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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~
3年後~レイとシェリー~
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「シェリーおはよう!朝だよ。」
レイはカーテンをシャっと開け、まだベッドで寝ていたシェリーに優しく声をかけた。
シェリーはゆっくり体を起こし、ボーッと窓の外を見ていた。日差しが差し込み、気持ちのいい朝である。
こんなこと前にもあったな。とシェリーは考えていた。
朝食の匂いがする。
「おはようレイ。いい匂いがする。今日は何作ってくれたの?」
「ベーコンエッグとパンと、野菜のスープだよ!」
「わぁ、おいしそう~」
と言いつつ、なかなか立ち上がろうとしないシェリーにしびれを切らし、レイはシェリーの両手を取り、立ち上がらせてダイニングテーブルに座らせた。
「せっかく作ったばかりなんだから、温かいうちに食べなよ。」
3年前まで侍女として仕えていた女が、今は世話をされる側とは不思議なものである。
レイは貴族令息だった為、最初は家事も料理もできなかった。
シェリーが少しずつ教えていったのだが、一度教えればレイはすぐにできるようになり、何度もやるうちに、シェリーよりも手際良くできるようになった。
料理に関しては、シェリーもあまり得意ではなかったのだが、レイは
「街のご婦人に料理習ってきた!」
と帰ってきては練習し、みるみるうちに上達してしまった。
シェリーとしては、助かるのでありがたいものの、少しだけ自分のプライドが傷つくのだった。
そもそも、無能だから雑用係をさせられていたのではなく、仕事ができたからあれこれ頼まれていたのだろうと思った。
◇
3年前、2人がフィガロに着いて、最初にやらなければならないことは、住居の確保だった。
通常、家を借りたり買ったりする場合、身分証の提示が必要になる。2人は逃亡中の為、身分を明かすわけにはいかなかった。
シェリーは住むところを探すのに苦労するだろうと思っていた。事前に準備する暇がなかったからだ。
すると、レイがあっさりと言った。
「住む家はもうあるよ。逃げる前に買ったんだ。」
シェリーは耳を疑った。
「····何!?買った?ウィルの名義で買ったの?お金は!?どうしたのよ?」
質問ばかりのシェリーに、レイはぷっと吹き出した。
「お金は、家族には内緒で転がしてた資産があって。もちろんウィル名義じゃないよ。絶対に足がつかないようにしてあるから、安心して。細かいことはいいからさ、とにかく新居へ行こう!」
簡単に受け流すレイに、シェリーは昔呼んだ小説を思い出していた。
確か、依頼された仕事は完璧に遂行する家政婦の話だったと思う。レイはあの家政婦なんじゃないか?と怪しく思うシェリーだった。
レイに連れられ、町の少し外れの見晴らしのいいところに、一軒家があった。
1階建てのこじんまりとした家だが、2人で住むには申し分なく、壁が水色でかわいらしい。広めの庭もウッドデッキもあった。
「このお家なの?素敵····」
シェリーはこの家が一目で気に入った。
「いいでしょ?何かするなら庭で作物とか植物も育てられるし、ご近所もいないし逃亡者にはうってつけかなって。少し掃除すれば、住めるようになるよ。」
そう言いながら、レイは家のドアを開け、中に入った。中は少し埃っぽかったが、比較的きれいにしてあった。
部屋は2つと、ダイニングキッチン、リビングがあった。
その日は2人で部屋の中を掃除した。
暗くなる頃には、何もない家の中で、移動と掃除で疲れ果てた2人が、床でゴロンと横になっていた。
「なんだか不思議ね。」
シェリーがしみじみと言った。
外から、リンリンと虫の鳴き声がする。
「····うん。数日前までは、あんなに壮絶な脱出を決行したのにね。今は、人間界で、虫の声を聴きながら、床に寝そべってる。おまけに名前も変わったし。」
レイも独り言のように言った。
「これから、やることがたくさんあるわよね。でも、なんだか私ワクワクしてる。」
「僕もだよ。こんなに開放的で、自由な気持ちは初めてだ。世界って広かったんだね。」
2人のとりとめのない話は、一晩中続いた。
レイはカーテンをシャっと開け、まだベッドで寝ていたシェリーに優しく声をかけた。
シェリーはゆっくり体を起こし、ボーッと窓の外を見ていた。日差しが差し込み、気持ちのいい朝である。
こんなこと前にもあったな。とシェリーは考えていた。
朝食の匂いがする。
「おはようレイ。いい匂いがする。今日は何作ってくれたの?」
「ベーコンエッグとパンと、野菜のスープだよ!」
「わぁ、おいしそう~」
と言いつつ、なかなか立ち上がろうとしないシェリーにしびれを切らし、レイはシェリーの両手を取り、立ち上がらせてダイニングテーブルに座らせた。
「せっかく作ったばかりなんだから、温かいうちに食べなよ。」
3年前まで侍女として仕えていた女が、今は世話をされる側とは不思議なものである。
レイは貴族令息だった為、最初は家事も料理もできなかった。
シェリーが少しずつ教えていったのだが、一度教えればレイはすぐにできるようになり、何度もやるうちに、シェリーよりも手際良くできるようになった。
料理に関しては、シェリーもあまり得意ではなかったのだが、レイは
「街のご婦人に料理習ってきた!」
と帰ってきては練習し、みるみるうちに上達してしまった。
シェリーとしては、助かるのでありがたいものの、少しだけ自分のプライドが傷つくのだった。
そもそも、無能だから雑用係をさせられていたのではなく、仕事ができたからあれこれ頼まれていたのだろうと思った。
◇
3年前、2人がフィガロに着いて、最初にやらなければならないことは、住居の確保だった。
通常、家を借りたり買ったりする場合、身分証の提示が必要になる。2人は逃亡中の為、身分を明かすわけにはいかなかった。
シェリーは住むところを探すのに苦労するだろうと思っていた。事前に準備する暇がなかったからだ。
すると、レイがあっさりと言った。
「住む家はもうあるよ。逃げる前に買ったんだ。」
シェリーは耳を疑った。
「····何!?買った?ウィルの名義で買ったの?お金は!?どうしたのよ?」
質問ばかりのシェリーに、レイはぷっと吹き出した。
「お金は、家族には内緒で転がしてた資産があって。もちろんウィル名義じゃないよ。絶対に足がつかないようにしてあるから、安心して。細かいことはいいからさ、とにかく新居へ行こう!」
簡単に受け流すレイに、シェリーは昔呼んだ小説を思い出していた。
確か、依頼された仕事は完璧に遂行する家政婦の話だったと思う。レイはあの家政婦なんじゃないか?と怪しく思うシェリーだった。
レイに連れられ、町の少し外れの見晴らしのいいところに、一軒家があった。
1階建てのこじんまりとした家だが、2人で住むには申し分なく、壁が水色でかわいらしい。広めの庭もウッドデッキもあった。
「このお家なの?素敵····」
シェリーはこの家が一目で気に入った。
「いいでしょ?何かするなら庭で作物とか植物も育てられるし、ご近所もいないし逃亡者にはうってつけかなって。少し掃除すれば、住めるようになるよ。」
そう言いながら、レイは家のドアを開け、中に入った。中は少し埃っぽかったが、比較的きれいにしてあった。
部屋は2つと、ダイニングキッチン、リビングがあった。
その日は2人で部屋の中を掃除した。
暗くなる頃には、何もない家の中で、移動と掃除で疲れ果てた2人が、床でゴロンと横になっていた。
「なんだか不思議ね。」
シェリーがしみじみと言った。
外から、リンリンと虫の鳴き声がする。
「····うん。数日前までは、あんなに壮絶な脱出を決行したのにね。今は、人間界で、虫の声を聴きながら、床に寝そべってる。おまけに名前も変わったし。」
レイも独り言のように言った。
「これから、やることがたくさんあるわよね。でも、なんだか私ワクワクしてる。」
「僕もだよ。こんなに開放的で、自由な気持ちは初めてだ。世界って広かったんだね。」
2人のとりとめのない話は、一晩中続いた。
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