侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

結婚式当日

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 アレクシア王女とウィルは、王女の部屋にいた。あと一時間もすれば、王宮の外に大勢押しかけた民衆の前に2人が登場し、帝国初の魔法使いの王配として、ウィルを御披露目することになっている。

 この日を迎えるまでに変わったことと言えば、常に王女の側に控えていた側近の一人と、イースが行方不明になったことだ。側近は黒髪の暗い雰囲気の男で、ウィルは顔を覚えていないが、何かに巻き込まれた可能性が高い。元々、王女に首輪を渡し、入れ知恵をした魔法使い出身の者がいるはずで、その者が建国祭の日に騒ぎを企てた人物ではないかとウィルは考えていた。
 王女の側近が闇の魔法使いで、元凶となった人物であるならば、その事実を突き止めた魔法使い側の誰かにさらわれ殺されたか、もしくは自分の意思で姿を消したか、どちらかだろう。イースに関しても不明だが、このタイミングで消えるということは、おそらく誰かに消されたのではないか、そんな気がする。2人を消せるとしたら、もしかしたらアッシュが関わっている可能性もある·····しかし、真実をウィルは知る由もなかった。

 民衆は王女と、初めての魔法使い出身の王配を見ようと、期待に胸を高鳴らせ、会場は異常な空気に包まれていた。
 王女とウィルは衣装に着替え終わり、控え室で向かい合っていた。
「ウィル·····素敵よ。この時を待っていたの。あなたは私の夫になるのよ。嬉しい?」
「はい。王女様。心の底から嬉しいです。僕達の勇姿を、民衆に見せつけなければ。」
 王女はウィルの頬をうっとりと撫でた。今日という日に高揚しているのか、普段あまり感情を出さないウィルの表情が、いつもより興奮しているように感じる。目がギラギラと輝き、口元には薄い笑みが広がっている。
「あなたは平凡な女と平凡な暮らしをしていた割に野心が強かったのね。そんな顔してるわ。野心が強い男は好きよ。」
「───僕達のこれからのことが、楽しみで仕方ないのです。民衆はどんな反応をするでしょうか。僕の人生の中で、間違いなく今が最も誉れ高い瞬間です。」
「ウィルがそう言ってくれて嬉しいわ····あの女が消えた後から、あなた私に冷たくなったような気がしてたから。」
「不安にさせてしまい申し訳ありません王女様。僕は一刻も早く王女様が欲しいです。式が終わったらそのまま·····王女様の部屋に行ってもいいですか?誰にも邪魔されたくありません。」
「──ええ、もちろんよウィル!私も待ちきれないわ。」
 王女はウィルに口付けし、民衆に向かって開く大きな扉の前に立った。

 怒号のような歓声が聞こえる。
 大きな門がゆっくりと開かれ、アレクシア王女と、彼女の王配が初めて民衆の前に姿を現した。
 皆、評判の悪い王女の夫を見ると、畏怖の念を持ち歓声を上げるものもいれば、罵声を浴びせるものもいた。いずれにせよ、この会場は異常な熱気に包まれ、初めての魔法使いの王配の姿は、良くも悪くも民衆の心に強く刻まれた。

 式典が終わり、王女とウィルは登場した門から王宮に戻り、民衆の前から姿を消した。扉が閉まるや否や、ウィルはアレクシアを抱き締め、
「王女様、あなたを僕にください。今すぐに欲しいのです。」
 と囁いた。民衆の熱気にあてられ、ウィルから初めて求められ、アレクシアの心は喜びに満たされた。
 王女はウィルの手を取ると王宮の回廊を足早に歩き出し、王女の部屋へ二人一緒に入った。王女の部屋の護衛を任されている騎士がそれを見て、戸惑いながら王女を止めた。
「·············お、王女様、あの───」
「邪魔しないでくれる?あなた死にたいの?」
 王女に睨まれた騎士はそれ以上はなにも言えず、入室する2人の背中を見送った。

 王女はその日、ウィルに処女を捧げた。王室が最も重んじる伝統は、「女性は夫となる男にのみ貞節を守り抜きその一生を過ごす。」ということだ。この伝統に逆らい、愛人を作った王女が過去にいたが、表沙汰となり、その王女は投獄され、最後は処刑された。
 王女アレクシアは、今日という日にウィルに処女を捧げ、一生彼に貞節を守り抜くと誓いを立てた。初めての行為があったかどうかは、王女の護衛の者らが部屋の外で声を聞いており、この行為が確認できた場合、国王に報告するのが絶対の義務となっていた。
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