侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

エステルの告白

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 エステルの発言に、アッシュは耳を疑った。

「今何と言った?」

「大河の元侍女の居場所、私なら分かると言ったのよ。」

 エステルは飄々と答えた。

「聖女。ふざけているのか?3年探し続けて手掛かりもないというのに、なぜ何もしていないお前に分かる?」

 アッシュの怒気をはらんだ声に、エステルは肩をすくめながらこう言った。

「怖いわよ大河。私は助けてあげようと思って言ってるのに。」

 エステルの、どこか楽しんでいるような、からかっているような表情と物言いに、アッシュはイライラしてきた。

「ふざけているなら、聞くつもりはない。」

 アッシュがそう言うと、エステルはクスッと笑った。

「私ね、」

「彼女がここを出ていく少し前、2人っきりで話したのよ。私と大河の前世の記憶を見せてあげた。そしたら、彼女ひどく悲しそうに、『大魔法使い様のお側を離れます。』って言ってたわ。彼女って健気よね。」

 それを聞いたアッシュは、エステルの襟元を掴み、怒りを抑えられない様子でこう聞いた。

「···なぜそんなことを?どういうつもりだ?」

 エステルは少し考えて、アッシュの目を見て話し始めた。

「だって···」

「あなたが悪いんじゃない。記憶を取り戻したのに、私を恋人にするどころか、魔力の供給以外では触れてもくれない。あの侍女が近くにいるせいだって、すぐ分かったわ。」

「彼女はいい子よね!宣言通り、誰にも気づかれずに出ていってくれた。なのにあなたは····3年経っても、私には何もしてくれない。だから、手法を変えることにしたのよ。」

「私ね、触れた人の中に、光の種を植えることができるの。」

 アッシュは怪訝な顔をした。

「····光の種?」

「他の魔法使いには悟られない、私だけにしか分からない、光の痕跡のようなものを、触れた人の中に埋めるのよ。元々は加護の力なんだけどね。それを、あの日彼女の中に埋めた。」

 アッシュは驚愕の表情になり、エステルを問い詰めた。

「それは本当か····!?それでは、今も聖女にはナタリーの居場所が分かっていると····?知っていて黙っていたのか。俺と取引でもするつもりか?」

「さすが大河!察しがいいのね。」

 エステルは嬉しそうな声で言った。

「大河、いえ、大魔法使いアッシュ、私と婚姻して。」

 アッシュは怒りと呆れに満ちた表情で笑った。

「ははっ!聖女、そこまでして俺と一緒になって嬉しいか?俺はお前を愛してないのに?」

 今度はエステルが、アッシュをキッと睨みつけた。

「あなたにとっては、私は『前世が恋人同士だっただけの女』でしょうけど、私は違うの。あなたは私にとって大河なのよ。これは運命でもあり、今世の私に与えられた使命でもあるの。」

 エステルは、前世にとらわれ、大河の生まれ変わりと結ばれることを、今世の悲願としていた。それは一種の盲信でもあったが、エステルにはそれがすべてだった。

「婚姻を公表し、神の前で誓い、夫婦になるのよ。それが終わったら、侍女の居場所を教えてあげてもいい。拷問しても無駄よ。答えは私の中にしかない。」

 アッシュの答えは1つだった。

 婚姻の誓いなど、アッシュにとってはどうでもいいことだ。アッシュは神も運命も信じない。

「今の言葉、忘れるな。誓約魔法をかけよう。言った通り、婚姻が成立したら、ナタリーの居場所を教えてもらう。」

「····楽しみだわ。」

 エステルは幸せそうに笑い、アッシュの頬を撫でた。
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