侍女と愛しの魔法使い【旧題:幼馴染の最強魔法使いは、「運命の番」を見つけたようです。邪魔者の私は消え去るとしましょう。】

きなこもち

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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

予言日当日

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 そして、とうとう聖女エステルが予言した日となった。
 ナタリーとウィルは、あれから数回打ち合わせをした。
 ナタリーがアッシュからかけられた複合魔法の解除、魔力の痕跡を残さず移動する方法などは、計画開始後にウィルが実行に移すということだった。
 魔法使い達が、魔獣討伐に出発したその時から、計画スタートだ。

 ナタリーはその日の朝、これから魔獣討伐に発つというアッシュを見送る為に、アッシュの部屋に来ていた。
 アッシュと会うのは今日が最後という事実が、ナタリーの胸を締め付けていた。
 セントラルに来てから、本当に色々なことがあった。ナタリーとアッシュはいつも一緒にいて、お互いが離れられない存在だと思っていた。
 聖女エステルが現れなければ、今もナタリーはここを去ることもなかっただろう。
 だが、もはや今は、ナタリーは不要な存在であった。

 別れの時が来た。

 ひどく感傷的な表情のナタリーを見て、アッシュは言った。
「ナタリー、あまり心配するな。魔獣の討伐などで俺は死なん。お前はただ、帰りを待ってればいい。帰ったら祝杯をあげよう。」
 ナタリーは、アッシュの最後の姿を、目に焼き付けた。

 輝く白銀の髪、怒ると少しつり上がる眉も、横暴なくせにたまにナタリーを気遣う表情も、すべてが好きだった。
 ナタリーは目を潤ませながら、少し笑って
「はい、心配はしておりません。アッシュ様は最強ですから。」
 と言った。
 アッシュはフッと笑いナタリーの頭をポンポンと撫でた。
「じゃあな。行ってくる。」
「はい。アッシュ様のご無事を祈ってます。」
 そうして、アッシュは部屋を出ていった。

「元気で。さようなら、アッシュ。」

 誰もいなくなった部屋で、ナタリーは涙が止まらなかった。

 ◇

 ひとしきり泣いた後、ナタリーは行動を開始した。いつまでも泣いている場合ではない。ウィルとの手はず通り、計画を実行に移す時が来た。一刻の猶予も許されない。
 ナタリーは事前に用意してあったスーツケースを抱え、魔法塔を後にした。途中、侍従に見られ、呼び止められたが、「特殊任務です。」と言って外へ出た。
 そして、ウィルがいる本部へ向かった。

 戦闘員の魔法使い達は、割り当てられた所定の場所につき、魔獣を迎え撃つべく、予言された時間まで待機した。
 しばらくして、聖女エステルの予言通りの時間になると、魔界との扉である亀裂が生じ、そこから続々と魔獣が出現した。
 アッシュは、最も個体数の多いA地点で魔獣を退治し、終わり次第、B地点へ移動する手筈だった。
 戦闘員たちは、強力な魔獣に苦戦しながらも、事前に訓練していた成果もあり、大きな被害を出さず、魔獣を討伐していった。
 アッシュに至っては、A地点の魔獣を火属性魔法で瞬殺し、すぐにB地点へ向かうとの連絡が入った。
 そのタイミングで、ウィルは緊急の対応があるため少し抜けると言い、本部の部屋を抜け出し、ナタリーが待っている機械室へ急いだ。
「ウィル!!」
 予定通り現れたウィルを見て、ナタリーは一安心した。万が一、来ない可能性も考えていた。
「アッシュ様はやはり、予定より早いスピードで魔獣を殲滅してる。さっそく始めよう。時間のロスは許されないからね。」
 ウィルは珍しく真剣な顔になった。
「まずは、君にかけられたいや~な複合魔法を解くよ。」
 ナタリーの体に杖を向けたかと思うと、ナタリーの体から、赤や黄色の線上の光が散乱した。
 ウィルはその光の絡まりを解くように、1つ1つゆっくりと、ウィルの杖の先にある、青い光の中に吸収し、消滅させていった。
 すべての光の絡まりが消滅したときには、ウィルは息が上がり、かなり疲弊していた。
「ウィル、大丈夫??」
 ナタリーは心配になり、ウィルの背中をさすった。
「なんとかね。こんな独占欲丸出しの複合魔法を君にかけるなんて、アッシュ様は恥ずかしくないのかな。そろそろ魔法をかけた張本人が気付く頃だ。急ごう。」
 ウィルは、『痕跡を消す為の薬』という、紫の液体を取り出した。

 ナタリーは、液体を見つめ、一気に飲み干した。

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