70 / 121
私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
王女の企み
しおりを挟む
アレクシアは、ナタリーのことがとにかく気に入らなかった。善人ぶってあれこれ世話を焼いてくるのもイライラしたし、年増で大して綺麗でもないくせに、ウィルと夫婦生活を送り、ましてや、ただの人間の分際で、以前は大魔法使い専属の侍女だったという。
彼女は、身の程をわきまえない人間が大嫌いだ。
嫌がらせのつもりで、恥さらしの兄アランの専属侍女にしたが、根を上げることもなく、アランや侍従のギースと上手くやっているというのも、アレクシアにとっては腹立たしいことだった。
ウィルと深く関係した女など、目障りであるし、早く消したかったが、万が一、あの女の死によって自暴自棄になったウィルやジークリートに反乱でも起こされたら面倒だ。
イースに頼み、今ウィルは部屋から連れ出してもらっている。ウィルには知られない形で、ナタリーを苦しめてやろう。そう考えた王女は、部屋に2人の近衛兵を呼んだ。
◇
ナタリーは夜、自室で考え事をしていた。気になるのは、ケイリー含む、囚われている魔法使い達のこと、ウィルと王女のこと、そして、アッシュのことだった。
時間は刻一刻と過ぎていくのに、アッシュの行方を知る手掛かりは未だに見つけられていなかった。エステルの行方も分からない。
アッシュのことだから、人間達に捕まっているということはないだろう。別れたあの日から、アッシュのことを考えない日はなかった。こんな形で彼を探さなければならないのは不本意だったが、多くの魔法使い達の命がかかっているのだから、どんな条件を飲んででも、力を貸してもらうしかない。
ウィルのことを考えると、ナタリーは胸が痛くなった。もう2週間も会えていない。王女にひどいことをされてはいないだろうか、もしくは、美しい王女に心を奪われていないだろうか、と考え出すとキリがなかった。
いつもの笑顔で『シェリー大丈夫だよ。』と抱き締めてほしい、ナタリーが望むのはそれだけであった。
そろそろ寝ようとしていたところ、ナタリーの部屋がノックされた。
「王女様からのご伝言だ。侍女ナタリー、直ちにドアを開けろ。」
王女から!?ナタリーは身構えた。こんな夜更けに使いをやるなんて、余程のことだろう。
恐る恐るドアを開けると、大柄のいかにも屈強そうな近衛兵2人が、ドアの前に立っていた。
「はい、·······何でしょうか?」
近衛兵は、何も言わずにナタリーの部屋にズカズカと入ってきた。
「────·····何なんですか!?ちょっと!」
近衛兵の一人がナタリーを羽交い締めにし、ナタリーは身動きが取れなくなった。
「王女様からの命令だ。お前を好きにしていいと言われている。我々も無理強いはしたくないんだ。大人しく応じろ。」
ナタリーは耳を疑った。王女がナタリーに対してやけに大人しいと思っていたら、やはり仕掛けてきた。今からこの近衛兵達に、黙って辱めを受けろというのか。
「お、お願いです。王女様のご命令で逆らえないのでは?命令通りに動いたことにして、少ししたら帰っていただけませんか?私もそう見えるように演技しますから……」
いつも無表情の近衛兵が顔を見合わせ、にやついた表情でナタリーに言った。
「悪いな。我々も働き詰めで楽しみがないんだ。この機会は逃せない。」
一人がナタリーの服の襟元に手を掛けたかと思うと、思い切り下に力を入れ、来ていた寝巻きのボタンが弾け飛んだ。
「!!やめて───!!」
ナタリーが叫ぼうとすると、手で口を塞がれ、床に押し倒された。
思い切り後頭部を床にぶつけてしまい、ナタリーは痛みで呻いた。男の手が胸元に伸びてきた。
彼女は、身の程をわきまえない人間が大嫌いだ。
嫌がらせのつもりで、恥さらしの兄アランの専属侍女にしたが、根を上げることもなく、アランや侍従のギースと上手くやっているというのも、アレクシアにとっては腹立たしいことだった。
ウィルと深く関係した女など、目障りであるし、早く消したかったが、万が一、あの女の死によって自暴自棄になったウィルやジークリートに反乱でも起こされたら面倒だ。
イースに頼み、今ウィルは部屋から連れ出してもらっている。ウィルには知られない形で、ナタリーを苦しめてやろう。そう考えた王女は、部屋に2人の近衛兵を呼んだ。
◇
ナタリーは夜、自室で考え事をしていた。気になるのは、ケイリー含む、囚われている魔法使い達のこと、ウィルと王女のこと、そして、アッシュのことだった。
時間は刻一刻と過ぎていくのに、アッシュの行方を知る手掛かりは未だに見つけられていなかった。エステルの行方も分からない。
アッシュのことだから、人間達に捕まっているということはないだろう。別れたあの日から、アッシュのことを考えない日はなかった。こんな形で彼を探さなければならないのは不本意だったが、多くの魔法使い達の命がかかっているのだから、どんな条件を飲んででも、力を貸してもらうしかない。
ウィルのことを考えると、ナタリーは胸が痛くなった。もう2週間も会えていない。王女にひどいことをされてはいないだろうか、もしくは、美しい王女に心を奪われていないだろうか、と考え出すとキリがなかった。
いつもの笑顔で『シェリー大丈夫だよ。』と抱き締めてほしい、ナタリーが望むのはそれだけであった。
そろそろ寝ようとしていたところ、ナタリーの部屋がノックされた。
「王女様からのご伝言だ。侍女ナタリー、直ちにドアを開けろ。」
王女から!?ナタリーは身構えた。こんな夜更けに使いをやるなんて、余程のことだろう。
恐る恐るドアを開けると、大柄のいかにも屈強そうな近衛兵2人が、ドアの前に立っていた。
「はい、·······何でしょうか?」
近衛兵は、何も言わずにナタリーの部屋にズカズカと入ってきた。
「────·····何なんですか!?ちょっと!」
近衛兵の一人がナタリーを羽交い締めにし、ナタリーは身動きが取れなくなった。
「王女様からの命令だ。お前を好きにしていいと言われている。我々も無理強いはしたくないんだ。大人しく応じろ。」
ナタリーは耳を疑った。王女がナタリーに対してやけに大人しいと思っていたら、やはり仕掛けてきた。今からこの近衛兵達に、黙って辱めを受けろというのか。
「お、お願いです。王女様のご命令で逆らえないのでは?命令通りに動いたことにして、少ししたら帰っていただけませんか?私もそう見えるように演技しますから……」
いつも無表情の近衛兵が顔を見合わせ、にやついた表情でナタリーに言った。
「悪いな。我々も働き詰めで楽しみがないんだ。この機会は逃せない。」
一人がナタリーの服の襟元に手を掛けたかと思うと、思い切り下に力を入れ、来ていた寝巻きのボタンが弾け飛んだ。
「!!やめて───!!」
ナタリーが叫ぼうとすると、手で口を塞がれ、床に押し倒された。
思い切り後頭部を床にぶつけてしまい、ナタリーは痛みで呻いた。男の手が胸元に伸びてきた。
274
お気に入りに追加
2,244
あなたにおすすめの小説
【完結】不出来令嬢は王子に愛される
きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』
姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった────
◇
有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。
ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。
でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。
記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ!
貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。
でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!!
このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない!
何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない!
だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。
それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!!
それでも、今日も関係修復頑張ります!!
5/9から小説になろうでも掲載中
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる