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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
怒るギース
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「ギース!ギース起きて!!」
アラン王子が扉をドンドンと鳴らしている。
あれから離宮へ戻り、少し寝て体力を回復したナタリーとアラン王子は、早朝からギースの部屋に来ていた。
「······何事ですか?殿下·····こんな朝早くから───」
寝ぼけ眼のギースは、寝巻きのままドアから顔を覗かせた。
「急用なんだよ!作戦会議しないと!」
「はぁ?───一体何事で·····」
ギースが言い終わらないうちに、アラン王子はギースの部屋に勝手に入ってきた。
「これは秘密の作戦会議だ!他言無用だぞ!」
ナタリーは、ギースに事の成り行きを話し始めた────。
「つまり、こうゆうことですか?初日は王女の会話を盗み聞きし、昨夜、殿下とナタリーは、『赤い塔』へ忍び込み、ナタリーの魔法使い仲間に会って、助け出すことを約束したと·····」
「そうだよ!」
アラン王子が激しく頷いた。
「───あなた達はなんということをするのですか!!」
アラン王子とナタリーは、ギースの声にビクッと体を震わせた。
「夜中に離宮を抜け出し、よりにもよって『赤い塔』に忍び込むなど····!言語道断です!ナタリー、君は侍女じゃないのか!?スパイの真似事などやめなさい!」
ナタリーは「申し訳ありませんでした。」と謝りはしたが、すぐさまギースに言い返した。
「しかし、私には必要なことなのです!仲間が殺されるのを、みすみす黙って見ていることはできません!私の夫も王女に人質に取られているのです。」
ギースは、ナタリーの頑固さにため息をついた。
「ナタリー、気持ちは分かるが、アレクシア王女は恐ろしい方だ。私は今までに、王女の機嫌を損ね、残酷に殺される罪もない人々を大勢見てきた。王女を止められる人間はこの国にいないんだよ。君はいいじゃないか。侍女の役職が与えられ、無事に生きている。君の夫は、王配(王女の夫)となるんだろう?それなら、ナタリー、君も悪いようにはされないさ。誰かの妻だったこと、魔法使いと仲間だったことは忘れて、ここで生きるんだよ。」
それを聞いたアラン王子は、ギースの方耳を掴み怒り出した。
「何だと!?このタヌキジジイめ!お前なら分かってくれると思ったのに!人の心がないのか?話した僕が馬鹿だった!」
「で、殿下!!おやめください!」
ギャーギャーと掴み合いをしている王子とギースを黙らせるように、ナタリーは大きな声を出した。
「私は本気です!!」
2人は掴み合いをやめ、驚いたようにナタリーを見た。
「すべてに蓋をして生きることは、私にとっては死ぬよりも辛いことなのです。一人でもやります。お二人は何も聞かなかったことにしてください。」
ナタリーの切羽詰まったような、覚悟を決めた表情を見て、ギースはやれやれと頭を掻いた。
「·········言っておくが、殿下を危険にさらすようなことだけはするな。あくまで手助けをするだけだ。深入りはしない。」
それを聞いたナタリーの表情が、パアッと明るくなった。
「ギース様。本当にありがとうございます。」
ギースはフンッと言い、椅子にどかっと腰かけた。
「しかし、要は魔法使いが魔法を使えない状態が問題なんだろう?その首輪とやらで制限されているのか。」
「はい。首輪の発動条件も、何もかもが不明です。」
「うーん·····魔法について、詳しい者と王女の内情を知る者がいないと話にならないな。」
その時、ナタリーには1人頭に浮かぶ人物がいた。
◇
ジークリートは、一日を終え、そろそろ寝ようとベッドの上に腰かけていた。この王宮に連れて来られてから、仲間達が捕らえられ、人質にされている状況をジークリート1人ではどうにもできなかった。
王女の手下となった憎きイースが常に監視しているため、あれこれ動くこともできない。ウィルやナタリーまで巻き込むことになってしまい、ジークリートは、後悔の念と何もできない悔しさで、辛い日々を送っていた。
ジークリートが部屋の明かりを消そうとしたところ、ドアの下の隙間から、何か白い紙が投げ入れられた。
すぐさま開いて中を確認した。中には、王宮の地図に赤い星印がついており、
『作戦会議。真夜中集合。Nより』
と書かれていた。
アラン王子が扉をドンドンと鳴らしている。
あれから離宮へ戻り、少し寝て体力を回復したナタリーとアラン王子は、早朝からギースの部屋に来ていた。
「······何事ですか?殿下·····こんな朝早くから───」
寝ぼけ眼のギースは、寝巻きのままドアから顔を覗かせた。
「急用なんだよ!作戦会議しないと!」
「はぁ?───一体何事で·····」
ギースが言い終わらないうちに、アラン王子はギースの部屋に勝手に入ってきた。
「これは秘密の作戦会議だ!他言無用だぞ!」
ナタリーは、ギースに事の成り行きを話し始めた────。
「つまり、こうゆうことですか?初日は王女の会話を盗み聞きし、昨夜、殿下とナタリーは、『赤い塔』へ忍び込み、ナタリーの魔法使い仲間に会って、助け出すことを約束したと·····」
「そうだよ!」
アラン王子が激しく頷いた。
「───あなた達はなんということをするのですか!!」
アラン王子とナタリーは、ギースの声にビクッと体を震わせた。
「夜中に離宮を抜け出し、よりにもよって『赤い塔』に忍び込むなど····!言語道断です!ナタリー、君は侍女じゃないのか!?スパイの真似事などやめなさい!」
ナタリーは「申し訳ありませんでした。」と謝りはしたが、すぐさまギースに言い返した。
「しかし、私には必要なことなのです!仲間が殺されるのを、みすみす黙って見ていることはできません!私の夫も王女に人質に取られているのです。」
ギースは、ナタリーの頑固さにため息をついた。
「ナタリー、気持ちは分かるが、アレクシア王女は恐ろしい方だ。私は今までに、王女の機嫌を損ね、残酷に殺される罪もない人々を大勢見てきた。王女を止められる人間はこの国にいないんだよ。君はいいじゃないか。侍女の役職が与えられ、無事に生きている。君の夫は、王配(王女の夫)となるんだろう?それなら、ナタリー、君も悪いようにはされないさ。誰かの妻だったこと、魔法使いと仲間だったことは忘れて、ここで生きるんだよ。」
それを聞いたアラン王子は、ギースの方耳を掴み怒り出した。
「何だと!?このタヌキジジイめ!お前なら分かってくれると思ったのに!人の心がないのか?話した僕が馬鹿だった!」
「で、殿下!!おやめください!」
ギャーギャーと掴み合いをしている王子とギースを黙らせるように、ナタリーは大きな声を出した。
「私は本気です!!」
2人は掴み合いをやめ、驚いたようにナタリーを見た。
「すべてに蓋をして生きることは、私にとっては死ぬよりも辛いことなのです。一人でもやります。お二人は何も聞かなかったことにしてください。」
ナタリーの切羽詰まったような、覚悟を決めた表情を見て、ギースはやれやれと頭を掻いた。
「·········言っておくが、殿下を危険にさらすようなことだけはするな。あくまで手助けをするだけだ。深入りはしない。」
それを聞いたナタリーの表情が、パアッと明るくなった。
「ギース様。本当にありがとうございます。」
ギースはフンッと言い、椅子にどかっと腰かけた。
「しかし、要は魔法使いが魔法を使えない状態が問題なんだろう?その首輪とやらで制限されているのか。」
「はい。首輪の発動条件も、何もかもが不明です。」
「うーん·····魔法について、詳しい者と王女の内情を知る者がいないと話にならないな。」
その時、ナタリーには1人頭に浮かぶ人物がいた。
◇
ジークリートは、一日を終え、そろそろ寝ようとベッドの上に腰かけていた。この王宮に連れて来られてから、仲間達が捕らえられ、人質にされている状況をジークリート1人ではどうにもできなかった。
王女の手下となった憎きイースが常に監視しているため、あれこれ動くこともできない。ウィルやナタリーまで巻き込むことになってしまい、ジークリートは、後悔の念と何もできない悔しさで、辛い日々を送っていた。
ジークリートが部屋の明かりを消そうとしたところ、ドアの下の隙間から、何か白い紙が投げ入れられた。
すぐさま開いて中を確認した。中には、王宮の地図に赤い星印がついており、
『作戦会議。真夜中集合。Nより』
と書かれていた。
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