92 / 121
私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
魔力の出現
しおりを挟む
ある日の夜、ナタリーはアリシアと共に就寝していた。最近のアリシアは夜間に起きる回数も減った為、ナタリーもゆっくり睡眠時間が取れるようになっていた。
寝る前まで、いつもと変わらず元気いっぱいに遊び回っていたアリシアだったが、今日は珍しくうなされているようだった。
(悪い夢でも見てるのかしら。)
ナタリーがアリシアの頭を撫でていると、突然アリシアが号泣し始めた。顔を赤くし、息使いが荒く苦しそうにしている。
アリシアは風邪もひいていなかったし、体調も問題なかった。
突然のことにナタリーはパニックになった。これまで、小さい子特有の高熱やひきつけなどを経験したことがあるアリシアだが、症状を見るとそのどれにも当てはまらない気がした。まるで発作のようで、ナタリーはアリシアを抱っこし、なだめようとするが一向に収まる気配はない。
その時ナタリーはふと、今のアリシアの様子に似た症状を思い出した。
以前魔法塔で侍女として仕えていた頃、夜中にアッシュの様子が急におかしくなったことがある。
「もしかして······魔力──??」
アリシアはアッシュの子だ。この年から魔力に目覚めた可能性は十分にある。しかし、だとすれば、ナタリーにはどうすればアリシアを助けられるのか見当もつかなかった。魔力が関係しているならば、医者に看せたところで意味がないからだ。
(魔法のことなら、レイに聞くしか方法はない·····!!)
ナタリーは寝巻きのまま、アリシアを抱き走って近所に住んでいるレイの家の戸を叩いた。
すぐに扉が開き、起こされたレイが驚いた様子で出てきた。
「こんな時間にごめんなさいレイ。実は、アリシアの様子が変なの····アッシュの魔力が暴走するのを見たことがあったから、もしかしたらそれと同じじゃないかって───私じゃどうにもできない。レイなら助けてくれるんじゃないかと思って·····!」
「落ち着いてナタリー。いいから中に入って。」
レイは、声を震わせながらひどく焦った様子のナタリーをすぐに部屋の中に入れた。
レイはアリシアの様子を確認した後、すぐにアリシアをレイのベッドに寝かせ、アリシアの額に手を置いたまま目を閉じた。
レイの手から青白い光が漏れている。ナタリーは黙ってその行為を見守っていた。
数分後、レイが目を開けたかと思うと、ぐったりと苦しそうにしていたアリシアが、スウスウと寝息をたて始めた。
「収まった·····?すごいわレイ───何をしたの?」
「多分、アリシアに魔力が出現し始めてて、体が追い付かなくなってるんだ。体内の魔力を調整すればいいんじゃないかと思った。今のところアリシアは運良く水属性が現れていたから、僕の魔力を流し込んでみたら成功した。」
アッシュは全属性を持っていたから、アリシアはどの属性が現れても不思議ではない。
安心したナタリーは緊張が解け、思わずレイに抱きついた。
「本当にありがとうレイ·····!!私一人じゃどうしようもできなかったわ!あなたがいてくれて良かった·····!」
レイは突然抱きつかれ少し戸惑っていたが、ためらいがちにナタリーの背中に手を回した。
「いや·····いいんだよナタリー。力になれて良かった。しばらくはアリシアの様子を見た方がいいかも。ナタリーはアリシアの隣で寝てあげて。僕はソファーに寝るから。」
「迷惑かけてごめんなさいレイ······アリシアが起きたらすぐ帰るわ。」
「ううん。気にしないで。また明日話そう。ナタリーも疲れただろ?ゆっくりおやすみ。」
「·····ありがとうレイ。おやすみなさい。」
ナタリーは久しぶりにレイにおやすみを言った。以前は毎晩、同じベッドに入っておやすみと言い合い、1日が終わっていた。
アリシアの穏やかな寝顔を見ながら、ナタリーも疲労からすぐに眠りについた。ベッドからは、慣れ親しんだレイの髪の匂いがして、ナタリーはいつもよりも落ち着いた気持ちで眠れた。
寝る前まで、いつもと変わらず元気いっぱいに遊び回っていたアリシアだったが、今日は珍しくうなされているようだった。
(悪い夢でも見てるのかしら。)
ナタリーがアリシアの頭を撫でていると、突然アリシアが号泣し始めた。顔を赤くし、息使いが荒く苦しそうにしている。
アリシアは風邪もひいていなかったし、体調も問題なかった。
突然のことにナタリーはパニックになった。これまで、小さい子特有の高熱やひきつけなどを経験したことがあるアリシアだが、症状を見るとそのどれにも当てはまらない気がした。まるで発作のようで、ナタリーはアリシアを抱っこし、なだめようとするが一向に収まる気配はない。
その時ナタリーはふと、今のアリシアの様子に似た症状を思い出した。
以前魔法塔で侍女として仕えていた頃、夜中にアッシュの様子が急におかしくなったことがある。
「もしかして······魔力──??」
アリシアはアッシュの子だ。この年から魔力に目覚めた可能性は十分にある。しかし、だとすれば、ナタリーにはどうすればアリシアを助けられるのか見当もつかなかった。魔力が関係しているならば、医者に看せたところで意味がないからだ。
(魔法のことなら、レイに聞くしか方法はない·····!!)
ナタリーは寝巻きのまま、アリシアを抱き走って近所に住んでいるレイの家の戸を叩いた。
すぐに扉が開き、起こされたレイが驚いた様子で出てきた。
「こんな時間にごめんなさいレイ。実は、アリシアの様子が変なの····アッシュの魔力が暴走するのを見たことがあったから、もしかしたらそれと同じじゃないかって───私じゃどうにもできない。レイなら助けてくれるんじゃないかと思って·····!」
「落ち着いてナタリー。いいから中に入って。」
レイは、声を震わせながらひどく焦った様子のナタリーをすぐに部屋の中に入れた。
レイはアリシアの様子を確認した後、すぐにアリシアをレイのベッドに寝かせ、アリシアの額に手を置いたまま目を閉じた。
レイの手から青白い光が漏れている。ナタリーは黙ってその行為を見守っていた。
数分後、レイが目を開けたかと思うと、ぐったりと苦しそうにしていたアリシアが、スウスウと寝息をたて始めた。
「収まった·····?すごいわレイ───何をしたの?」
「多分、アリシアに魔力が出現し始めてて、体が追い付かなくなってるんだ。体内の魔力を調整すればいいんじゃないかと思った。今のところアリシアは運良く水属性が現れていたから、僕の魔力を流し込んでみたら成功した。」
アッシュは全属性を持っていたから、アリシアはどの属性が現れても不思議ではない。
安心したナタリーは緊張が解け、思わずレイに抱きついた。
「本当にありがとうレイ·····!!私一人じゃどうしようもできなかったわ!あなたがいてくれて良かった·····!」
レイは突然抱きつかれ少し戸惑っていたが、ためらいがちにナタリーの背中に手を回した。
「いや·····いいんだよナタリー。力になれて良かった。しばらくはアリシアの様子を見た方がいいかも。ナタリーはアリシアの隣で寝てあげて。僕はソファーに寝るから。」
「迷惑かけてごめんなさいレイ······アリシアが起きたらすぐ帰るわ。」
「ううん。気にしないで。また明日話そう。ナタリーも疲れただろ?ゆっくりおやすみ。」
「·····ありがとうレイ。おやすみなさい。」
ナタリーは久しぶりにレイにおやすみを言った。以前は毎晩、同じベッドに入っておやすみと言い合い、1日が終わっていた。
アリシアの穏やかな寝顔を見ながら、ナタリーも疲労からすぐに眠りについた。ベッドからは、慣れ親しんだレイの髪の匂いがして、ナタリーはいつもよりも落ち着いた気持ちで眠れた。
394
お気に入りに追加
2,244
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】不出来令嬢は王子に愛される
きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』
姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった────
◇
有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。
ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる