回もした!あと、お熱でて病院泣かずに行けたよ!」
「えぇ?なぎ病院でたくさん泣いてたじゃない。嘘ついてない?」
奈緒子が笑いながら暴露すると、渚は怒って
「泣いてない!ママ嘘ついてる!」
と叫んでいた。
食事も風呂も終え、渚を寝かし付けたあと、やっとゆっくりとした時間がやってきた。奈緒子と寅は、ダイニングテーブルに座りお茶を飲んでいた。
「そういえば、前の旦那さんに会ったって。ビックリした。」
「ね!私もビックリ。なんか視線を感じるな~って思ったらさ、こんな偶然あるんだね。正直、はるかじゃなくてほっとした。はるかはきっと4年ぶりでも攻撃してくるから。」
「──前の旦那さん、きっと奈緒子さんと別れたこと後悔してるよ。忘れられないんじゃないかな。」
奈緒子は、寅がこのようなことを言ってくるのは意外だと思った。
「······え?そんなことないわよ。それに、実の子じゃないのに父親してるんだから、それだけはるかのことを愛してるんでしょ。話したときは、本当に昔の知り合いって温度だったし。」
「······そうかなぁ。僕が元旦那さんの立場だったら、奈緒子さんを忘れられないだろうなって思って。」
「はぁ?寅くんは浮気しないでしょ?前の旦那とは違うもの。」
「当たり前だよ!例えばの話し。」
奈緒子は、寅は意外にも相当気にしてるな····と感じ、話を変えるように座っている寅の後ろから抱きついた。
「そんなことより!私に会えなくてさみしかったでしょ?渚は寝たけど·····寅くんは?もう寝る?」
「──寝ない。」
寅は立ち上がって、奈緒子を優しく抱き締めてくれた。2人は寝室に移動し、一週間ぶりに愛し合った。寅の優しい温もりが、奈緒子は大好きだった。
それから1ヶ月後、いつも通り、保育園のお迎えに来ていた奈緒子は、信じられない光景を見た。
かつての親友はるかが、保育園に保護者として迎えに来ていた。
奈緒子は見間違いかと思い、小声で保育士に聞いてみた。
「あ、あの、あそこのお母さんは、前からいましたか?知り合いにすごく似てて······」
「ああ!秋月さん?今月から、転園してきたんですよ~。年長クラスの、優紀君のお母さんですね!おキレイですよね~。」
間違いない。信じられないが、はるかだ。なぜかは分からないが、渚と同じ園にいるのだ。
どこまで奈緒子の人生につきまとえば気が済むのか。奈緒子は呆然として、はるかを見つめていた。
「おかえり~」
奈緒子の実家から帰省した渚は、ドアを開けるなり、出迎えた寅に飛び付いた。
「なぎくん!お父さんでしょ?」
奈緒子が『寅くん』と言うのを真似して、渚も『寅くん』と父親のことを呼ぶようになってしまった。注意はするが、なかなか治らない。
「2人のこと待ってたんだよ。早くごはん食べよ!」
寅はご馳走を作って待ってくれていた。奈緒子と渚は「やった~!」と喜び、数日ぶりに家族3人で食卓を囲んだ。
「奈緒子さん、実家はどうだった?」
「お父さんが、寅くんに会えなくて寂しがってたわよ。」
奈緒子の父は偏屈なタイプであったが、寅とは気が合うようで、寅のことを気に入っていた。
渚は、帰省の出来事を寅に話したいらしく、食事中ずっと喋り続けていた。
「あのね、じいじと公園行って、なぎ滑り台何回もした!あと、お熱でて病院泣かずに行けたよ!」
「えぇ?なぎ病院でたくさん泣いてたじゃない。嘘ついてない?」
奈緒子が笑いながら暴露すると、渚は怒って
「泣いてない!ママ嘘ついてる!」
と叫んでいた。
食事も風呂も終え、渚を寝かし付けたあと、やっとゆっくりとした時間がやってきた。奈緒子と寅は、ダイニングテーブルに座りお茶を飲んでいた。
「そういえば、前の旦那さんに会ったって。ビックリした。」
「ね!私もビックリ。なんか視線を感じるな~って思ったらさ、こんな偶然あるんだね。正直、はるかじゃなくてほっとした。はるかはきっと4年ぶりでも攻撃してくるから。」
「──前の旦那さん、きっと奈緒子さんと別れたこと後悔してるよ。忘れられないんじゃないかな。」
奈緒子は、寅がこのようなことを言ってくるのは意外だと思った。
「······え?そんなことないわよ。それに、実の子じゃないのに父親してるんだから、それだけはるかのことを愛してるんでしょ。話したときは、本当に昔の知り合いって温度だったし。」
「······そうかなぁ。僕が元旦那さんの立場だったら、奈緒子さんを忘れられないだろうなって思って。」
「はぁ?寅くんは浮気しないでしょ?前の旦那とは違うもの。」
「当たり前だよ!例えばの話し。」
奈緒子は、寅は意外にも相当気にしてるな····と感じ、話を変えるように座っている寅の後ろから抱きついた。
「そんなことより!私に会えなくてさみしかったでしょ?渚は寝たけど·····寅くんは?もう寝る?」
「──寝ない。」
寅は立ち上がって、奈緒子を優しく抱き締めてくれた。2人は寝室に移動し、一週間ぶりに愛し合った。寅の優しい温もりが、奈緒子は大好きだった。
それから1ヶ月後、いつも通り、保育園のお迎えに来ていた奈緒子は、信じられない光景を見た。
かつての親友はるかが、保育園に保護者として迎えに来ていた。
奈緒子は見間違いかと思い、小声で保育士に聞いてみた。
「あ、あの、あそこのお母さんは、前からいましたか?知り合いにすごく似てて······」
「ああ!秋月さん?今月から、転園してきたんですよ~。年長クラスの、優紀君のお母さんですね!おキレイですよね~。」
間違いない。信じられないが、はるかだ。なぜかは分からないが、渚と同じ園にいるのだ。
どこまで奈緒子の人生につきまとえば気が済むのか。奈緒子は呆然として、はるかを見つめていた。
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