上 下
39 / 121
私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

アリス

しおりを挟む
 一つ屋根の下で暮らすようになったカーターに、アリスは次第に惹かれていった。

 カーターは、アリスがこれまで見てきたどの、男性とも違った。知的で、優雅で、何を考えているか分からないところがミステリアスだった。カーターに見つめられると、アリスは何も考えられなくなってしまうのだ。

 ある日、アリスが親友のアネッサと会うため、家の前で待ち合わせしてた時のことである。

 ちょうど外出しようとしていたカーターに2人は出くわした。

「あら、カーターさんお出かけですか?」

「ああ、ちょっと買い出しに。」

 そのやり取りを見ていたアネッサは、この異質で美しい男から目が離せなくなっていた。カーターが、アネッサを見て声をかけた。

「アリスのお友達かな?どうも、訳あって、アリスのお宅に居候させてもらってる、カーターです。」

「はい····私はアネッサです····」
 カーターが微笑むと、アネッサは顔を赤くし、目をそらした。アリスは嫌な予感がしていた。この反応は、アネッサがカーターに一目惚れしたようにしか見えなかった。

 その日2人はカーターと別れ、何事もない日常が続くかと思われた。

 1週間後のことである。

 アネッサから、話があると呼び出され、アリスはアネッサに会いに行った。アネッサは、真剣な面持ちで話始めた。

「私、カーターと付き合ってる。」
 アリスは、聞き間違いかと思い、「え?」と聞き返した。

「私の聞き間違えよね?カーターさんと付き合ってるって聞こえたけど。」

「聞き間違えじゃない。もうキスもしたし、それ以上のこともした。アリスは一緒に住んでるし、カーターと話す機会も多いと思う。でも、私が付き合ってるから、それを言っておこうと思って。」

 アリスはショックを受けた。アネッサとカーターが会ってから1週間しか経っていないのに、付き合っていると?アリスには何もしてくれないのに。

 要するに、アネッサはアリスを牽制しているのだろう。好きな人と親友を一度に失ったような気持ちになり、アリスは家に帰った。

 家に帰り、部屋にカーターがいた為、アリスはたまらずカーターに会いに行ってしまった。

「カーターさん、アネッサから聞いたんですけど。アネッサと付き合ってるんですか?」
 余裕のないアリスは、直球で質問してしまった。

 カーターは顔色を変えず、優しい笑みを浮かべてこう言った。

「ああ、アリスのお友達のことだね?アリスは、それを聞いてどう思った?」

 アリスが質問しているのに、付き合っているのかという問いには答えず、逆にカーターから質問されてしまった。アリスは、自分の気持ちを隠すことも、虚勢も見栄もどうでもよくなってしまった。

「どうしてアネッサと····?私はカーターさんのことが好きなのに、すごく悔しいし、悲しいです。」

 アリスが涙を流しながら本音を言うと、カーターはアリスに近づき、頭を優しく撫でながら言った。

「アリスは本当にかわいいね。それなら、僕のものになる?全てを捨てて、僕と一緒に生きるんだ。」

 カーターの目が、妖しく光っていた。

 アリスは全てをカーターに委ねてみたくなった。私はこの人のものだと思った。両親のことも、親友のことも全てがアリスにとって些細なことに思えた。


 その日の夜、アリスは失踪した。同時に、アリスの家に居候していた男も失踪した為、2人は駆け落ちをしたんだろうと町では噂になった。

 3年後、ピエニ町の教会の前に、世にも珍しい白銀の髪の赤子が捨てられた。

 そして、翌日の朝、ピエニ町の近くの川で、溺死しているアリスの遺体が発見された。

 アリスは3年ぶりに、故郷への帰還を果たしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

【完結】不出来令嬢は王子に愛される

きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』 姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった──── ◇ 有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。 ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...