上 下
17 / 121
私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

決意

しおりを挟む
 エステルの部屋から戻った後、しばらく放心状態でベッドに腰かけていたナタリーは、決心した。

 (誰にも言わずにセントラルを出ていく)


 侍女兼補佐官として働いてはいたが、本部から給料が支給される、ということではなく、大魔法使いが持っている資産から、ナタリーが暮らす程度のお金を使っていただけだった。

 欲しいものがあれば、アッシュに言えば買ってくれた。

 2人は、主従関係とはいえ、家族も同然の生活をしていた。買うものといっても、本や雑貨やお菓子など、ほんのちょっとしたものだった。

 以前、黒い侍女服ばかりを来ていたので、たまには明るい色の女性らしい服を着て出掛けたい、とアッシュに言ったことがある。

 その時は、

「そんなに着飾ってどうする?男でもひっかけるつもりか?似合わないからやめておけ」

 とひどいことを言われ、買えなかった。

 ナタリーは、今まで私って自由がなかったのね。と自分の暮らしを見直すきっかけとなった。

 そうと決まれば、出ていく時期と行き先を決めなければいけない。

 とはいえ、人間界はナタリーは10歳までしかおらず、その後はアッシュの側に付きっきりだったため、あまりにも世間知らずだった。

 こんなときに相談できるのは、一人しかいなかった。

 1日の仕事が終わり、アッシュは行くところがあると言っていた為、ナタリーは一人時間ができた。

 夕方、外出しウィルを訪ねることにした。

「ウィル!!」

 ナタリーが突然屋敷を訪ねてきたので、ウィルは驚いていた。

「どうしたの!?屋敷に来るのなんて初めてじゃない?早く中に入って入って。」

 ウィルの部屋に通されたナタリーは、今までの出来事と、計画を相談した。

 極秘事項は洩らせないと思ったが、今回は自分を守るための大事な計画だ。内緒のままでは、ウィルも理解できないだろう。

 キスのことは黙っておき、「魔力の供給」という言い方をした。

 さすがのウィルも、はぁ?という顔をしながらナタリーの話を聞いていた。

「つまり、こういうこと?ナタリーは、前世が恋人同士の、聖女様と大魔法使い様から追い出される予定で、セントラルを出てどこか知らない土地で暮らしたいと。」

「追い出されるとは言ってないわよ!自ら出ていくの!」

 大事なことなので、ナタリーは訂正しておいた。

 ウィルは、珍しく真剣な顔で、ナタリーに聞いた。

「それ、本気?」

「本気よ、ウィリー。私は、ここじゃない場所で人生をやり直すわ。」

 ウィルは少し考えて、決心したようにナタリーに言った。

「分かった。それなら、僕も手伝うよ。というか、僕も一緒に行く。」

 今度はナタリーがはぁ?という顔をした。

「ウィル!私は一緒に行って欲しくて相談したんじゃないのよ。知恵をかして欲しかったの。あなたは貴族の息子じゃない。私のせいで迷惑はかけられないわ。それに、あなたがいなくなったら捜索されるわよ!」

 ウィルは、真剣な顔で答えた。

「ナタリー。君がいなくなったって捜索されるよ。大魔法使い様は、君を必ず探すさ。」

「それに、一人で逃げたって、1日で見つかるよ。微力でも、魔力があれば居場所はすぐに分かるんだ。跡を辿られない方法にあてがある。」

 アッシュが自分を探すとは思えなかったが、ナタリーはウィルの言葉をじっと聞いていた。

「それに僕は、君以上に大切な友人も家族もいない。魔法界に未練なんてないんだよ。お願いだから、僕も一緒に行くことを許して。」

 ナタリーはその言葉を聞き、困ってしまった。確かに、一人で行くより、ウィルと行く方が断然心強いし、楽しいだろう。

 だが、万が一危険な目には合わせたくなかった。ウィルを、ナタリーのくだらない逃避行に巻き込むのも嫌だった。

「・・・・・・私と行ったって、苦労するだけよ。」

「それでもいいよ。君とする苦労なら、悪くないさ。」

 説得しても、ウィルは折れないだろうと確信したナタリーは、

「それなら話が早いわ。私達の新天地を決めましょ。ウィル。」

 こうして、2人の逃亡計画が幕を開けたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】不出来令嬢は王子に愛される

きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』 姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった──── ◇ 有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。 ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...