53 / 121
私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~
決心
しおりを挟む
ナタリーは、アッシュの部屋に来ていた。
例の事件の後、アッシュは連日、上級魔法使い達との会議へ赴き、また人間界からの抗議等の対応で、さすがに疲弊の色が見てとれた。
また、今まで人間の平和の為に、不本意ながらも魔法界のトップとして居続けたアッシュが、人間達の憎悪を一身に集めることになった。そんな彼の心の内は、ナタリーには図り知ることができなかった。
アッシュはベッドに座り、何かを考えているのか、上を向いて天井を見上げていた。
ナタリーは、自分には何もできないと分かってはいたが、日に日に追い詰められていくアッシュの様子を見て、放っておくことができなかった。
「アッシュ。疲れてるんじゃない?そろそろ寝たら?」
アッシュは「ああ」と呟き、優しい声で「ナタリー」と声をかけた。
ナタリーは、何か言われなくても、アッシュが自分に何を求めているのか分かっていた。
ベッドの上で、アッシュの隣にナタリーが腰を下ろすと、アッシュはナタリーの膝に頭を乗せ、目を閉じたかと思うとすぐに眠ってしまった。
ここ連日、アッシュは眠れない日々が続くようだったが、ナタリーと肌が触れあえば、安心して眠れるようだった。ナタリーの肩に頭を乗せたまま眠ったり、ベッドに入ったアッシュの手を握り、眠りにつくまで一緒にいることもあった。
お互い何も話さない、静かな時間だったが、ナタリーはこの時だけは、アッシュの心が分かるような気がした。普段強気だった彼の弱い一面を見るのは、ひどく切なかった。
◇
そんな日々の中、ジークリートが来客を連れ、アッシュの部屋を訪ねた。
ナタリーの母親、アネッサだった。
アネッサは、どうしてもアッシュに話したいことがあると言い、ナタリーには内緒で、ジークリートを通じて魔法塔にやってきたのだった。
「この度のこと、新聞で知りました。あなたがそのような企てを起こす方でないことは分かっています。ただ、心配しておりました。」
「心配をかけてすまないな。しかし、ナタリーではなく俺に話というのは?」
アッシュは不思議そうにアネッサに問いかけた。
アネッサは、ナタリーの父親のこと、アネッサの親友アリスについて、全てをアッシュに打ち明けた。
アッシュは、受け止めがたい真実を聞き、アネッサが帰った後もしばらく呆然としていた。
そして、アッシュは決心した。一刻も早く、会いに行かなければならない者がいた。
◇
ウィル・アンダーソンが自室で仕事をしていると、突然、移動魔法で飛んできた大魔法使いアッシュが現れた。ウィルはひどく驚いたが、とうとうこのタイミングで、アッシュが自分のことを消しにきたのかと本気で思った。
「そう警戒するな。今日はお前に話があって来た。」
アッシュがそう言うと、ウィルは、
「話とは····?」と怪訝な表情で聞いた。
「先に言っておくが、俺はお前が大嫌いだ。本気で消したいと今も思っている。」
「はぁ····」とウィルが間の抜けた声を出すと、アッシュはチッと舌打ちをして話し始めた。
「本当に不本意だがな。お前じゃなければできない頼みだ。失敗したら、今度こそ命はないと思え。」
ウィルは、ゴクリと喉を鳴らし、アッシュの言葉を待った。
例の事件の後、アッシュは連日、上級魔法使い達との会議へ赴き、また人間界からの抗議等の対応で、さすがに疲弊の色が見てとれた。
また、今まで人間の平和の為に、不本意ながらも魔法界のトップとして居続けたアッシュが、人間達の憎悪を一身に集めることになった。そんな彼の心の内は、ナタリーには図り知ることができなかった。
アッシュはベッドに座り、何かを考えているのか、上を向いて天井を見上げていた。
ナタリーは、自分には何もできないと分かってはいたが、日に日に追い詰められていくアッシュの様子を見て、放っておくことができなかった。
「アッシュ。疲れてるんじゃない?そろそろ寝たら?」
アッシュは「ああ」と呟き、優しい声で「ナタリー」と声をかけた。
ナタリーは、何か言われなくても、アッシュが自分に何を求めているのか分かっていた。
ベッドの上で、アッシュの隣にナタリーが腰を下ろすと、アッシュはナタリーの膝に頭を乗せ、目を閉じたかと思うとすぐに眠ってしまった。
ここ連日、アッシュは眠れない日々が続くようだったが、ナタリーと肌が触れあえば、安心して眠れるようだった。ナタリーの肩に頭を乗せたまま眠ったり、ベッドに入ったアッシュの手を握り、眠りにつくまで一緒にいることもあった。
お互い何も話さない、静かな時間だったが、ナタリーはこの時だけは、アッシュの心が分かるような気がした。普段強気だった彼の弱い一面を見るのは、ひどく切なかった。
◇
そんな日々の中、ジークリートが来客を連れ、アッシュの部屋を訪ねた。
ナタリーの母親、アネッサだった。
アネッサは、どうしてもアッシュに話したいことがあると言い、ナタリーには内緒で、ジークリートを通じて魔法塔にやってきたのだった。
「この度のこと、新聞で知りました。あなたがそのような企てを起こす方でないことは分かっています。ただ、心配しておりました。」
「心配をかけてすまないな。しかし、ナタリーではなく俺に話というのは?」
アッシュは不思議そうにアネッサに問いかけた。
アネッサは、ナタリーの父親のこと、アネッサの親友アリスについて、全てをアッシュに打ち明けた。
アッシュは、受け止めがたい真実を聞き、アネッサが帰った後もしばらく呆然としていた。
そして、アッシュは決心した。一刻も早く、会いに行かなければならない者がいた。
◇
ウィル・アンダーソンが自室で仕事をしていると、突然、移動魔法で飛んできた大魔法使いアッシュが現れた。ウィルはひどく驚いたが、とうとうこのタイミングで、アッシュが自分のことを消しにきたのかと本気で思った。
「そう警戒するな。今日はお前に話があって来た。」
アッシュがそう言うと、ウィルは、
「話とは····?」と怪訝な表情で聞いた。
「先に言っておくが、俺はお前が大嫌いだ。本気で消したいと今も思っている。」
「はぁ····」とウィルが間の抜けた声を出すと、アッシュはチッと舌打ちをして話し始めた。
「本当に不本意だがな。お前じゃなければできない頼みだ。失敗したら、今度こそ命はないと思え。」
ウィルは、ゴクリと喉を鳴らし、アッシュの言葉を待った。
718
お気に入りに追加
2,226
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる