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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~

王宮

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 ナタリー(シェリー)が目を開けると、目の前には、豪華絢爛にそびえ立つ王宮が広がっていた。庭園や門作り、全てに美しい装飾が施されており、広大な敷地の中には、王宮の中に離宮がいくつもあった。

 魔法搭も十分広かったが、どちらかというとシンプルな作りで、権威を誇示するためというよりは、魔法使い達が集まる場所であり、実用性重視に作られた場所だった。
 ナタリーは王宮に目を奪われたが、同時に、人間の欲深さの塊がこの豪華絢爛な王宮を現しているような気がして、一抹の不安を覚えた。

「いつ体感しても、この移動魔法は素晴らしいわ。私達人間が、数日、数週間かけて移動するところを、あなた達は一瞬で目的地に到達することができる。」
 王女はうっとりとした表情をした。
「イース、あれを」
 王女がイースに指示すると、イースは銀の首輪のようなものを、ウィル(レイ)の首に嵌めようとした。
「───これは?何の首輪だ?」
 ウィルは警戒し、イースの手首を掴んだ。
「ウィル、面倒を起こすな。俺もジークリートも、その他ここにいる魔法使いが皆着けている首輪だ。万が一、魔法を使い逃げ出そうとしたり、人間を攻撃しようとしたりすれば、魔力がすべて奪われる。まぁ、要するに命はないってことだな。」
 ここで抵抗することは得策ではなかった為、ウィルは大人しく首輪を着けた。
「その女は?着けた方がいいの?」
 王女の問いに、ジークリートが答えた。
「いえ、ナタリーはただの人間ですので、装着は不要かと。」
「····ふぅん、ただの人間が、図々しくも優れた魔法使いに囲まれて生活してたのね。まぁいいわ。貴重な代物だし、その子には着けなくていい。」
 王女は、蔑むような目でナタリーを見ると、行きましょうと言ってウィルの腕を取り歩きだした。ナタリーは、ムッとしながらジークリートやイースの後ろから付いていこうとした。
 すると、王女はナタリーを振り返り、言い放った。
「あなたは来なくていい。私には必要ないもの。ギース!この子をアランお兄様のところへ連れていって。あなたは、アランお兄様の侍女がお似合い。」
 いつの間にか、ギースという年配の侍従が側に来ており、ナタリーを離宮へ促した。

 王女は意味ありげな笑みを浮かべていた。

 ウィルが心配そうにナタリーの後ろ姿を目で追っていたが、すぐにナタリーは見えなくなってしまった。

 ◇

 ギースと呼ばれた年配の従者に連れられ、ナタリーは離宮の回廊を歩いていた。
 ギースは白ひげを生やした60代くらいの男性で、おしゃべりなのか、ずっと何か喋り続けていた。
「お前には、第一王子、アラン様の侍女として仕えてもらう。」
「だ、第一王子!?」
 第一王子といえば、第一王位継承者ではないか。そんな人物の侍女を任せられるなど、どう考えてもおかしい。それに、なぜそんな位の高い人が、離宮に追いやられているのか理解できなかった。
「色々と分からないって顔してるな。まぁ、アラン様に会えばすべて分かる。」
「はぁ····あの、ちなみに、この王宮には魔法使いがたくさん連れてこられてるんですか?」
「ナタリー、何も知らずに生活していた方がいいこともあるぞ。私も詳しくは知らないんだがな。建国記念日での事件以降、魔法使いを王女様が時々連れて来ているのは確かだ。」
 そして、ギースは少し声を落とし、ナタリーに耳打ちした。
「ここだけの話だがな、王女様は、魔法使いの『血』を王族に入れようとしてるって噂だ。」
「──血?ですか?」
「昔から、王女様は魔法使いを崇拝しててな。魔法使い排除派の過激派の連中からは、危険人物と見なされてる。それで、このタイミングで王室と魔法使いを交わらせて、王室出身の魔法使いを誕生させようとしてるんだよ。」
「───それって、要するに、魔法使いの結婚相手を探してるってことですか?」
「おそらくな。さっき男前の魔法使いが何人かいただろ?その中の誰かと結婚するんじゃないか?」

 ナタリーは目の前が真っ暗になった。
 (絶対にウィルを狙ってるんだ·····!王女はウィルを気に入ってたもの!)
 ナタリーは現状何もできない自分が歯がゆくなったが、まずは、自分が生き伸びなければならない。ウィルに心配をかけないためにも、何があっても頑張ろうと心に決めた。

「着いたぞ。ここがアラン様の部屋だ。ちなみに、アラン様の侍従や侍女は、今までに7人変わってる。最長記録は2週間だな。まぁ頑張れ。」
 (きっととんでもない人物に違いないわ。でも、きっとやれる。アッシュの元侍女だもん。王女には目の敵にされてはいるけど、簡単に追い出されるわけにはいかない。)
 ナタリーは深呼吸して気持ちを整え、第一王子アランの部屋のドアをノックした。
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