86 / 121
私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
悲報
しおりを挟む
その日、ナタリーの住む家には、隣に住む隣人のエルという女性獣人が遊びにきていた。エルは猫耳の獣人で、3人の子どもを持つ母親だ。何かとこの国に慣れていないナタリーに親切にしてくれ、良き相談相手であり、友人でもあった。
やんちゃな子ども達を遊ばせながら、ナタリーとエルはイスに座り、ゆっくりと話をしていた。
「そういえば、ナタリーは帝国の魔法塔と、王宮どちらにも住んでたことがあるのよね?王女様って評判悪いけど、やっぱり怖いの?噂では、去年結婚した魔法使い出身の王配と実の兄に実権を握られて、今は以前の勢いは見る影もないって話だけど····王配のウィルってナタリーは知り合いなの!?」
噂好きのエルに質問され、ナタリーは返答に困ってしまった。王配がナタリーの知るウィルなのか、そうでないのかはこの国では確かめようがなかったが、ウィルの安否を常に気にかけていた。ナタリーとウィルが再び会うことはきっともうないだろうし、ナタリーには会う資格もなかったが、彼に無事でいてほしかった。
エルには、お腹の子の父親のこと、ナタリーがなぜここにきたのか、詳しいいきさつは話していなかった。エルの夫は国境の兵士をしており、帝国の情報を仕入れてくるので、エルは帝国の時事ネタについて、ナタリーよりも情報通だった。
「いえ·····私は住んでいたといっても、顔が広くないから分からないわ。」
ナタリーは知らないふりをしてごまかすと、エルは思ったような面白い話が聞けず、残念そうな顔をした。
「そういえば、つい先日、王宮で反乱があって人が亡くなったのを知ってた?魔法使いの勢力を王宮に入れることに対する反発があったみたいで、王宮内で爆発があったんだって。その爆発に巻き込まれたのが····確か、国の危機を救う予言をした聖女様だったかしら?」
(·········え?)
ナタリーは耳を疑った。
「聖女様って·······エステル様?エル───その話、間違いないの?」
「そう!エステル様よ!今日帝国では大々的に葬儀を執り行うと言ってたわ。」
ナタリーの頭は真っ白になった。エステルが死んだ·····?アッシュと婚姻の誓いを結んだ、前世でアッシュと恋仲だったエステルが······?死ぬときは、二人一緒と誓いを立てた────
ナタリーは真っ青な顔で立ち上がり、ふらふらと玄関の方へ向かった。
「ナタリー!どこへ行くの?大丈夫!?」
「········私、確かめなきゃ。ルイーゼに会いに行ってくる。」
ナタリーは、すぐ近くの距離にあるルイーゼの居住地に向かい、先程の話の真偽を確かめに向かった。
自室にいたルイーゼは、ナタリーの顔面蒼白な顔を見て驚いた。
「一体どうしたんだ、ナタリー!?」
「ルイーゼ様····聖女エステル様が亡くなったというのは───本当ですか·····?」
きっと何かの間違いだ。エルの夫が勘違いし、間違った噂話を広めたに違いない。
「そのことか。ああ、間違いない。聖女様は王宮内での反乱による爆発に巻き込まれ、2日前に亡くなった。本日が葬儀だと伝えられている。でも、どうして·····?聖女様と知り合いか?」
ナタリーは目の前が真っ暗になり、それから何も聞こえなくなった。ルイーゼの姿がグニャリと歪んだ。
ナタリーはその場で意識を失い倒れた。
意識を失ったナタリーは夢を見ていた。そこは一面真っ白な空間で、まるで雲の上のようだ。アッシュとエステルが、手を繋いで寄り添いながら、階段を上がっていく······二人とも、とても穏やかで幸せそうな顔をしていた。
やんちゃな子ども達を遊ばせながら、ナタリーとエルはイスに座り、ゆっくりと話をしていた。
「そういえば、ナタリーは帝国の魔法塔と、王宮どちらにも住んでたことがあるのよね?王女様って評判悪いけど、やっぱり怖いの?噂では、去年結婚した魔法使い出身の王配と実の兄に実権を握られて、今は以前の勢いは見る影もないって話だけど····王配のウィルってナタリーは知り合いなの!?」
噂好きのエルに質問され、ナタリーは返答に困ってしまった。王配がナタリーの知るウィルなのか、そうでないのかはこの国では確かめようがなかったが、ウィルの安否を常に気にかけていた。ナタリーとウィルが再び会うことはきっともうないだろうし、ナタリーには会う資格もなかったが、彼に無事でいてほしかった。
エルには、お腹の子の父親のこと、ナタリーがなぜここにきたのか、詳しいいきさつは話していなかった。エルの夫は国境の兵士をしており、帝国の情報を仕入れてくるので、エルは帝国の時事ネタについて、ナタリーよりも情報通だった。
「いえ·····私は住んでいたといっても、顔が広くないから分からないわ。」
ナタリーは知らないふりをしてごまかすと、エルは思ったような面白い話が聞けず、残念そうな顔をした。
「そういえば、つい先日、王宮で反乱があって人が亡くなったのを知ってた?魔法使いの勢力を王宮に入れることに対する反発があったみたいで、王宮内で爆発があったんだって。その爆発に巻き込まれたのが····確か、国の危機を救う予言をした聖女様だったかしら?」
(·········え?)
ナタリーは耳を疑った。
「聖女様って·······エステル様?エル───その話、間違いないの?」
「そう!エステル様よ!今日帝国では大々的に葬儀を執り行うと言ってたわ。」
ナタリーの頭は真っ白になった。エステルが死んだ·····?アッシュと婚姻の誓いを結んだ、前世でアッシュと恋仲だったエステルが······?死ぬときは、二人一緒と誓いを立てた────
ナタリーは真っ青な顔で立ち上がり、ふらふらと玄関の方へ向かった。
「ナタリー!どこへ行くの?大丈夫!?」
「········私、確かめなきゃ。ルイーゼに会いに行ってくる。」
ナタリーは、すぐ近くの距離にあるルイーゼの居住地に向かい、先程の話の真偽を確かめに向かった。
自室にいたルイーゼは、ナタリーの顔面蒼白な顔を見て驚いた。
「一体どうしたんだ、ナタリー!?」
「ルイーゼ様····聖女エステル様が亡くなったというのは───本当ですか·····?」
きっと何かの間違いだ。エルの夫が勘違いし、間違った噂話を広めたに違いない。
「そのことか。ああ、間違いない。聖女様は王宮内での反乱による爆発に巻き込まれ、2日前に亡くなった。本日が葬儀だと伝えられている。でも、どうして·····?聖女様と知り合いか?」
ナタリーは目の前が真っ暗になり、それから何も聞こえなくなった。ルイーゼの姿がグニャリと歪んだ。
ナタリーはその場で意識を失い倒れた。
意識を失ったナタリーは夢を見ていた。そこは一面真っ白な空間で、まるで雲の上のようだ。アッシュとエステルが、手を繋いで寄り添いながら、階段を上がっていく······二人とも、とても穏やかで幸せそうな顔をしていた。
377
お気に入りに追加
2,226
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる