侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

すれ違いの代償

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 ナタリーは混乱していた。

 アッシュが、私を愛してた?

「なぜ、今さらそんなことを言うの?」

 アッシュがナタリーを愛していたならば、3年前のあの時、2人は想い合っていたのか。想い合っていたのに、すれ違い、離れた。

 だが、すれ違わなければ、シェリーとレイとして過ごしたあの幸せな日々はなかったことになる。

 ナタリーの心はウィルのものだ。ずっと愛してると言ってくれた。家に帰ったら、結婚をする約束だった。

「1人になりたい。」

 ナタリーがそう言うと、アッシュはしばらくナタリーを見つめ、静かに部屋を出ていった。

 (ウィルに、レイに会いたい····)

 ナタリーが今願うのは、ただそれだけだった。

 ◇

 ウィル・アンダーソンは、自宅に軟禁されていた。

 命があることが信じられないだけでなく、魔法界に戻ってからは、周囲のウィルを見る目が180度変わっていた。

 なぜか、ウィルは既に上級魔法使いとなっており、処遇を待っている身ではあるが、ほぼおとがめなしということは決定だ、と父親から言われた。

 アッシュ以外の参加者には、ウィルを排除する理由がなかったからだ。

 扉がノックされ、ウィルの父親が入ってきた。

「先程決まったが、お前はやはり処分はなしとなった。これからは、お前は上級魔法使いだ。よくやった····!!」

 ウィルは冷ややかな目で父親を見た。

 何がよくやったというのだ。ウィルは何もしていない。自分の息子が、水属性貴族の頂点に立てたことが誇らしくて仕方がないのだろう。

 ウィルは、ナタリーのことを想うと胸が苦しくなった。

 数日前まで、テントで一夜を共にし、魚釣りをして遊んでいた時が嘘のようだった。

 ナタリーと2人で、一緒に過ごしたあの家に戻りたかった。

 悲痛そうなウィルの顔を見て、ウィルの父親が言った。

「あの女のことは早く忘れろ。大魔法使いのお気に入りなど、二度と関わってはならん。それより、早速だが縁談の話がある。お前は上級魔法使いになったのだし、光属性の令嬢と婚姻し、繋がりを深めなければ。美人ばかりだぞ。これを見てみろ····」

 父親が言い終わらないうちに、ウィルは父親が持っていた縁談の書類を奪い取り、破り捨てた。

「あんたの顔見てると反吐が出そうだ。縁談だと?ふざけるな。兄上にさせればいい。」

 ウィルはそう吐き捨てた。

「なんだと····!?!?魔力を今まで隠し、我々を欺いていたな····!!お前はどうしてそうなんだ!?」

 ウィルの父親は激怒し、部屋から勢いよく出ていった。

 くだらない。くだらないやつばかりだ。

 ナタリーが今どこでどうしているのか、アッシュにひどいことをされていないか、ウィルは考えるだけで頭がおかしくなりそうだった。
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