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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~
アッシュの影
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それから、レイとシェリーはいつもと変わらない日常を過ごした。
レイに告白された日から、シェリーはレイのことを意識し始めていた。
レイは、シェリーから見ても、生涯を共にする夫として完璧だった。
いつも明るくて優しいし、頭が良くて器用だ。おまけに家事も料理もできて、若くて美しい。
何より、シェリーを命懸けで逃がしてくれた。
当時は、自分が逃げることで大事になることはないと思っていた。
だが、逃走から1年経ったある日、フィガロの街で、魔法使いが使役したであろう、鳥の使い魔にレイが気づいた。
すぐにその場を離れたから良かったものの、1年経ってもまだ、レイとシェリーは捜索されていることを知った。
きっと、レイは、シェリーが思っていたよりずっと重いリスクを背負って、シェリーと逃げてくれたのだ。
レイと結婚し、生涯仲良く暮らすことは、シェリーにとってもすごく憧れるものであった。
しかし一方で、シェリーの心の中には、アッシュが存在し続けていた。
子どもの時から、迷惑をかけられ、振り回され、ひどいことを言われてきた。口が悪くて、いつも偉そうな男が、ナタリーは大嫌いで大好きだった。
夕食を一緒に取らないというと拗ねたり、朝はナタリーが起こしに来ないと絶対にベッドから出なかった。
時折、ナタリーにだけ見せる、はにかんだような表情、子どもの頃、一緒に寝ていたときのかわいらしい寝顔、キスをしたときの熱を帯びたような目や体温、全てを毎晩思い出すのだった。
嫌いであれば、セントラルを去ることはなかった。大好きだったから去ったのだ。側にいることが、辛くなってしまった。
アッシュのことは、きっとこの先も忘れることはできないんだろう。ナタリーにとって、それほど強烈な存在だった。
そんな状態のまま、シェリーとしてレイと夫婦になることは、レイに対して誠意がない気がして、簡単には決めることができなかった。
◇
ある日、シェリーは花を店に卸しにやって来ていた。その時、地面に落ちていた新聞に目がいった。
新聞には、一部分だけ魔法界の特集が組まれているコーナーがあり、そこに書いてあった内容を見てしまった。
『世紀の大魔法使い、国の危機を救った聖女と婚姻か』
と書かれていた。
シェリーは自分でも意外なほどにショックを受け、しばらく記事から目を離すことができなかった。
しかし、冷静に考えると当たり前の話である。
2人が恋人同士になることは遅かれ早かれ決まっていたことだし、むしろ3年もかかったことが意外だ。
シェリーとレイには関係がないことだと思ったが、念のため新聞を拾い、家に帰ってレイに見せた。
レイは、真剣な表情でしばらく考え込んでいた。意外な反応に、シェリーは不安になった。
「レイ、アッシュと聖女様の結婚が、私達に何か関係があるの?」
「····うーん、なんか違和感があって。」
「違和感?」
「アッシュと聖女が恋人同士だったとしても、このタイミングで婚姻するメリットって何かなって。アッシュはあの性格だろ?めんどくさいこととか、派閥や権力争いは嫌いなはず。聖女は、教皇側の人間だから、婚姻なんかしたら、貴族を敵に回すことになる。」
「考えすぎじゃない?2人の意思で結婚するのかも。」
シェリーがそういうと、レイは
「··だといいんだけど。」
と腑に落ちない様子であった。
結婚式は、3日後と書かれていた。
レイに告白された日から、シェリーはレイのことを意識し始めていた。
レイは、シェリーから見ても、生涯を共にする夫として完璧だった。
いつも明るくて優しいし、頭が良くて器用だ。おまけに家事も料理もできて、若くて美しい。
何より、シェリーを命懸けで逃がしてくれた。
当時は、自分が逃げることで大事になることはないと思っていた。
だが、逃走から1年経ったある日、フィガロの街で、魔法使いが使役したであろう、鳥の使い魔にレイが気づいた。
すぐにその場を離れたから良かったものの、1年経ってもまだ、レイとシェリーは捜索されていることを知った。
きっと、レイは、シェリーが思っていたよりずっと重いリスクを背負って、シェリーと逃げてくれたのだ。
レイと結婚し、生涯仲良く暮らすことは、シェリーにとってもすごく憧れるものであった。
しかし一方で、シェリーの心の中には、アッシュが存在し続けていた。
子どもの時から、迷惑をかけられ、振り回され、ひどいことを言われてきた。口が悪くて、いつも偉そうな男が、ナタリーは大嫌いで大好きだった。
夕食を一緒に取らないというと拗ねたり、朝はナタリーが起こしに来ないと絶対にベッドから出なかった。
時折、ナタリーにだけ見せる、はにかんだような表情、子どもの頃、一緒に寝ていたときのかわいらしい寝顔、キスをしたときの熱を帯びたような目や体温、全てを毎晩思い出すのだった。
嫌いであれば、セントラルを去ることはなかった。大好きだったから去ったのだ。側にいることが、辛くなってしまった。
アッシュのことは、きっとこの先も忘れることはできないんだろう。ナタリーにとって、それほど強烈な存在だった。
そんな状態のまま、シェリーとしてレイと夫婦になることは、レイに対して誠意がない気がして、簡単には決めることができなかった。
◇
ある日、シェリーは花を店に卸しにやって来ていた。その時、地面に落ちていた新聞に目がいった。
新聞には、一部分だけ魔法界の特集が組まれているコーナーがあり、そこに書いてあった内容を見てしまった。
『世紀の大魔法使い、国の危機を救った聖女と婚姻か』
と書かれていた。
シェリーは自分でも意外なほどにショックを受け、しばらく記事から目を離すことができなかった。
しかし、冷静に考えると当たり前の話である。
2人が恋人同士になることは遅かれ早かれ決まっていたことだし、むしろ3年もかかったことが意外だ。
シェリーとレイには関係がないことだと思ったが、念のため新聞を拾い、家に帰ってレイに見せた。
レイは、真剣な表情でしばらく考え込んでいた。意外な反応に、シェリーは不安になった。
「レイ、アッシュと聖女様の結婚が、私達に何か関係があるの?」
「····うーん、なんか違和感があって。」
「違和感?」
「アッシュと聖女が恋人同士だったとしても、このタイミングで婚姻するメリットって何かなって。アッシュはあの性格だろ?めんどくさいこととか、派閥や権力争いは嫌いなはず。聖女は、教皇側の人間だから、婚姻なんかしたら、貴族を敵に回すことになる。」
「考えすぎじゃない?2人の意思で結婚するのかも。」
シェリーがそういうと、レイは
「··だといいんだけど。」
と腑に落ちない様子であった。
結婚式は、3日後と書かれていた。
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