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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
不仲
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アッシュ、レイ、ルイーゼ、エルの4人は、ルイーゼ含む王族の暮らす城の一室に案内され、アッシュの見に何が起こったのか、この4年で何があったのかについて話していた。
「では、石化の魔法をかけられ4年も石になっていたと!?たまたま魔法を解ける者が現れたのは奇跡ですな!あなたはやはり運が強いお方だ!」
ルイーゼはアッシュの事情を聞き、興奮したように喜びの声を上げた。
「じゃあアッシュ、あなたは知らないのね······あなたが消えた時、ナタリーはあなたとの子を身籠っていたのよ。そして1人で産んで育てていた。」
「───俺との子??じゃあさっきいたのは·······」
「あなたの子よ。アリシアっていう女の子。今年で4歳になった。」
アッシュは子ども嫌いだったが、他ならぬナタリーとの間に子がいると知り、喜びの気持ちが湧いてきた。そもそも、4年前にナタリーと関係を持った時、子ができるかもしれないことは覚悟していた。彼女との子であれば愛する自信があったし、何よりナタリーとの関係を、切っても切れない証のようなものが欲しかったのかもしれない。
一瞬感慨深いような表情を見せたアッシュに対し、苛立ったレイは黙っていられなくなった。
「念のため言っておくけど、アリシアは僕のことを父親だと信じてるよ。あなたの話をナタリーは子ども達にしていないんだ。ナタリーの子どもは2人いて、上の子は生物学上はあなたの娘だけど、下の子は正真正銘僕の子だ。」
「───お前が父親?俺の子だろう。冗談はやめろ。」
レイに食ってかかるアッシュをエルが宥めた。
「ねぇ。あなたを信じて待ってたのに、死んだと聞かされたナタリーの気持ちを想像してみて。どんなに悲しくても、知らない土地で1人で子どもを育てていかなくちゃいけなかったの。壊れかけた彼女は本当に痛々しかったわ。そんな時に、かつて心を許したレイが側にいて支えてくれたら、そりゃ頼りたくなるわよ。あなたが側にいられない間、レイがナタリーとアリシアを支えてたのよ。それは紛れもない事実でしょう?」
「·············はっ!俺の代わりに側にいたって?違うな。全部自分の為だろう?邪魔物が消えたのを幸いに、ナタリーが弱ってる時に優しいふりをしてつけ込んだんだ。おまけに子どもまで作って離れられなくした。違うか?」
アッシュの言い様にエルは憤慨した。
「───あなたなんてこと言うの!?レイはそんな人じゃないわよ!」
アッシュは怒るエルを一瞥し、鼻で笑った。
「昔からそうだったじゃないか。ナタリーを助けているようで、本当は自分の欲を満たしたいだけだ。俺と違ってお前は表面を取り繕っているが、心の内は独占欲まみれの浅ましい奴だ。そこは俺と大して変わらないな。」
レイはアッシュの言葉を反論せず黙って聞いていた。しばらくの沈黙のあと、レイはアッシュを睨んでこう言った。
「········だったら何だ?親切心から教えてやるけど、ナタリーはもうあんたを選ばない。彼女は子どもが一番大切なんだよ。アッシュ、あんたに子どもを愛せるか?一緒に遊んだり、世話することができるか?無理だろ。生きていても、今さら現れるべきじゃなかった。傷付きたくなかったらこのまま姿を消すか、只の昔の知り合いに徹してナタリーには必要以上に関わらないことだな。アリシアに会いたいなら時々会わせてもいい。ただし僕の前でだけな。」
レイの発言に我慢ならなくなったアッシュは椅子から勢いよく立ち上がった。そんなアッシュをルイーゼが慌てて制した。
「ア、アッシュ様······!堪えてください!ここで争い事は困ります───!!······レイ!!なんて言い方をするんだ。アッシュ様は大義を果たしたんだ。生きて帰ったことを喜ぶべきだろう!?もっと敬意を払いなさい!!」
レイは不満そうにそっぽを向いた。
アッシュとレイのやり取りを見守っていたエルは大きくため息をついた。
「はぁ······ナタリーがここにいなくて本当に良かったわ。あなた達正気なの?これじゃ全く話し合いにならないじゃない。お互い嫌いなのは分かるけど、貶し合うばかり······平和的に解決しようと思わないの?」
「エル。僕は平和的に解決しようとしてるよ。アッシュがどこでどう暮らそうと、ナタリーや子ども達に干渉してこないならそれでいい。」
「お前は忘れたようだが、一度ナタリーから完璧に捨てられた分際で偉そうだな。お前が只の昔の知り合いに徹すれば済む話だろう?4歳なら記憶もすぐ上書きされる。本当の父親が違うことを伝えればいずれは理解するさ。お前の息子は引き取ったらいい。」
「ちょっと······もういいかげんにしてよ!!どうかしてるわよ!」
それからしばらく、アッシュとレイが納得できる形で落としどころを見つけようとルイーゼとエルは尽力したが、2人とも一向に折れず、話し合いは意味を成さなかった。
「では、石化の魔法をかけられ4年も石になっていたと!?たまたま魔法を解ける者が現れたのは奇跡ですな!あなたはやはり運が強いお方だ!」
ルイーゼはアッシュの事情を聞き、興奮したように喜びの声を上げた。
「じゃあアッシュ、あなたは知らないのね······あなたが消えた時、ナタリーはあなたとの子を身籠っていたのよ。そして1人で産んで育てていた。」
「───俺との子??じゃあさっきいたのは·······」
「あなたの子よ。アリシアっていう女の子。今年で4歳になった。」
アッシュは子ども嫌いだったが、他ならぬナタリーとの間に子がいると知り、喜びの気持ちが湧いてきた。そもそも、4年前にナタリーと関係を持った時、子ができるかもしれないことは覚悟していた。彼女との子であれば愛する自信があったし、何よりナタリーとの関係を、切っても切れない証のようなものが欲しかったのかもしれない。
一瞬感慨深いような表情を見せたアッシュに対し、苛立ったレイは黙っていられなくなった。
「念のため言っておくけど、アリシアは僕のことを父親だと信じてるよ。あなたの話をナタリーは子ども達にしていないんだ。ナタリーの子どもは2人いて、上の子は生物学上はあなたの娘だけど、下の子は正真正銘僕の子だ。」
「───お前が父親?俺の子だろう。冗談はやめろ。」
レイに食ってかかるアッシュをエルが宥めた。
「ねぇ。あなたを信じて待ってたのに、死んだと聞かされたナタリーの気持ちを想像してみて。どんなに悲しくても、知らない土地で1人で子どもを育てていかなくちゃいけなかったの。壊れかけた彼女は本当に痛々しかったわ。そんな時に、かつて心を許したレイが側にいて支えてくれたら、そりゃ頼りたくなるわよ。あなたが側にいられない間、レイがナタリーとアリシアを支えてたのよ。それは紛れもない事実でしょう?」
「·············はっ!俺の代わりに側にいたって?違うな。全部自分の為だろう?邪魔物が消えたのを幸いに、ナタリーが弱ってる時に優しいふりをしてつけ込んだんだ。おまけに子どもまで作って離れられなくした。違うか?」
アッシュの言い様にエルは憤慨した。
「───あなたなんてこと言うの!?レイはそんな人じゃないわよ!」
アッシュは怒るエルを一瞥し、鼻で笑った。
「昔からそうだったじゃないか。ナタリーを助けているようで、本当は自分の欲を満たしたいだけだ。俺と違ってお前は表面を取り繕っているが、心の内は独占欲まみれの浅ましい奴だ。そこは俺と大して変わらないな。」
レイはアッシュの言葉を反論せず黙って聞いていた。しばらくの沈黙のあと、レイはアッシュを睨んでこう言った。
「········だったら何だ?親切心から教えてやるけど、ナタリーはもうあんたを選ばない。彼女は子どもが一番大切なんだよ。アッシュ、あんたに子どもを愛せるか?一緒に遊んだり、世話することができるか?無理だろ。生きていても、今さら現れるべきじゃなかった。傷付きたくなかったらこのまま姿を消すか、只の昔の知り合いに徹してナタリーには必要以上に関わらないことだな。アリシアに会いたいなら時々会わせてもいい。ただし僕の前でだけな。」
レイの発言に我慢ならなくなったアッシュは椅子から勢いよく立ち上がった。そんなアッシュをルイーゼが慌てて制した。
「ア、アッシュ様······!堪えてください!ここで争い事は困ります───!!······レイ!!なんて言い方をするんだ。アッシュ様は大義を果たしたんだ。生きて帰ったことを喜ぶべきだろう!?もっと敬意を払いなさい!!」
レイは不満そうにそっぽを向いた。
アッシュとレイのやり取りを見守っていたエルは大きくため息をついた。
「はぁ······ナタリーがここにいなくて本当に良かったわ。あなた達正気なの?これじゃ全く話し合いにならないじゃない。お互い嫌いなのは分かるけど、貶し合うばかり······平和的に解決しようと思わないの?」
「エル。僕は平和的に解決しようとしてるよ。アッシュがどこでどう暮らそうと、ナタリーや子ども達に干渉してこないならそれでいい。」
「お前は忘れたようだが、一度ナタリーから完璧に捨てられた分際で偉そうだな。お前が只の昔の知り合いに徹すれば済む話だろう?4歳なら記憶もすぐ上書きされる。本当の父親が違うことを伝えればいずれは理解するさ。お前の息子は引き取ったらいい。」
「ちょっと······もういいかげんにしてよ!!どうかしてるわよ!」
それからしばらく、アッシュとレイが納得できる形で落としどころを見つけようとルイーゼとエルは尽力したが、2人とも一向に折れず、話し合いは意味を成さなかった。
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