84 / 121
私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
新しい命
しおりを挟む
王女とウィルの結婚式の翌日、ナタリーは情報を得るため市場まで来ていた。号外で新聞が撒かれ、その一枚を握りしめ、アッシュと過ごした教会に戻ってきた。
『王室初 魔法使い出身の王配 ウィル王子』と題された記事が目に入った。
(ウィル······やはり王女と結婚したのね。)
ナタリーはアッシュを選んだ身だが、ほんの1ヶ月前まではウィルとは夫婦だった。彼との愛を疑ったことはなかったし、こんな状況に陥らなければきっと今も、あのフィガロの家で平穏で幸せな暮らしをしていたことだろう。
彼が王配になったからと言って、ショックを受ける資格はナタリーにはない。だが、今までの彼への思いが急に消えることはなく、ナタリーの心中は複雑だった。残忍で横暴な王女だと知っているからこそ、ウィルがひどい目に合わないか、命の危険に晒されないか不安だった。
しかし、記事の詳細を見ると不思議なことが書いてあった。
『黒髪で逞しい体つきをした美丈夫であるウィル王子は·······』
(──黒髪で逞しい·····??まるでウィルのことじゃないみたい。)
なぜかは分からないが、別人の『ウィル·アンダーソン』のことを書いているような記事だった。
アッシュの帰りをただ待っている状態のナタリーには、調べる術はなかった。
◇
それから1ヶ月間、ナタリーはアッシュの帰りを待ち続けたが、彼は戻ってこなかった。
また、ナタリーは月のものが来ないことに気付いていた。気持ちが悪くなり吐いてしまうことも増えた。
(私、多分妊娠してる······)
10日程、アッシュとあれほど濃密な時間を過ごしたのだから、妊娠する可能性は十分だったが、いざそうなるとまさかという気持ちだった。夫婦だったウィルではなく、2週間にも満たない期間を交わっただけのアッシュの子どもを孕むとは。
アッシュが帰らなかった場合、ナタリーはアッシュから、ある場所へ行くよう言われていた。
それは、国の一番端にある町から海を渡った先にある場所、獣人達の住む『ラニア』と呼ばれる小さな国だった。
アッシュの帰りをもうしばらく待ちたいが、子どもができたとなると、こんなところでずっと暮らしていくわけにもいかない。『ラニア』がどんな場所かナタリーには想像もつかないが、お腹の子の為にも生き延びなければならない。
ナタリーは固く決心し、アッシュと過ごした教会を去り、一人旅に出た。
『王室初 魔法使い出身の王配 ウィル王子』と題された記事が目に入った。
(ウィル······やはり王女と結婚したのね。)
ナタリーはアッシュを選んだ身だが、ほんの1ヶ月前まではウィルとは夫婦だった。彼との愛を疑ったことはなかったし、こんな状況に陥らなければきっと今も、あのフィガロの家で平穏で幸せな暮らしをしていたことだろう。
彼が王配になったからと言って、ショックを受ける資格はナタリーにはない。だが、今までの彼への思いが急に消えることはなく、ナタリーの心中は複雑だった。残忍で横暴な王女だと知っているからこそ、ウィルがひどい目に合わないか、命の危険に晒されないか不安だった。
しかし、記事の詳細を見ると不思議なことが書いてあった。
『黒髪で逞しい体つきをした美丈夫であるウィル王子は·······』
(──黒髪で逞しい·····??まるでウィルのことじゃないみたい。)
なぜかは分からないが、別人の『ウィル·アンダーソン』のことを書いているような記事だった。
アッシュの帰りをただ待っている状態のナタリーには、調べる術はなかった。
◇
それから1ヶ月間、ナタリーはアッシュの帰りを待ち続けたが、彼は戻ってこなかった。
また、ナタリーは月のものが来ないことに気付いていた。気持ちが悪くなり吐いてしまうことも増えた。
(私、多分妊娠してる······)
10日程、アッシュとあれほど濃密な時間を過ごしたのだから、妊娠する可能性は十分だったが、いざそうなるとまさかという気持ちだった。夫婦だったウィルではなく、2週間にも満たない期間を交わっただけのアッシュの子どもを孕むとは。
アッシュが帰らなかった場合、ナタリーはアッシュから、ある場所へ行くよう言われていた。
それは、国の一番端にある町から海を渡った先にある場所、獣人達の住む『ラニア』と呼ばれる小さな国だった。
アッシュの帰りをもうしばらく待ちたいが、子どもができたとなると、こんなところでずっと暮らしていくわけにもいかない。『ラニア』がどんな場所かナタリーには想像もつかないが、お腹の子の為にも生き延びなければならない。
ナタリーは固く決心し、アッシュと過ごした教会を去り、一人旅に出た。
381
お気に入りに追加
2,244
あなたにおすすめの小説
【完結】不出来令嬢は王子に愛される
きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』
姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった────
◇
有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。
ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。
大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。
見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。
黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…?
対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる