上 下
12 / 121
私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~

運命の番

しおりを挟む
 そうこうするうちに、例の予言をした聖女とアッシュが、対面する日となった。

 ナタリーは、ジークリートに連れてこられた聖女を見て、あまりの美しさに言葉を失った。

 金色の髪はまるで絹のように細く輝き、色白でまつげも金色に光っていた。エメラルドグリーンのひとみに、桜色の唇、清楚で可憐な佇まいの彼女は、声まで美しかった。

 (わーー。。。なにこの人。人間??)

 穴が空くほど聖女を見つめてしまった為か、彼女はナタリーの視線に気付き、ニコっと微笑みかけた。

 (わっ!可愛すぎる。。。)

 ナタリーは思春期男子のように頬を紅潮させ、下を向いた。

 ジークリートは慣れているのか、顔色ひとつ変えずに聖女の隣に立っている。ナタリーと目が合い、少しだけ表情を崩した。

 そしてすぐにアッシュが到着し、部屋に入ってきた。中央の椅子に座り、聖女を見て言った。

「聖女とやら、はるばるご苦労だった。国の存亡に関わる予言をしたと聞いてな、直接そなたと話してみたかったんだ。」

 すると、聖女は感激したような表情になり、口を開いた。

「大魔法使い、アッシュ様。私はエステルと申します。かねてよりずっと、あなた様にお会いしとうございました。」

 エステルの熱のこもったような目と口調がナタリーは気になった。

 アッシュは顔色ひとつ変えず、単刀直入に予言について、彼女に問い始めた。話を聞けば聞くほど、嘘偽りなく話しており、予言には信憑性があった。予言が外れた場合、エステルは自分の命を差し出すとまで言い切った。

 アッシュは聖女から、納得できる答えをもらった為か、収穫があった為か、話を切り上げ、エステルにもう帰って良いと伝えた。

 その時、エステルが口を開いた。

「あの、、、失礼を承知で申し上げます。私には、実は前世の記憶がありまして。長い間、前世で運命の番であった恋人を探し求めていたのです。ですが、今日、見つかりました。」

 その場にいたアッシュ、ジークリート、ナタリーはエステルの話した内容に唖然とした。

 ジークリートがエステルに向かって

「聖女、何をおっしゃいますか。今日は予言についての話をとお願いしたはずです。支離滅裂な話をこの場ですることはお控えください。」

 エステルは、感涙の涙を流しながら答えた。

「申し訳ありません。。。ですが、この機会を逃してはきっともう、今生はお会いできないでしょう。大魔法使いアッシュ様、私の運命の番は、あなたです。ずっと探しておりました。」

 エステルは祈るように手を組み、熱のこもった目でアッシュを見つめた。

 アッシュは豆鉄砲を喰らったような顔をして、途端に笑いだした。

「ははっ!聖女、前世の記憶だと?この場で、そんな茶番は聞きたくなかったぞ。今ならまだ聞き流してやる。早く故郷へ帰れ。」

 エステルは悲しそうな表情になり、こう続けた。

「簡単に信じていただけるとは思っておりません。ですが、私は心配なのです。アッシュ様、魔力の暴走が起きてはいませんか?そして、それを闇の力で押さえようとしている。」

「それだけはいけません!!膨大な魔力をコントロールするのは、聖なる力でなければ・・・!アッシュ様のお側に、闇の力を待つ者を置いてはいけません!」

 そして、エステルはナタリーの方を見て言った。

「あなたは、闇の力を持つ者。。。アッシュ様のお側にいてはなりません。」

 ナタリーは、急にこちらを見たエステルに対し、ビクっと体を震わせた。

 エステルは何を言っているのか?ナタリーは魔力無しだ。闇の力など持ってはいない。

 だが、アッシュの発作が魔力の暴走だとすると、あの毎晩のキスが魔力の暴走を抑える行為だったとしたら?

 ナタリーが普通の人間ではないと、アッシュは知っていた?

 ナタリーは頭の中がぐちゃぐちゃになり、めまいがしてきた。

 その時、アッシュが怒気をはらんだ声で言った。

「おい」

「ジークリート、何をぼさっとしている?この頭のおかしい聖女とやらをつまみ出せ。」

「はい、申し訳ございません。」

 ジークリートは、すぐにエステルを連れて部屋を出ていった。エステルは連れ出される際も、

「いけません!その者はあなたを滅ぼします!」

 と叫び続けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】不出来令嬢は王子に愛される

きなこもち
恋愛
『ララが綺麗なことは僕だけが知ってればいい。何者でもない僕を見てくれるのは、君以外いないよ。』 姉の婚約者、ディアンの言葉は、ララの心の奥底に沈み込んだ。その時から、分不相応にも彼に恋してしまった──── ◇ 有力貴族の次女、ララ・ファーレンは、人と少し違っていた。勉強や運動、何をやっても上手く行かず、同年代の友達もいなかった。両親や姉からは『恥さらし』と罵られ、屋敷から出ることを禁止されていた。 ララの唯一の心の拠り所は、時折屋敷を訪れる、姉ダリアの婚約者、ディアンと遊ぶことだった。ディアンとララはお互いに心を通わせるが、「王子」と「恥さらし令嬢」との恋は上手くいくはずもなく、姉ダリアとディアンの結婚式の日を迎えてしまう······

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...