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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

レイの帰り

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 それからナタリーは、レイと子ども達と一緒に変わらぬ日々を過ごした。しかし、ナタリーの心境には変化があった。
 時々エルが遊びには来てくれるが、レイが仕事中はほとんどを家で子ども達と過ごすことが多くなり、レイの帰宅を心待にするようになった。
 レイより早く目覚めたナタリーは、隣で眠っているレイにくっついた。
「───······おはよう。早起きだね。」
「レイ、今日は任務はどこへいくの?危険なところじゃないなら私達も一緒に行きたいわ。迷惑かけないから。」
 ナタリーと子ども達がついていくなど邪魔でしかないことは分かっていたが、自分だけが不自由なことで拗ねたような気持ちになり、つい我が儘を言ってしまった。それに、この前ノーテルが言っていたように、若い女性からレイが度々言い寄られていたことを知ると、自分のような厄介者で若くない女は愛想を尽かされてしまうのではないかと不安になった。
「ごめんねナタリー。一緒にいたいけど·····君たちは家で待ってて。早く帰ってくるよ。」
 甘えてくるナタリーが愛しくて堪らなくなり、レイはナタリーを抱き寄せた。
 今日の任務は、傷付いた兵士の治癒だったため、危険ということはなかったが、ノーテルとのこともあり、レイは他の魔法使い仲間や獣人の兵士にナタリーを会わせるつもりはなかった。

 ノーテルがナタリーに会いに行き、誘うような発言をしたことが許せなかったレイは、すぐにノーテルを呼び出した。レイは若く物腰が柔らかかった為、魔法使い達からは弟的な扱いをされていたが、立場上は指揮官だった。
「ノーテル、昨日僕の家に来たんだって?一体どういうつもりで?」
「ああ、近くまで来たから寄ったんだよ。奥さんに挨拶して、子ども達と遊んだだけさ。」
 とぼけるノーテルにレイは苛立った。
「なめてるのか?妻をおかしな目で見たらあんたを容赦しない。二度と僕の家族に関わるな。」
 普段のレイからは想像がつかないような怒気をはらんだ声に、ノーテルはたじろいだ。
「そんなに怒るなよレイ。奥さんを褒めるつもりで言ったんだ。誤解させてしまったみたいで···分かったよ。君の家族にはもう近付かない。」
 本当はノーテルのことを追放するつもりだったが、ナタリーから穏便に済ませるよう念を押されていた為、ギリギリのところで踏みとどまった。今度同じようなことがあれば、ナタリーに何と言われようが、レイはノーテルに対し、追放以上のことをしてしまう自信がある。元々レイは平和主義であったはずだが、ナタリーのことになると非情になることがあった。
    
 その日、任務へ行くために家を出ようとするレイを、ナタリーはアリシア、エレン と共に見送った。
「お父さん、帰ったらお風呂であれやろうね!!お母さんとエレンはできないんだから!」
『あれ』というのは、アリシアの魔力のコントロールの為にレイが教えている、指から水を噴水のように吹き出させ操る魔法の一種だった。アリシアは魔力が強い為、既に少しづつだがその遊びができるようになり、ナタリーやエレン、他の子ども達はそれできないのに、自分とレイだけができるということに特別感を感じていた。
「うん。帰ったらたくさん遊ぼうねアリシア。お母さんの言うこと聞いていい子にしてるんだよ。」
 レイはアリシアの頭を撫で、エレンとナタリーにキスをして家を出ていった。
「あーあ!お父さん行っちゃったらつまんなーい!!」
 ぶつくさ文句を言っているアリシアにナタリーは苦笑した。以前は、エルやエルの子ども達と家の前で走り回ったり、外へ買い物に行ったり、散歩に出たりしていたが、今はレイがいない間は、家の中か庭にしか出ることができない生活だった。エレンはまだ小さい為、ナタリーもエレンにかかりっきりになることがあり、アリシアが暇をもて余してしまうことが最近のナタリーの悩みだった。
 レイには、少し外を散歩するだけなら駄目かと交渉したことがあるが、頑として首を縦に振らなかった。レイから見れば、ナタリーが以前にも増して蠱惑的な雰囲気を漂わせ、明らかに異質になっていることが分かっていたが、ナタリー本人は人と関わることが少なかった為、自分が今までと変わったという実感が持てなかった。レイは心配しすぎるあまり、大袈裟になっていると感じていた。
「退屈させてごめんねアリシア。お庭で遊ぼうか。」
 午前中は庭で遊び、午後からはお昼寝をさせたり家事をしたりして1日を過ごした。
 夕方頃、家の呼び鈴がなった。レイは夕方頃の帰宅だと聞いていたので、ナタリーと子ども達は待ちに待ったかのように笑顔で玄関まで走り扉を開けた。

 そこに立っていたのは、ナタリーの中では既に故人となった人だった。かつて愛し、今でも心の中に居座り続けている人だ。
「·······ナタリー。久しぶりだな。会いたかったよ。」
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