侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

決心

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 ナタリーは、アッシュの部屋に来ていた。

 例の事件の後、アッシュは連日、上級魔法使い達との会議へ赴き、また人間界からの抗議等の対応で、さすがに疲弊の色が見てとれた。

 また、今まで人間の平和の為に、不本意ながらも魔法界のトップとして居続けたアッシュが、人間達の憎悪を一身に集めることになった。そんな彼の心の内は、ナタリーには図り知ることができなかった。

 アッシュはベッドに座り、何かを考えているのか、上を向いて天井を見上げていた。

 ナタリーは、自分には何もできないと分かってはいたが、日に日に追い詰められていくアッシュの様子を見て、放っておくことができなかった。

「アッシュ。疲れてるんじゃない?そろそろ寝たら?」

 アッシュは「ああ」と呟き、優しい声で「ナタリー」と声をかけた。

 ナタリーは、何か言われなくても、アッシュが自分に何を求めているのか分かっていた。

 ベッドの上で、アッシュの隣にナタリーが腰を下ろすと、アッシュはナタリーの膝に頭を乗せ、目を閉じたかと思うとすぐに眠ってしまった。

 ここ連日、アッシュは眠れない日々が続くようだったが、ナタリーと肌が触れあえば、安心して眠れるようだった。ナタリーの肩に頭を乗せたまま眠ったり、ベッドに入ったアッシュの手を握り、眠りにつくまで一緒にいることもあった。

 お互い何も話さない、静かな時間だったが、ナタリーはこの時だけは、アッシュの心が分かるような気がした。普段強気だった彼の弱い一面を見るのは、ひどく切なかった。

 ◇

 そんな日々の中、ジークリートが来客を連れ、アッシュの部屋を訪ねた。

 ナタリーの母親、アネッサだった。

 アネッサは、どうしてもアッシュに話したいことがあると言い、ナタリーには内緒で、ジークリートを通じて魔法塔にやってきたのだった。

「この度のこと、新聞で知りました。あなたがそのような企てを起こす方でないことは分かっています。ただ、心配しておりました。」

「心配をかけてすまないな。しかし、ナタリーではなく俺に話というのは?」

 アッシュは不思議そうにアネッサに問いかけた。

 アネッサは、ナタリーの父親のこと、アネッサの親友アリスについて、全てをアッシュに打ち明けた。

 アッシュは、受け止めがたい真実を聞き、アネッサが帰った後もしばらく呆然としていた。

 そして、アッシュは決心した。一刻も早く、会いに行かなければならない者がいた。

 ◇

 ウィル・アンダーソンが自室で仕事をしていると、突然、移動魔法で飛んできた大魔法使いアッシュが現れた。ウィルはひどく驚いたが、とうとうこのタイミングで、アッシュが自分のことを消しにきたのかと本気で思った。

「そう警戒するな。今日はお前に話があって来た。」

 アッシュがそう言うと、ウィルは、

「話とは····?」と怪訝な表情で聞いた。

「先に言っておくが、俺はお前が大嫌いだ。本気で消したいと今も思っている。」

「はぁ····」とウィルが間の抜けた声を出すと、アッシュはチッと舌打ちをして話し始めた。

「本当に不本意だがな。お前じゃなければできない頼みだ。失敗したら、今度こそ命はないと思え。」

 ウィルは、ゴクリと喉を鳴らし、アッシュの言葉を待った。

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