侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

白い結婚

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 ひとしきり泣いた後、ナタリーはアッシュに言った。

「ごめんなさい····仕事は、明日からでもいい?」

 アッシュは、少し驚いたような顔をして

「仕事?侍女の仕事のことか?もうやらなくていい。」

「·····?では、私はここで何をすればいいの?」

「今は何も心配するな。ゆっくりしていろ。魔法塔の敷地内だったら、好きに動いて構わない。」

 何もしなくていいとは、どういうことだろうか。ではなぜナタリーを3年もかけて連れ戻したのか。アッシュが何を考えているか分からなかった。

 その時、ナタリーははっとした。

 アッシュは、エステルと婚姻したはずだ。

「あれからどれくらい経ったの?アッシュ、あなた聖女様と婚姻したのでは?」

「ああ、今朝婚姻した。今は同日の夜だ。」

 まるで、『今朝の朝食はスープが出た』とでも言うような、何の感情も入っていない言い方に、ナタリーは違和感を覚えた。

「今朝婚姻したのなら、こんなところにいていいの?」

 ナタリーが問いかけると、

「ああ、問題ない」

 とアッシュは即答した。

 ナタリーは、初夜なのに、新婦のところに行かなくていいのかという意味で聞いたのだが、意味が伝わらなかったのだろうか。

「今日はその···初夜でしょう?準備があるのでは?」

 ナタリーが言いにくそうに言うと、アッシュは
「ああ····」と今思い出したかのような声を出した。

「この婚姻は、聖女との取引だった。必要だったから、取引を受けたまでだ。『神の前で婚姻の誓いをする』ことが聖女の条件だった。婚姻後に、一緒に過ごすことや、男女の営みをすることは条件にはない。」

 ナタリーは、この人は何を言ってるんだ?と理解できずにいた。

「これからも、必要のないところで俺から聖女に触れることはない。公の場では、一緒にいなければならない場合もあるだろうが、それ以外は会いに行く必要はないだろう。」

 アッシュの言葉を聞き、そもそもの疑問をナタリーはぶつけた。

「····でも、アッシュと聖女様は前世の恋人でしょう?3年前、魔力の供給も聖女様とされてたはず。恋人同士だったのでは?」

 アッシュはため息をついた。

「そこを勘違いさせたのが俺の失敗だったな。聖女はナタリーに何か言ったのかも知れないが、俺は聖女のことをどうとも思っていない。」

「聖女は、俺の前世の『大河』に固執している。前世の記憶があっても、俺と『大河』は別人だ。大河が前世で彼女を愛していたとしても、俺はエステルを愛してない。」

 ナタリーは、その話を聞き呆然としてしまった。すべては、ナタリーの勘違いだったということか?

「でも、あの時、その。。。私としていたようなこと、つまり『口付け』を、聖女様としてたんじゃないの?」

 アッシュは、気まずそうに顔を背けながら言った。

「····あれは、俺がしたかったからしてただけだ。魔力の供給は、手を触れるだけで行える。」

「したかったからしてた····?どうして?私のこと、昔から嫌ってたじゃない。」

 ナタリーは、アッシュの本当の気持ちが知りたかった。

「嫌ってたら、ここに連れてきてない。」

 そういうと、アッシュは少し間を置いて、ナタリーの目を見た。

 普段の傍若無人な態度とは打って変わって、少し緊張しているように見えた。

「一緒に過ごすようになって、気づいたんだ。ナタリー、お前を愛してる。」
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